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スポック/ミスター・スポック(Spock / Mr. Spock)は、『スタートレック』シリーズの登場人物である。
ヴァルカン人(地球人とのハーフ)のエンタープライズ号科学主任兼副長。その後、同艦長を経て、連邦艦隊退役後は父サレクと同じ大使の道に進む。さらにその後、ロミュランとヴァルカンの再統合運動をしていたが、ある事件をきっかけに過去にタイムワープ、その並行宇宙ではヴァルカン星が失われたため、残されたヴァルカン民族再建のため働き、2262年、天寿を全うする。
当初は厳格なヴァルカン人として振る舞い、地球人とのハーフであることや感情を指摘されることを嫌悪し拒絶するが、カーク、マッコイらとの交流と経験を通じて、自分の人間性を肯定的に扱えるように成長し、人間が使うような詭弁や嘘を操る事もできるようになった。彼とは対照的に行動的なカーク、感情的なマッコイとは友情で結ばれ、任務におけるカークからの信頼は厚い。マッコイとは軽口を叩き合う関係である。
ヴァルカン人は感情を完全に抑制し表情に出さず、また正当防衛以外では他人に手をあげない非暴力主義者だと設定されているが、片手で首から肩にかけて手をあてるだけで気絶させるネック-ピンチという得意技もある[1]。だが、パイロット版や第1シーズンにおいては設定が固まっておらず、スポックの喜怒哀楽や自分から暴力を振るうシーンが見られた。また、スポックに限らず、他のヴァルカン人でも時折、感情を表に出してしまう描写がある(詳細はヴァルカン人を参照)。また、両手を顔に当てて相手の心を読む、融合(フュージョン、またはマインドリンク)というリーディング能力がある。
口癖は「船長、それは非論理的です」、「魅惑的だ(片眉を上げながら)」[2]など。また、ヴァルカン式挨拶(ヴァルカン・サリュート)である指の形は初代スポックを演じるレナード・ニモイが発案者である。「長寿と繁栄を(ユダヤ教でのシェキーナーという表現を参考にしたもので、片手をあげて、第二第三指および第四第五指をそれぞれつけた状態で、双方の間隔を空ける)」[3]を劇中で最初に行ったのも初代スポックである[4]。
艦隊での認識番号はS179276ST。TOSでの階級は海軍少佐で、職務は副長兼科学主任[5]。司令官用の金色の制服ではなく、科学・医療部門用の青の制服を着用する[6]。劇場版第1作と第2作の間[7]に船長(大佐)に昇進しているが、その数十年後の設定である『新スタートレック』にはヴァルカン大使として登場する。
その後、ロミュラン星消失の事件で宇宙船ごとブラックホールに飲み込まれ、過去の並行宇宙(ケルヴィン・タイムライン)へ転移。その世界では母星ヴァルカンの消滅と共に多くの同胞が失われたため、新たな母星・ニュー・ヴァルカンの候補を探し出すなど、余生をヴァルカン民族再興の仕事に捧げる。平行世界との若き旧友らとも交流を持ち、アドバイスを与えるなどし、若きスポックからも敬愛を受ける。
賞罰はバルカン星科学名誉勲章、武勇勲章、宇宙艦隊司令官賞2回授賞[5]。
2230年にヴァルカン人の外交官のサレクを父に、地球人の科学者のアマンダを母とし、また養姉妹に地球人のマイケル・バーナムを持ち、ヴァルカン星でヴァルカン人として育った。その出生は度々迫害の原因になり、自分の居場所を求める辛い少年時代を送ったようである。ヴァルカン科学者の最高権威であるヴァルカン科学アカデミーに合格するが、地球人でありながらヴァルカン的に育ちトップの成績を修めるに至ったマイケルとは逆に、ハーフの自分への差別意識と排他性に反発して、史上初めてアカデミー入りを辞退したヴァルカン人となり、多様な種族が共存する惑星連邦宇宙艦隊を自分の居場所と定めて入隊した。この事件はその後、父サレクとの長い確執の原因となった。なお、マイケルも後に過激な純血主義者によるテロに遭いヴァルカン社会を離れて宇宙艦隊に入隊している。
他に親族として異母兄のサイボック、サレクの後妻であるペリンがいる。
2230年、バルカン人の父・外交官のサレクと地球人の母・科学者のアマンダ・グレイソンとの間に生まれる(但しTOS「光るめだま」では祖先が地球の女性と結婚したとも発言しており、初期には設定が固まっていなかったと見られる)。幼少時代をバルカン星で過ごし、バルカン人として育てられたため、感情表現を抑えることや論理を優先する考え方など、振る舞いは一見バルカン人そのものである。内面ではハーフであることへのコンプレックスがあったと見え、自らの地球人的な性向を否定する局面が随所で見られた。バルカンに婚約者がいたものの、彼女が破談を望んだ結果、彼女の代理人として指名されたカークと決闘する羽目に陥った事がある。その際、死亡したと思っていたカークの無事を知り、思わず満面の笑みで「ジム!」と叫んでしまうが、すぐに我に返る(TOS「バルカン星人の秘密」より)。
宇宙艦隊へ入るにあたり、自分と同じ道を歩むものと決めつけていたサレクに反目し、以後、エンタープライズでの任務中(TOS「惑星オリオンの侵略」)に再会・和解するまで、18年間サレクとは会話しない。同エピソードでは父を尊び、母を敬う意外な「孝行息子」ぶりを披露し、侵入者の凶刃に倒れたカークに代わって艦の指揮を執っているとき、心臓病で倒れたサレクを救うために輸血をしてくれとアマンダに頼まれ、「輸血をするなら私は職務を放棄しなければならない(つまり、艦と部下を見捨てなければならない)。自分のせいでそんなことになったら、お父さんは喜んでくれますか」と苦悩の色を見せる(この窮地は、カークが重傷をおし隠して艦長席に復帰したことで打開された)。子供の頃はセレットという猫ほどの大きさの熊を可愛がっており、5歳の時に友人から地球人との混血と言われ泣いた事がある。
