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ナジムッディーン・アイユーブ(アラビア語: الملك ألأفضل نجم الدين أيوب بن شاﺬي بن مروان、al-Malik al-Afdal Najm ad-Din Ayyub ibn Shadhi ibn Marwan、? - 1173年8月)は、ザンギー朝のクルド系軍人、政治家[1]。ナジムッディーン・アイユーブの息子の一人サラーフッディーン(サラディン)はエジプトで王朝を創始し、彼が建てたアイユーブ朝は王家の始祖であるナジムッディーン・アイユーブの名前を冠している。
アイユーブはクルド人のHadhabani族の支族であるRevend(Revendi、もしくはRawadiya)族の出身であり[2][3][4]、後代の歴史家は伝承に基づいてRevend族をクルドの名家に数えている[5]。758年頃にRevend族はアルベラ(アルビール)からドゥヴィンに移住した。ロシアの東洋学者であるウラジーミル・ミノルスキーはRevendの語源について、アラビア語の「Rawadiya」が転訛した可能性を指摘し、アイユーブたちがアラブ文化の影響を受けたクルド人だと推測した。さらにミノルスキーは「Rawadiya」とは部族の指導者の名前に由来する語であるとも述べており、Revend族の指導者はアラブ人を祖とする可能性があるとも言える[3]。
アルメニアのドゥヴィン近郊のアジュダナカーン村で、アイユーブはシャーディー・イブン・マルワーンの子として生まれる[5]。アイユーブ一族はシャッダード朝との関係が深く、1130年にシャッダード朝がドゥヴィンを喪失した後、シャーディーはアイユーブとその弟シール・クーフを伴ってバグダード、次いでティクリートに移住した。シャーディーはセルジューク朝に仕えるバグダードの軍事長官ビフルーズの知遇を受けてティクリートの統治を命じられ、シャーディーの没後にアイユーブは父の地位を継承した。
1131年、セルジューク朝との抗争に敗れたイマードゥッディーン・ザンギーが、本拠地のモースルに帰還するためにティクリートを通過しようとする[6]。アイユーブはザンギーの逃走を助けたが、ビフルーズからの叱責を受けた[7]。1137年/38年にシール・クーフが怒りに駆られてキリスト教徒の官吏を殺害する事件が起き、セルジューク朝のスルターンからの懲罰を恐れたビフルーズによってアイユーブたちはティクリートからの立ち退きを命じられる[8]。アイユーブはティクリートからの立ち退きの日に子供を授かった子供にユースフと名付け、一族とともにモースルのザンギーの元に落ち延びた。ザンギーはアイユーブ一家を歓迎し、アイユーブとシール・クーフはザンギーの軍団の司令官に任じられる[9]。1139年にシリア北方のバールベックを獲得したザンギーは、町の統治をアイユーブに委任する。
1146年にザンギーが暗殺された後、バールベックはダマスカスのアタベク(ブーリー朝)・ムイーヌッディーン・ウヌルの包囲を受ける。アイユーブは交渉を経てムイーヌッディーンにバールベックを明け渡し、代償として金銭とダマスカス周辺のいくつかの村落を獲得し、家族を連れてダマスカスに移住した[10]。一方、シール・クーフは兄と異なり、アレッポを本拠地とするザンギーの息子ヌールッディーン・マフムードに仕えることになる。1148年に第2回十字軍によってダマスカスが包囲を受けたとき、ムイーヌッディーンはやむなくヌールッディーンと同盟を結んだ。アイユーブはヌールッディーンに仕えるシール・クーフと連絡を取り合い、1154年のヌールッディーンによるダマスカスの無血開城に大きな役割を果たした[11]。アイユーブの功績はヌールッディーンから高い評価を受け、アイユーブはイクターを授与され、引き続きダマスカスに留まった[12]。
アイユーブの息子のサラディン(ユースフ)もヌールッディーンに仕え、シール・クーフとともに十字軍勢力の攻撃に晒されるエジプトのファーティマ朝に派遣された。1170年2月にはアイユーブもカイロに赴き、助言者としてサラディンのエジプト支配を支えた[13]。サラディンがファーティマ朝の宰相となった後、サラディンとヌールッディーンの関係は徐々に悪化しており、アイユーブは二人の仲介役としての役割を果たす[14]。
1173年8月、アイユーブは乗馬中の事故によって落命する[15]。
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