シクロブタジエン
ウィキペディア フリーな encyclopedia
1,3-シクロブタジエン (1,3-cyclobutadiene) は分子式が C4H4 と表される、4員環に2個の二重結合を持った有機化合物である。最も小さいアヌレン([4] アヌレン)である。赤外分光法により基底状態では長方形の構造であることが確認されている。シクロブタジエンは理論計算[1]や置換シクロブタジエンの分光分析[2]と結晶学的研究[3]に基づいて、長方形/非平面の基底状態と正方形の励起三重項状態の対の間の平衡状態にあると考えられている。シクロブタジエンは交互に並んだ単結合と二重結合を持っているが、ヒュッケル則[4]を満たしておらず平面構造は三重項の不安定な反芳香族分子であると予測されている。一部のシクロブタジエン-金属化合物は安定である。これは金属原子が系にもう2電子を与えることが原因であると考えられる(シクロブタジエンジアニオン種のπ電子数は6個となりヒュッケル則を満たすため芳香族性を示し安定となる[5])。一重項状態への平面、長方形歪みはヤーン・テラー効果が原因である[6]。テトラ-tert-ブチル置換シクロブタジエンはX線結晶構造を決定するのに十分安定であり、この分析によって歪んだ非平面幾何構造と分子中のC–C二重結合が通常よりも長い(観測値1.464 Å、期待値1.34 Å)ことが明らかにされた[3]。
シクロブタジエン | |
---|---|
1,3-シクロブタジエン | |
別称 シクロブタジエン [4]アヌレン | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 1120-53-2 |
PubChem | 136879 |
ChemSpider | 120626 |
| |
| |
特性 | |
化学式 | C4H4 |
モル質量 | 52.07 g/mol |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
シクロブタジエンのπ電子エネルギーは、対応する鎖状分子の1,3-ブタジエンよりも高い。したがって、シクロブタジエンは「芳香族」ではなく反芳香族であると言われる。シクロブタジエンの電子状態は様々な計算手法によって調べられてきた[7]。一重項状態は長方形構造を持つ。第一励起状態は平面幾何構造を持つ三重項である。長方形構造は2つの異なる1,2-ジューテリオ-1,3-シクロブタジエン立体異性体の存在と一致する。これは、π電子が局在化しており、ゆえに芳香族とは見なされないことを示している。