アロワナ目(英: Osteoglossiformes)は、硬骨魚類の分類群の一つ。オステオグロッスム目、あるいは骨咽目(こついんもく)と呼ぶこともある[1][2]。4科28属で構成され、アロワナやピラルクーなど熱帯地方に分布する淡水魚を中心に、およそ218種を含む。
アロワナ目 | |||||||||||||||||||||
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アジアアロワナ(Scleropages formosus) | |||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
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下位分類 | |||||||||||||||||||||
本文参照 |
概要
アロワナ目はヒオドン目とともにアロワナ上目に属する一群で、その系統は古くしばしば古代魚に含められる。化石記録からジュラ紀後期(約1億4千万年前)には既に出現していたことがわかっており、始新世から暁新世にかけて多数の化石種が、アメリカ・ヨーロッパ・アフリカなど広い範囲にわたり発掘されている。日本には現生のアロワナ目魚類はいないが、1989年以降、北九州市の脇野亜層群(白亜紀前期の地層群)から本目魚類の化石が相次いで産出している。その中でアオキイクチュス属(Aokiichthys)および体高・鰭の位置が異なる5種が新属新種として記載されたほか、ユンカンイクチュス属(Yungkangichthys)の新種も発見されている[3]。
舌骨および口蓋を構成する副蝶形骨など、口腔を構成する骨によく発達した歯をもつことが、アロワナ目魚類の特徴である。そのため、獲物を捕らえる際に、多くの魚類のように上下の顎ではなく、口蓋と舌で捕捉する。アロワナ類を総称した「Osteoglossid」という語は、Osteoglossum 属(アロワナ属)に由来するが、この Osteoglossum という学名はギリシア語のοστεον/ostéon(骨)とγλωσσα/glôssa(舌)に由来する造語で、「骨の舌」を意味している。背鰭と臀鰭が体の後方にある種類が多い。尾鰭を支える軟条は16本以下で、骨格の一部(上尾骨など)は癒合している。盲腸は通常2つあり、バタフライフィッシュのみ1つしかもたない。
分類
アロワナ目は4科28属218種で構成される[4]。かつて本目に所属していたヒオドン科 Hiodontidae は独立のヒオドン目とされた。アロワナ科をアロワナ亜目 Osteoglossoidei、ナギナタナマズ科・モルミュルス科・ギュムナルクス科をナギナタナマズ亜目 Notopteroidei としてまとめる場合もある。和名のない分類名については、上野・坂本(2005)によるカタカナ表記に従った[5]。鰾による空気呼吸能力の有無に関しては J.B.Graham(2011)による[6]。
アロワナ科
アロワナ科 Osteoglossidae は2亜科5属8種。南アメリカ・アフリカ・東南アジア・オーストラリア北部の熱帯域に分布する、雑食性あるいは肉食性の淡水魚である。顎に歯をもち、浮き袋は頭蓋骨内に貫通しない。ピラルクー・バタフライフィッシュなど、鰾(うきぶくろ)を空気呼吸に利用する分類群が含まれる。腹鰭は胸鰭の基部よりもずっと後方に位置し、鰭条は6本。
Heterotidinae 亜科
Heterotidinae 亜科は2属2種。しかし、2013年3月発行のCopeia誌には、Donald J. Stewartにより、Cuvier and Valenciennesが1847年に記載したArapaima agassiziiをArapaima gigasとは異なる独立種として復活させるべきとする論文が発表された。ただし、種の記載の根拠となる基準標本は第二次世界大戦で失われたうえ、新たに捕獲もされていないため、論文は原記載文献とその中の詳細な骨格のイラストを元にしている[7]。さらにDonald J. Stewartは2013年9月の同誌に、Arapaima leptosomaを新種として記載している(原文には種小名はないが、英語版アラパイマ属の記事en:Arapaima (genus)を参考にした)。こちらはソリモンエス川(アマゾン川のブラジル・ペルー国境からネグロ川合流地点までのブラジルでの名称)とプルス川との合流地点付近で捕獲された個体を基準標本としている[8]。後者のみを新種と認めれば2属3種である(英語版記事はそうしている)。
