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キルト(quilt)は、表地(トップ・キルトトップ)に薄い綿(わた)をかませ、重ねた状態で縫った(キルティング)もの、手法。三枚目の生地で綿を挟む場合も多い。綿の厚みで陰影の表情がでる。
キルティングとは、針と糸を使ったミシンや特殊なロングアームキルティングシステムを使用して機械的にステッチすることにより、最低2層の生地を結合するプロセスに与えられる用語である。ステッチの配列が生地のすべての層を通過して、3次元のパッド入りの表面を作成する。3つの層の場合は、通常、トップファブリックまたはキルトトップ、中綿(なかわた)または断熱材、および裏地(無い場合もあり)等と呼ばれる。ダイヤ柄が最も一般的で柄の型を作成依頼する事や、柄通りにミシンを掛ける事でどんな柄でも表現できる。
布に綿をはさむ技法や、端切れを一枚布に仕立てる技法などは各地に存在し、古代エジプトですでに用いられていたとされるが、ここでは、ヨーロッパで発祥しアメリカで発展した技法について述べる。なお、スコットランドの伝統衣装であるキルト (kilt) は、この記事で扱うキルト (quilt) とはまったく関係ない。日本では、多色の布を縫い合わせたパッチワークキルトが主流。
キルトはヨーロッパの寒冷地で発祥したといわれ、保温のために布地に綿をはさんだのが始まりといわれている。
トリスタンキルト等が十字軍の遠征に伴って、ギャンベゾン等の防護服や保温着としてヨーロッパ各地に広まり、上流階級の女性の手芸としてさまざまな技法が編み出された。その後、清教徒のアメリカ移民とともにアメリカに伝わった。
布地の有効利用のために、余った布や端布をつないで作ったのが始まりと言われている。当時は布の利用に主眼がおかれたため、モチーフなどの制作は行われなかった。
産業革命以降、くらしにゆとりがでるとキルトにも装飾性が求められるようになり、様々なモチーフが考案された。南北戦争の際に、モチーフを利用して暗号文を作成したという伝説が残っている。
1800年代半ばから、『キルティング・ビー』と呼ばれる、多人数で一枚のキルトを制作する会が催されるようになり、女性の主要な社交場となった。
1900年代に入り、女性の社会進出が一般化するとキルトは一時衰退するが、1970年にキルト研究家のジョナサン・ホルスタインがコレクションを公開すると、アートの一つ(キルト・アート)として再評価された。
1840年代から1860年代にかけて、ボルチモアの女性たちが作ったアルバム・スタイルのキルトで、ボルチモア・アルバム・キルトとも呼ばれる。メソジスト会派の女性が献金を募る目的で製作したり、牧師への贈り物、結婚のお祝いとして作られたものが多い。華やかな花のアップリケや風景を写実的に表した模様が特徴。現在では、その手法を真似て作るものをボルティモアキルトと呼ぶ場合がある。
1820年代にイギリス人宣教師によって伝えられたパッチワークキルトが独自に発展したもの。大判の一枚布を8つに折り畳んでカットするため、左右対称のモチーフができる。ハワイでは、ハギレを利用する習慣がなかったため、大判の布をあえて細かく裁断して使用したといわれている。パイナップルや花などのモチーフが特徴。
刺し子を『日本のキルト』と呼ぶ場合もあるが、通常はキルトに含めず、日本的な感性で配色されたキルトや、和の素材を使用して作ったキルトを『ジャパニーズキルト』と呼ぶ場合が多い。
1975年に資生堂の主催で開催されたキルト展において、ジョナサン・ホルスタインのコレクションが公開されたことから徐々に『キルター』と呼ばれる愛好家が増え、アメリカに次いでキルトが盛んになった。
当初はパッチワークキルトが主流だったが、トラプントやスラッシュキルト、クレイジーキルトなどさまざまな技法を取り入れ、発展している。 しかし、日本においてキルトは趣味の範囲にあり、生活に根ざしたものとはなっていない。
フィリピンのカオハガン島で作られたキルト。自由な配色と南国的な明るいデザインが特徴。1990年にカオハガン島を購入した崎山克彦夫妻が、現地の住民に伝えたキルトが元になっている。島の観光資源として注目されており、日本から招かれたキルト作家が技術指導にあたっている。
布をはぎ合わせて一枚の布にしたもの(パッチワーク)を、トップにして作ったキルト、パッチワークキルト。ペーパー・ピーシングという台紙に図案を写し、その台紙ごと布を縫いつないでいく技法もある。
パッチワークはエジプトで紀元前3、400年からあり、インドやパキスタン、アジア等でも伝統的に行われている。チャイナ・パッチワークやポジャギ(韓国)が知られる。
パッチワークキルトの一種で、紐状の布を直線的にはいで作る。
土台布の上にモチーフを縫い付ける技法(=アップリケ)でトップが作られているキルト。ハワイアンキルトも、そのひとつである。
アップリケキルトやパッチワークキルトに「ドレスデン・プレート」や「サンボンネット・スー」(日本ではスーちゃん)等のブロックが使用される。
サンボンネット・スーは、アメリカのイラストレーターのバーサ・コーベット・メルチャーが1900年代に発表したサンボンネットを被ったキャラクター「サンボンネットの赤ちゃん(サンボンネット・ベイビー)」を、1910年代にキルト作家のマリー・ウェブスターが「サンボンネット・スー」としてキルトに使用したのが始まり。
トップに一枚布を使い、キルティングで模様を描いたキルト。
フランスで考案された技法。プロヴァンスのキルト、コード付きキルティングとも呼ばれ、中綿を入れずにステッチを施し、ステッチの間に綿糸を詰めて凹凸を出す。通常のキルトに比べ、モチーフ部分を強調して立体化させることができる。昔は、専門の職人がアトリエで作った。貴族に好まれたことから、フランス革命の際に作品の大半が破棄された。
トラプントキルトはイタリアで考案された技法。ブティに似ているが、中綿を入れた状態でキルティングを施し、さらに裏からモチーフ部分に綿や毛糸をつめる。トリスタンキルトがもっとも古い。
アイルランドのケルト族の伝統模様を使ったキルト。バイアステープを使用して模様を作り、キルトトップにアップリケする。最近では、伝統模様だけでなく、独自にデザインされた作品も多い。
フロリダのセミノール族の模様を再現したキルト。ミシンを主に使用する。紐状の布をはいで一枚布に仕立て、それを切って角度をつけて並べ替え、縫い直す技法。セミノールパッチワーク等もある。
19世紀に盛んに作られたキルト。ベルベットなどの綿以外の上等な布を多用し、刺繍やレースなどで装飾を加えたものを、ヴィクトリアン・クレイジーキルトと呼ぶ。通常、中綿は入れない。使用するパーツの形状や配置、配色に制限がない。
16世紀にドイツで考案された技法。 シェニール織と同じ技法で、数枚の布を重ね、0.5cm - 2cm 間隔で縫い、縫い目と縫い目の間に切れ込みを入れて水にさらすと切れ込みの部分がほどけ、起毛し、リボンやモールを連ねたような作品が仕上がる。格子状に縫い目を入れて×字型に切れ込みを入れる場合と、バイアス方向に直線上に縫い目と切れ目を入れる場合とがある。
アップリケの縫い目の部分に黒い縁取りをして、ステンドグラスのように仕上げる技法。バイヤステープを使う方法と、リバースアップリケのように縁取り布をくりぬいて作る方法がある。単色の布を主に使用する。
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