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ゾロターン S-18/100(Solothurn S-18/100)とは、スイスのSolothurn[注釈 1]社が開発した対戦車ライフルである。
S-18はゾロターン社によって1936年から開発され、1937年に完成した。同社はドイツの会社であるラインメタルに保有され、実質的にはドイツ向けの兵器生産を担っていた。これはドイツ企業がヴェルサイユ条約によって課せられた兵器の生産に関わる禁止事項を回避するためのものであった。
本銃の設計は第1次世界大戦末期にラインメタル社で開発された20mm航空機関砲が基礎になっており、長大な銃身に大型の機関部を持ち、中央部には給弾部および排莢口と銃把がある。機関部後半の内部は、リコイルスプリングの収納部、及び反動利用式故の遊底後座距離の確保空間となっている。二脚に加え、大型の機関部を支えるため、床尾部下面には単脚が備えられていた。
作動方式は銃身後座式反動利用方式(ショートリコイル方式)[注釈 2]による半自動式で、使用弾薬は20×105mmベルテッドケース弾[注釈 3]である。給弾は銃の左側面に水平に取り付けられた箱形弾倉でなされ、弾倉は5発もしくは10発(通常はこちらが用いられた)装弾のものが用いられた。
フィンランドで使用されたS-18/154の情報によれば、本銃は距離100mの場合撃角90度で35mm、60度で20mmの装甲を貫通できた。距離500mでは威力が撃角90度で23mm、60度で16mmに減少した[5][注釈 4]。
派生型としては幾つかの輸出用マイナーチェンジ型の他、作動形式を全自動式として航空機搭載型としたS-18/350、20×138mmベルテッドケース弾に変更したS-18/1000、/1000を全自動射撃を可能としたS-18/1100がある。
本銃は“対戦車ライフル”と分類されているものの、根本的な設計は航空機関砲としてのものであり、その構造と外観はライフル(小銃)というよりは機関砲に近く、大型で強力な弾薬を用いることから相当な反動が生じ、またそのサイズと重量は個人による携行を非常に難しいものとしていた。第2次大戦において、各国の対戦車ライフルはどれも戦車の進歩に威力が追いつかず、急速に陳腐化した。S-18は20mmという大口径を持つために、戦車の装甲に対しての有用性が低下した後も陣地攻撃用などに転用されて使用されたが、大型で大重量のために使い勝手が悪く、運用に多数の人員を必要とすることもあり、成形炸薬弾頭を持つロケット弾を用いる携行対戦車兵器が登場すると、速やかにそれらに替わられていった。
生産は1938年から開始された。ゾロターン社の他、ハンガリーのダヌビア(Danuvia)社でも"36.M 20mm Nehézpuska"の名称でライセンス生産された。第2次世界大戦前のエストニアがライセンスなしで製造(要はデッドコピー)したSolothurn S-18/100と呼ばれるものがあるが、これはソビエト連邦によるエストニア占領の直前に20挺だけが生産されたにとどまる[6]。
事実上の開発国のドイツではPanzerbüchse 785(PzB 785)の名称で、また航空機搭載型をMG204(Lb204)の名称で制式採用し装備したが、陸上用の対戦車兵器としての装備は限定的なものに留まっている。
1930年代後半から末にかけて、ドイツの他、派生型のS-18/1000およびS-18/1100を含む、S-18シリーズの様々なモデルが、スイス、ハンガリー、ブルガリア、イタリアそしてオランダ[注釈 5]によって使用された[9]。
1940年3月には、冬戦争で戦いを続けるフィンランドを支援するべくスイスで資金が集められ、フィンランドはスイス軍を名目上の購入者として、12挺のS-18/154(S-18/100の輸出用マイナーチェンジ型)を購入した[5][注釈 6]。フィンランドへの到着は戦争終結後の春となったものの、これらの銃は後の継続戦争で使用された[5]。しかしすぐに本銃は、フィンランドの意図した任務において旧式であると判明した[9]。
アメリカでは1939年に2基を購入、1940年から1941年にかけて"20mm automatic gun T3"の名称を与えて評価試験を行い、更に50基を導入して実用試験の後にライセンス生産する計画であったが、開戦によりライセンス生産権の獲得が困難になり、計画を放棄している[9]。
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