下顎にヒゲがない。ピラルクー Arapaima gigas はアマゾン川などに生息する。ナイルアロワナ Heterotis niloticus はナイル川や西アフリカの河川に分布し、副蝶形骨の歯を欠くほか舌骨の歯も退化的である。2属共に鰾に空気呼吸能力を有する。
- Arapaima 属
- Heterotis 属
アロワナ亜科
アロワナ亜科 Osteoglossinae は3属6種。Osteoglossum 属(シルバーアロワナ・ブラックアロワナなど)および Scleropages 属(アジアアロワナ・ノーザンバラムンディなど)は下顎にヒゲをもつ。Pantodon 属はバタフライフィッシュ Pantodon buchholzi のみを含み、以前は独立の科として扱われていた。バタフライフィッシュは西アフリカの熱帯に分布し、鰭条が長く伸びた腹鰭が特徴である。Osteoglossum と Scleropages の2属は空気呼吸をしないが、Pantodon は鰾に空気呼吸能力を有する。
- Osteoglossum 属
- Scleropages 属
- Pantodon 属
ナギナタナマズ科
ナギナタナマズ科 Notopteridae は4属8種からなる。顎に歯をもつ。突起状に伸びた浮き袋が、耳の側面を通過し頭蓋骨内にまで達する。臀鰭が非常に長く、尾鰭と連続している。背鰭と腹鰭はないか、あっても極端に小さい。体(特に臀鰭の上)には斑点状・波状の模様がみられる。大型の魚類で、最大で1.5mに成長する。4属共に鰾は空気呼吸能力を有する。
- Chitala 属
- Notopterus 属
- Papyrocranus 属
- Xenomystus 属
モルミュルス科
モルミュルス科 Mormyridae は18属201種で構成され、アロワナ目の中では最大のグループである。顎に歯がなく、浮き袋は頭蓋骨内に達し、尾鰭は二又に分かれる。本科魚類は口の形が多様性に富んでおり、吻(口先)が長い鼻のように突き出たもの、エレファントノーズフィッシュなど下顎が伸びたもの、丸みを帯びているものなど種類によってさまざまである。川底で餌を探す底生の種類では顎ヒゲをもつ場合がある。多くは体長10cm未満から50cmまでだが、一部1.5mに達する種類がある。
モルミュルス科魚類の一部は尾部の筋肉から分化した発電器官をもつ。発生できる電流は一般に微弱であり、夜行性である彼らは発電能力を周囲の物体の位置を特定するために用いている可能性があるほか、外敵への警戒や仲間とのコミュニケーションにも利用していると考えられている。
本科の魚類は高い学習能力をもつことでも知られる。体重に対しての脳の重さ(特に小脳)が魚類としては例外的に大きく、人間とほとんど変わらない[4]。
- Brienomyrus 属
- Campylomormyrus 属
- Gnathonemus 属
- Hippopotamyrus 属
- Hyperopisus 属
- Marcusenius 属
- Mormyrops 属
- Mormyrus 属
- Oxymormyrus 属
- Paramormyrops 属
- Petrocephalus 属
- Pollimyrus 属
- Stomatorhinus 属
- 他5属
ギュムナルクス科
ギュムナルクス科 Gymnarchidae は1属1種。ナイル川などに生息する。体は細長く、腹鰭・臀鰭・尾鰭を欠き、副蝶形骨および舌骨の歯もない。背鰭は非常に長く、波打たせるように泳ぐことで後進も可能。大きな小脳・小さな眼・発電器官の存在・頭蓋内に達する鰾などモルミュルス科との共通点が多いことから、本科を含めないモルミュルス科を側系統群とみなす場合もある。鰾は空気呼吸能力を有する。
- Gymnarchus 属
脚注
参考文献
外部リンク
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