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毒性の強いインドールアルカロイドのひとつ ウィキペディアから
ストリキニーネ (strychnine) はインドールアルカロイドの一種。非常に毒性が強い。IUPAC許容慣用名はストリキニジン-10-オン strychnidin-10-one。ドイツ語ではストリキニン (Strychnin)。1948年にロバート・バーンズ・ウッドワードにより構造が決定され[1]、1954年に同じくウッドワードにより全合成された[2]。化合物の絶対配置は1956年にX線結晶構造解析により決定された[3]。
(−)-ストリキニーネ | |
---|---|
strychnidin-10-one | |
別称 ストリキニン | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 57-24-9 |
PubChem | 441071 |
日化辞番号 | J4.576D |
KEGG | C06522 |
| |
特性 | |
化学式 | C21H22N2O2 |
モル質量 | 334.41 g mol−1 |
外観 | 無色結晶 |
密度 | 1.36 |
融点 |
275–285 °C |
水への溶解度 | 不溶 |
log POW | 1.68 |
危険性 | |
安全データシート(外部リンク) | モデルデータシート ICSC 0197 |
EU分類 | T+ 猛毒 N 環境への危険性 |
Rフレーズ | R27/28 R50/53 |
Sフレーズ | S(1/2) S36/37 S45 S60 S61 |
半数致死量 LD50 | 2.35 mg/kg(ラット、経口) |
出典 | |
ICSC Sigma Aldrich | |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
令第七条第二項に規定する薬品は、硝酸ストリキニーネとする。
と定められている[10]。
ヒトをはじめとする脊椎動物において、脊髄や脳に存在するリガンド作動性Cl-チャネルであるグリシンレセプター (GlyR) に対し、アンタゴニストとして作用する[12]。
これは、主に脳幹や脊髄のシナプスで抑制性神経伝達物質として振る舞うグリシンを特異的に阻害し、強力な中枢興奮作用を示す。
痙攣を発する量は皮下注射の場合で、マウス0.4mg/kg、ウサギ0.7mg/kg、イヌ0.25mg/kg。
古くから狩猟の矢毒として使用されており、経口投与よりも皮下投与の方が 毒性が強く現れるという特徴がある。ラットに対する半数致死量(LD50)は、経口では約20mg/kgであるのに対し、皮下注射ではわずか1.2 mg/kgであり、注射によって肝臓を通さず摂取するというだけで、毒性が約17倍近くも跳ね上がる[13]。
経口摂取すると小腸から血流中に入り、肝臓の解毒能力(ミクロソーム系酵素代謝)を超える濃度に達する15~30分ほどで症状が現れる。 激しい強直性痙攣、後弓反張(体が弓形に反る)、痙笑(顔筋の痙攣により笑ったような顔になる)が起こるが、これは破傷風の症状に類似している。また、刺激により痙攣が誘発されるのが特徴。意識障害はなく、筋肉の激しい痛みと強い不安・恐怖を伴う。最悪の場合、呼吸麻痺と乳酸アシドーシスで死に至る[14]。 なお、心循環系、消化器系には影響を与えない。痙攣に伴い、横紋筋融解によりミオグロビン尿が出る。
ヒトの致死量には個人差があり、成人の最小致死量は 30-120mg だが、3.75g 摂取して生存したケースも報告されている[15]。
治療においては、まず患者に刺激を与えないようにして鎮静剤(ジアゼパム、バルビツール酸誘導体など)、筋弛緩剤を投与し、痙攣の防止と気道の確保を行う。 ストリキニーネの体内での分解は早いので、中毒から24時間を過ぎれば予後の生存率は高くなる。
ストリキニーネ中毒は、人と動物に対して致命的な影響を与えうる中毒である。任意の既知の毒性反応のなかでも最も劇的な痛みを伴う症状を引き起こすもののひとつで、しばしば文学や映画(おおむね殺人事件)で描かれている。
興奮剤として使われた事から、1960年代の若者でドラッグ的に使用することも行われた。
かつては興奮剤としてドーピングに用いられた。著名な例としては、1904年セントルイスオリンピックのマラソンで金メダルを取ったトーマス・ヒックスが挙げられる。
ストリキニーネには運動向上能力はないとされるが、2019年現在も世界アンチ・ドーピング機構により禁止薬物に指定されている[17]。
ストリキニーネの構造決定に貢献したロバート・ロビンソンは、「この分子量としては、知られる限りにおいて最も複雑な有機化合物(for its molecular size it is the most complex organic substance known)」 [18]と評した。
少ない分子量でありながら複雑な構造を持つことから、ストリキニーネの全合成は現在に至るまで化学者たちの関心を集めており、1954年のウッドワード以降様々な方法による合成法が報告されている⇒ストリキニーネ全合成。
ウッドワードの合成法は28段階で収率はわずか0.00006%[19]だったが、Rawal(1994年)らの収率10%、Vanderwalの6段階(2011年)[20]まで改良されている。
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