UCHL1

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UCHL1

UCHL1(ubiquitin C-terminal hydrolase L1、EC 3.1.2.15)は脱ユビキチン化酵素であり、ヒトではUCHL1遺伝子にコードされる。

抗UCHL1抗体によって緑色に染色されたラット脳組織由来神経細胞。細胞体が強く染色され、細胞突起の染色は比較的弱い。アストロサイトは抗GFAP抗体によって赤色に、そして全ての細胞種の核はDNA染色剤によって青色に染色されている。EnCor Biotechnology Inc.による抗体、細胞の調製、画像作成。
概要 PDBに登録されている構造, PDB ...
UCHL1
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

4JKJ, 2ETL, 2LEN, 3IFW, 3IRT, 3KVF, 3KW5, 4DM9

識別子
記号UCHL1, HEL-117, NDGOA, PARK5, PGP 9.5, PGP9.5, PGP95, Uch-L1, HEL-S-53, ubiquitin C-terminal hydrolase L1, SPG79, UCHL-1
外部IDOMIM: 191342 MGI: 103149 HomoloGene: 37894 GeneCards: UCHL1
遺伝子の位置 (ヒト)
4番染色体 (ヒト)
染色体4番染色体 (ヒト)[1]
4番染色体 (ヒト)
UCHL1遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点41,256,413 bp[1]
終点41,268,455 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
5番染色体 (マウス)
染色体5番染色体 (マウス)[2]
5番染色体 (マウス)
UCHL1遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点66,833,434 bp[2]
終点66,844,577 bp[2]
RNA発現パターン
さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 cysteine-type peptidase activity
ペプチダーゼ活性
ligase activity
ubiquitin binding
血漿タンパク結合
alpha-2A adrenergic receptor binding
omega peptidase activity
cysteine-type endopeptidase activity
加水分解酵素活性
ubiquitin protein ligase binding
thiol-dependent deubiquitinase
細胞の構成要素 細胞質

endoplasmic reticulum membrane
ミエリン鞘
細胞膜
細胞内
核質
神経繊維
soma
小胞体
neuron projection terminus
axon cytoplasm
細胞質基質
生物学的プロセス axon target recognition
食性
axonogenesis
ubiquitin-dependent protein catabolic process
タンパク質分解
axonal transport of mitochondrion
response to ischemia
neuromuscular process
negative regulation of MAP kinase activity
侵害受容
細胞増殖
regulation of macroautophagy
adult walking behavior
proteasome-mediated ubiquitin-dependent protein catabolic process
protein deubiquitination
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_004181

NM_011670

RefSeq
(タンパク質)

NP_004172

NP_035800

場所
(UCSC)
Chr 4: 41.26 – 41.27 MbChr 4: 66.83 – 66.84 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス
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機能

UCHL1はC末端を介して付加されたユビキチン加水分解し、ユビキチン単量体を生成する。UCHL1は全ての神経細胞に豊富に存在し(脳内の総タンパク質の1–2%を占める)、その発現は神経細胞、精巣/卵巣、びまん性神経内分泌系(diffuse neuroendocrine system)の細胞およびその腫瘍に特異的である[5][6]

UCHL1の触媒三残基Cys90、Asp176、His161からなり、これらが加水分解活性を担っている[7]

神経変性疾患における重要性

UCHL1のI93M変異はドイツ人1家系のパーキンソン病の病因として示唆されているが、他のパーキンソン病患者ではこの変異は見つかっておらず、この知見には議論がある[8][9]

さらに、S18Y多型はパーキンソン病リスクの低下と関連していることが知られている[10]。この多型は神経細胞に対して抗酸化機能を発揮することが示されている[11]

また、UCHL1はユビキチン単量体を安定化することで保護機能を発揮している可能性が報告されている。UCHL1はユビキチン単量体を安定化して分解を防ぐことで、プロテアソーム分解の標的となったタンパク質へのタグ付けのためのユビキチンプールを大きくしていると考えられている[12]

UCHL1遺伝子はアルツハイマー病とも関連しており、UCHL1は正常なシナプス機能や認知機能に必要とされる[13]。また、UCHL1の喪失によって膵β細胞プログラム細胞死感受性が高まることから、このタンパク質が内分泌細胞保護機能を果たしていること、そして糖尿病と神経変性疾患との関連が浮き彫りとなっている[14]

UCHL1の変異(具体的にはユビキチン結合ドメインのE7A変異)を原因とする早発性の神経変性疾患患者では、視力の喪失、小脳失調眼振脊柱機能障害、上位運動ニューロン障害がみられる[15]

異所性発現

UCHL1の発現は神経細胞や精巣/卵巣組織に特異的であるが、特定の肺腫瘍細胞株でも発現していることが知られている[16]。こうしたUCHL1の異常な発現はがんとの関係が示唆されており、UCHL1がん遺伝子であるとみなされている[17]。さらに、ヒトの膜性腎症のラットモデルであるpassive Heymann nephritisではポドサイト英語版でのUCHL1の新規発現が観察されることから、UCHL1が膜性腎症の病因に関与している可能性が示唆されている[18]。このUCHL1の発現は、ポドサイトの肥大の誘導に少なくとも部分的には関与していると考えられている[19]

タンパク質構造

ヒトUCHL1タンパク質と、それに密接に関連したタンパク質であるUCHL3英語版は、これまでに発見された中で最も複雑なノット構造英語版を有するタンパク質の1つであり、5つの交差を有する。こうしたノット構造はプロテアソーム分解に対するタンパク質の抵抗性を高めている可能性がある[20][21]

UCHL1タンパク質のコンフォメーションは、神経の保護や病理に重要な意味を持っている可能性がある。一例として、UCHL1の二量体化依存的なユビキチンリガーゼ活性は病因となっている可能性があり、α-シヌクレイン凝集の増大をもたらしている可能性がある[22]。UCHL1のS18Y多型は、二量体化を引き起こしにくいことが示されている[12]

相互作用

UCHL1はCOP9S5英語版と相互作用することが示されている[23]

また、UCHL1はパーキンソン病の病理への関与が示唆されているα-シヌクレインと相互作用することも示されている。この相互作用はそのユビキチンリガーゼ活性によるものであり、I93M変異もこの活性と関連している可能性がある[22]

近年、UCHL1はユビキチンリガーゼParkin英語版と相互作用することが示された。ParkinはUCHL1に結合してユビキチン化を行い、UCHL1のリソソーム分解を促進する[24]

出典

関連文献

関連項目

外部リンク

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