空間ベクトル r の球面極座標として r, θ, φ を導入すると、ラプラス方程式は以下の形になる。
ここで l2 は無次元化した角運動量演算子
の2乗である。
知られているように、球面調和関数 Ylm は演算子 l2 の固有関数である。
Φ(r) = F(r) Ylm をラプラス方程式に代入し、両辺を球面調和関数で割ると、以下の動径方向の方程式とその一般解が得られる。
ラプラス方程式の解のうち一部が正則な体球調和関数
であり、また一部が非正則な体球調和関数
である。
ラカーの正規化
ラカー(英語版、イタリア語版)の正規化(Racah's normalization、またはシュミットの準正規化(Schmidt's semi-normalization))はいずれの関数にも適用でき、単位("1")への正規化の代わりに
とするものである(非正則な体球調和関数についても同様)。応用上多くの場合、ラカーの正規化因子は微分の下で形を変えないため便利である。
正則な体球調和関数を平行移動したものは、次のように有限項に展開される。
- ;\ell -\lambda ,m-\mu |\ell m\rangle ,}
ここでクレブシュ–ゴルダン係数は次式で与えられる。
- ;\ell -\lambda ,m-\mu |\ell m\rangle ={\binom {\ell +m}{\lambda +\mu }}^{1/2}{\binom {\ell -m}{\lambda -\mu }}^{1/2}{\binom {2\ell }{2\lambda }}^{-1/2}.}
類似の展開が非正則な体球調和関数に対しても行え、無限級数に展開される。
- ;\ell +\lambda ,m-\mu |\ell m\rangle }
ここで とする。ブラケットで囲まれた因子は再びクレブシュ–ゴルダン係数である。
- ;\ell +\lambda ,m-\mu |\ell m\rangle =(-1)^{\lambda +\mu }{\binom {\ell +\lambda -m+\mu }{\lambda +\mu }}^{1/2}{\binom {\ell +\lambda +m-\mu }{\lambda -\mu }}^{1/2}{\binom {2\ell +2\lambda +1}{2\lambda }}^{-1/2}.}
参考文献
加法定理は著者によって様々な方法で証明されている。例えば、以下の2文献にはそれぞれの証明が載っている。
- R. J. A. Tough and A. J. Stone, J. Phys. A: Math. Gen. Vol. 10, p. 1261 (1977)
- M. J. Caola, J. Phys. A: Math. Gen. Vol. 11, p. L23 (1978)
±m についての簡単な線形結合によって、体球調和関数は実数値関数の集合に変換される。デカルト座標系で表示された実の正則体球調和関数は、x, y, z についての l 次斉次多項式である。これらの明示的に書かれた多項式は、例えば(球面座標で書かれた)原子軌道や実数値の多重極モーメント(英語版)に現れ、重要である。以下でその導出を行う。
線形結合
先述と同じ定義で、
ただし
ここで は l 次のルジャンドル多項式である。
この m に依存した位相はコンドン・ショートレー位相(Condon–Shortley phase)として知られている。
実の正則体球調和関数は次のように定義される。
また m = 0 に対しては
線形変換はユニタリ行列によるものなので、正規化因子は実数値の場合も複素数値の場合も同じになる。
z-依存因子
u = cosθ と書くと、ルジャンドル多項式の m 階導関数は次のような u の多項式で書ける。
ここで
z = r cosθ だから、この導関数には適当な r の冪乗を掛ければ z のシンプルな多項式になる。
(x,y)-依存因子
次に、x = r sinθcosφ と y = r sinθsinφ に注意すると
同様に
これらより、次のように定義する。
まとめ
低次の関数のリスト
l = 5 以下の関数の明示式を記す。ここで
低次の と は次の通りである。
さらに見る , ...
m |
Am |
Bm |
0 |
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1 |
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2 |
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3 |
|
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4 |
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5 |
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- Steinborn, E. O.; Ruedenberg, K. (1973). “Rotation and Translation of Regular and Irregular Solid Spherical Harmonics”. Advances in quantum chemistry. 7. Academic Press. pp. 1–82. ISBN 9780080582320
- Thompson, William J. (2004). Angular momentum: an illustrated guide to rotational symmetries for physical systems. Weinheim: Wiley-VCH. pp. 143–148. ISBN 9783527617838