アイヌの歴史
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アイヌの歴史(アイヌのれきし)では、アイヌ民族の歴史を解説する。歴史区分についてはアイヌ史の時代区分、和人側の歴史上のアイヌ観については蝦夷も参照のこと。
かつて、アイヌは13世紀頃に北海道に移入してきた民族とする説があったが、現在では集団交替説を唱える研究者はおらず、アイヌの歴史は縄文時代からアイヌ文化期まで、周辺文化を選択的に受容しつつ緩やかにかつ連続的に移行していったとするのが定説である[1][2]。こうした考古学的見地は、ヒトゲノムによる研究とも親和的である。縄文時代以降の本州の多くは大陸系集団と混血し和人となったが、北海道周辺では大陸系の影響がほとんどなく、10世紀に道北・道東ではオホーツク人と15世紀以降に道南では和人と僅かに混血したのみで、そのルーツは縄文人に近いと考えられている(→アイヌ#遺伝的起源)[3][4]。
その一方で、アイヌ文化は何時まで遡れるのかという歴史上の問いがある。アイヌ文化には古くから狩猟採集というイメージがあるが、考古学的な研究により交易を中心とした文化と捉え直されるようになった[5][6]。北海道は古代から周辺地域との交易・交流を通して広域的な文化が接触する領域であった。アイヌはその交易を担っていく中で、周辺地域の文化を選択的に吸収・翻案して独自の文化を形成してきた。アイヌの歴史は、そうした地政的な環境に加えて北海道周辺の自然に根差して生成された独自の文化・民族の変容の過程と言い換えることができる。それゆえアイヌの歴史の解明には考古学的な研究に加えて、北東アジア世界との相互依存的・広域的な歴史との関連付けと、北海道周辺の自然環境も考慮する必要がある[7][8][5]。