義姉にあたるマイケルに対しては、突然姉ができたことを受け入れられなかったのか、初対面では両親から仲良くせよと言われた直後に無言でドアを閉じてしまっており、その後もアマンダが読み聞かせをしている様子を寂しげに覗く。未来から来た赤い天使のごとき存在に会い(DSC第23話「記憶の痛み」)、認識障害ゆえにコミュニケートできている(DSC第26話「永遠なる無限」)。両親の元を離れた後、2257年時点でサレクだけでなくマイケルとも長らく顔を合わせていなかったという(DSC第16話「義弟」)。
『スタートレック:ディスカバリー』シーズン2に登場する。宇宙船エンタープライズ号に配属されたのはカークより早く、当時の艦長はクリストファー・パイクである。『宇宙大作戦』の10年ほど前の『スタートレック:ディスカバリー』の時代、大尉として謎の信号源の調査活動中に精神に変調をきたし、エンタープライズを降りて療養施設に入るが当地で3人を殺して脱走したとされて、お尋ね者となる。バルカン星に隠れていたところを義姉のマイケル・バーナムに発見されてタロス4号星に向かい、タロス人の治療を受ける。マイケルと共にパイクが臨時に艦長を務めていたU.S.S.ディスカバリーに乗り、謎の赤い天使の警告に従って全銀河系の生物をAIによる殲滅から救おうとする。AIの求めるデータとともにマイケルとディスカバリーを未来に送りこみ、艦隊にはディスカバリーが爆発したと偽の証言を行う。
その後『スタートレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』ではエンタープライズの第2副長兼科学主任としてパイクに仕える。マイケルを失った事に深く悲しみを抱き続けていると思われる描写や、バルカン人の婚約者トゥプリングを持ちながら、看護婦のクリスティン・チャペルとの恋愛関係が描かれる等、ケルヴィンタイムラインの若きスポックと同様、人間面の描写が多く見られる。
映画版第5作以降、長年触れられてこなかったサイボックについても、シーズン1で存在が描写された。
『宇宙大作戦』製作初期には、とがった耳や皮膚の色などの「悪魔的な外見」や、テレビドラマにおいて異星人がレギュラーになった前例がない事などから、局側はレギュラーから外すよう求めた。しかしプロデューサーであるジーン・ロッデンベリーは、人類以外のキャラクターを置くことでエピソードをより発展させられると考え、スポックのキャラクターを残すこととした。
艦長がカークに交代した後も同役職でエンタープライズに残ったが、副長だったゲイリー・ミッチェル少佐の殉職により繰り上がって副長となる。
カークたちに対しては彼なりに友情を抱いているらしいが、普段は地球人の感情に基づく言動を「非論理的」と否定している。特に感情的なドクター・マッコイとの意見対立、そしてカークによる調停はストーリーの定番であった。また、理論より実践肌のチャーリー技術主任との関係も微妙なものがあり、ミスター加藤ら他の幹部からも、尊敬されても敬愛されているとは言いがたかった。
とはいえ後に、軍規違反による死刑のリスクを冒してでも元上司のパイクをタロス4番星に送り届けるよう計画・実行したり、カークに気の利いた誕生祝いを贈るなど、きわめて人間的な温かみ、思慮深さが彼の行動の根底にある。
カークの許では副長として絶対的な信頼を得たのはよく知られる通り(小説「ファーストミッション」では、エンタープライズに赴任したばかりのカークに対し、パイクと比較して下に見る傾向にあったと描写されている)。一方、カーク不在の折には自ら指揮を取ることもあったが、その指揮ぶりは理性的すぎ、冷徹すぎ、完璧主義すぎる上に、部下にも理性と冷徹と完璧を要求する傾向が強く、時に非情で横暴に見えることもあり、指揮官としては部下の不評もある。
過去にタイムスリップしたスポックはある女性と出会い(タイムスリップの影響で過去のバルカン人同様に感情に支配されていたため)激しい恋に落ちる。後に書かれたオリジナル小説のうち2作品に、この時できたとされる彼の息子ザールが登場するが、あくまで小説内のみでの設定である。
その後は提督への昇進記録はなく、艦隊を辞して父と同じく外交の道に進む。『新スタートレック』では惑星連邦の大使として登場する。バルカン人とロミュラン人の再統一を目指してロミュラス星で活動し、そしてかつてのカーク以上の独断専行を行う。なお、『スタートレック:ディスカバリー』では、スポックの努力が数百年後に実を結び、再統一が達成されることが語られる。ベンダイ症候群で苦しんだサレクの死に目には会えないが、臨終の場に居合わせたピカードとの精神融合を通して、ロミュラスで亡き父のカトラに触れる。
「スポック」というのは本名ではない。正統なバルカン名は地球人には発音できないとされるため、付けられた呼び名であるとされていたが、劇場版1作目などのヴァルカン語のセリフでも明確に「スポック」と発音されている。また苗字は脚本家D・C・フォンタナが、無理に英語アルファベットに表わすと "XTMPRSQZNTWLFB!" であるとしている[8][9]。
本編である映像作品内では地球人には発音が難しい名前という情報のみ明かされているがノベライズ版『メトセラへの鎮魂歌』では『S'chn T'gai Spock』をスポックのフルネームとしている。
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