ハイドロニューマチック・サスペンション
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ハイドロニューマチック・サスペンション(英: hydropneumatic suspension、仏: suspension hydropneumatique、シスパンシォン・イドロプヌマティーク)とは、エアスプリングと油圧シリンダーおよび油圧ポンプを組み合わせた自動車用サスペンション機構の一種で、エアサスペンションの一種である。和訳の油気圧式とも呼ばれる。
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名称は、「水の」という意味を持つギリシア語ὑδρο-(hydro-)と「空気の」または「空気圧で動く」という意味のフランス語「pneumatique」を組み合わせたものであるということができる。なお、上記からわかるとおり、hydropneumatiqueは本来フランス語であり、フランス語での発音を音写すると、「イドロプヌマティク」となる[1]。
サスペンションを構成する機構の一部であり、一般的な金属スプリングのサスペンションのスプリングとショックアブソーバーの部分に相当し、双方の機能を併せ持っている。また、一般的なエアサスペンションとは異なり、気体(窒素ガス)は最初から密封されており、純粋にスプリングの機能のみを果たし、その他の機能は油圧シリンダーが受け持っている。その油圧シリンダーに掛ける油圧を加減することにより、荷重の変化にかかわらず、車高を一定に保つことができ、車高の調整も可能であるが、そのためのポンプが必須である。
サスペンションのアームやリンクの配置とハイドロニューマチックとの組み合わせに特に決まりはなく、基本的には、どのような形式のサスペンションとも組み合わせ可能である。
フランスの自動車メーカーであるシトロエンが開発し、同社が製造する多くの乗用車と救急車のサスペンションに採用されたことで知られている(リアのみの採用例もある)。また、それに使われるポンプの油圧をブレーキやステアリングなど広範囲に応用したことでも知られている。
このほか、ロールス・ロイスやメルセデス・ベンツ、プジョーなども用いたことがあるが、主として後輪の車高調整用など、サスペンション部分のみが用いられることが多く、シトロエンのように広範囲に応用しているのはあまり例がない。
異色の例としては、陸上自衛隊の74式戦車・90式戦車・10式戦車や、スウェーデンのStridsvagn 103(Strv.103)、韓国のK1・K2といった戦車のアクティブサスペンションが挙げられる。車体の前後・左右傾斜のほか上下昇降も可能であるが、90式は左右傾斜機能を持たないなど、詳細は車種によって異なる。主目的は地形に合わせた射撃姿勢を取ることであり、とくに主砲が車体に固定されているStrv.103では必須の機能である。