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ギャンビット (Gambit) はチェスのオープニングにおける戦術の一つ。駒(通常はポーン1個)を先に損する代償に、駒の展開や陣形の優位を求めようとする定跡を言う。イタリア語の足(Gamba)の派生形が語源とされている。
序盤でポーンを1つ(時には複数)相手にわざと取らせる事により、他の面での優位を得る。ポーンの捨て方にも種類があり、それぞれ名前が付いている。定跡化したものをギャンビットと言い、その場で考えたものは通常ギャンビットとは呼ばない。
ポーンを取らせる事で得る利点は、大まかには以下のうちの1つまたは複数である。
多くの場合、ポーンを取った相手のポーンは伸びすぎているために守ることが難しく、結果として後に駒損は解消されることが多い。
白(先手)のギャンビットに対しては黒は、(1) Accepted:相手の手に乗る(ポーンを取る)、(2) Declined:あえて取らない、の2種類が考えられる。あえて取らない場合に、むしろ黒がポーンを差し出し、黒が逆にギャンビットを仕掛ける場合があり、これをカウンター・ギャンビットと言う。ただし広義には黒によるギャンビットすべてを指す。
最も基本的な定跡の一つで、多くの場合は乱戦になる。fファイルをオープンにし、黒の最弱点であるf7をo-o(キング・サイド・キャスリング)なども利用して狙うのが古典的な指し方だったが、e4+d4で中央を固めて長期的な優位を狙う指し方もある。
1.e4 e5 2.f4
ここで黒がf4のポーンを取ると、激しい乱戦になる。2.... exf4 3.Nf3 Be7 4.Bc4 Nf6 5.e5 Ng4 6.o-o Nc6などが例の一つ。
2.... Bc5 3.Nf3 d6 4.Nc3 Nf6などと黒がポーンを取らないと(ディクラインド)、比較的穏やかな展開となる。
2.... d5 3.exd5 e4と逆に黒がdファイルのポーンを差し出すと、ファルクビア・カウンター・ギャンビットとなる。又、3.f×e5??は...Qh4+とされて白負けとなる。
4.Nc3 Nf6 5.Bc4 Bc5 6.Nge2 o-oなどが一例で、黒のみがキャスリングを行っており、白は現状では黒のビショップの利きでキャスリングできない。
比較的穏やかなギャンビット。c4で失ったポーンを白がビショップで手順に取り返すと、o-o(キング・サイド・キャスリング)につながり、損失が少ない。
1.d4 d5 2.c4が基本形で、非常に派生型が多い。いくつかは別の名前が付いている。
2.... dxc4 3.Nf3 Nf6がクイーンズ・ギャンビット・アクセプテッドの基本的な形。
2.... e6とポーンを取らないのがクイーンズ・ギャンビット・ディクラインド。
2.... e5 3.dxe5 d4は対抗策の一つアルビン・カウンター・ギャンビット。黒がeファイルのポーンを差し出し、d4を得る。黒は0-0-0(クイーンサイド・キャスリング)を行ってから攻撃をかけたりするのが狙いであるが、現在では無理筋とされている。
2.... e6 3.Nc3 c5 4.cxd5 exd5 5.e4 dxe4 6.d5はマーシャル・ギャンビット。黒の対策の1つタラシュ・ディフェンスからの変化の一つ。黒がさらにeファイルでポーンを捨てることにより、d5を得る。
ポーンを2個損した代償に素早い展開を狙う、非常にギャンビットらしい手。
1.e4 e5 2.d4 exd4 3.c3 dxc3 4.Bc4 cxb2 5.Bxb2
d、c、bファイルのポーンを連続して捨て、2ポーン損であるが、代償として3つのオープンファイルと駒の素早い展開を得ている。黒が初手からeファイルのポーンが無くなっただけで何も動いていないのに対し、白は中央にポーンを進め、早くもビショップが2つとも展開を完了している。所謂ブリッツ(早指し)で使われることが多い。
スコッチ・ゲームの1変化で[1]、ダニッシュ・ギャンビットに似た形。
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Bc4
4.c3とする手もあり、そうなるとダニッシュ・ギャンビットにナイトを一手ずつ動かした形になる。
シシリアン・ディフェンスに対するギャンビットの一つ。
1.e4 c5 2.d4 cxd4 3.c3 dxc3 4.Nxc3
1ポーン損ながら、中央にポーンを進めナイトが展開し、他の駒も容易に展開できる白に対し、黒はcファイルを開いただけでまだ展開ができない。
シシリアン・ディフェンスに対するギャンビットの一つ。
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.b4 cxb4 4.d4
黒のcファイルのポーンをbファイルにそらし、その代償に中央を理想的なd4+e4の態勢で固める。中央を制した結果、白はよりピース(駒)の展開の速度や駒の効率が得られやすい。
非常に美しい典型的なギャンビット。
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5
黒のビショップに一度bファイルのポーンを犠牲にして手を稼ぐのが目的。本来はここでo-oとしていたが、現在では先に4.b4が普通。以下、黒が取る場合は
4.... Bxb4 5.c3
ここで黒のビショップはBe7、Bc5、古い手ではBa5などがあるが、いずれにしろ6.d4として中央を制圧し、o-oの後、クイーンとビショップで黒の序盤の最弱点f7を狙う、Ba3などで黒のキングサイドをさらに狙う、Qb3からQxb7を狙う、などがある。
黒が主導権を握りにかかる、激しいギャンビット。
1.e4 e5 2.Nf3 f5
黒がfファイルのポーンを捨て、その代償に攻撃権を得る。
別名ブダペスト・ディフェンス。比較的マイナーなオープニング。黒は基本的にポーン損を取り返せる。
1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ng4
ここで白がポーンを守りに行くと
4.Bf4 Nc6 5.Nf3 Bb4+ 6.Nbd2 Qe7
などで黒が取り返すことができる。そこで守れないならば差し出す手もある。
4.e6として黒に応手を聞くのも有力な手。
ルイ・ロペスの黒からの一変化。別名シュリーマン・ディフェンス[2]。
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 f5
黒が一気に仕掛けることになる激しい変化が多い。特に4.e×f5 d5として黒はビショップの展開と センターの制圧を図る。
ルイ・ロペスの黒からの一変化[3]。クイーンズ・ギャンビットの一変化である同名のオープニングとは別の定跡。
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.o-o Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 o-o 8.c3 d5
同じくルイ・ロペスから変化してギャンビットするエーニッシュ・ギャンビットよりは穏やかな展開となる。
1.e4 d5
ギャンビットしたポーンを白が取らないで2.e5と指すとフレンチ・ディフェンスに変化することが多い。スコッチ・ゲームに似た展開にも派生しやすい[4]。
別名フレッド・ディフェンス。
1.e4 f5
対局者の間に棋力の差があり、なおかつ白番が弱いときに黒が仕掛けるギャンビット。所謂「遊び手」であり、実際は悪手とされている[5]。
別名ボルガ・ギャンビット。黒はポーンを1個損した代償にオープン・ファイルを作るギャンビット。比較的新しい定跡で、d4に対する有効手として研究されている。
1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5
黒はオープン・ファイルにルークを配置して白の攻撃に反撃する。
ベンコー・ギャンビットに似た形。
1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 c5 4.d5 b5
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