TEMPO

ウィキペディアから

TEMPO

有機化合物TEMPO とは、ニトロキシルラジカル (R2N-O•) の一種、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル (2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl) の略称である。安定な有機フリーラジカルの代表例であり、試薬として市販されている[1][2]有機合成において、再酸化剤とともに酸化反応の触媒として用いられる。また、ラジカル捕捉剤として、反応系中のラジカル発生を探知するプローブとなる。一般に「テンポ」と読まれる。

概要 識別情報, 特性 ...
TEMPO
Thumb
Thumb
識別情報
CAS登録番号 2564-83-2 
PubChem 2724126
ChemSpider 2006285 
UNII VQN7359ICQ 
EC番号 219-888-8
ChEBI
ChEMBL CHEMBL606971 
RTECS番号 TN8991900
特性
化学式 C9H18NO
モル質量 156.25 g/mol
融点

36 - 38 °C, 271 K, -0 °F

沸点

真空下で昇華

危険性
安全データシート(外部リンク) External MSDS
GHSピクトグラム 腐食性物質
GHSシグナルワード 危険(DANGER)
Hフレーズ H314
Pフレーズ P260, P264, P273, P280, P301+330+331, P303+361+353, P304+340, P305+351+338, P310, P321, P363, P405, P501
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
閉じる

TEMPO は1960年、Lebelev と Kazarnowskii により開発された。彼らは 2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを酸化し、TEMPO を得た[3]

TEMPO は有機合成において、1級アルコールアルデヒドに変える酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムとともに用いられる[4]

ヒドロキシ基を酸化する真の活性種は、TEMPO が次亜塩素酸で酸化されて発生する N-オキソアンモニウムカチオン (R2N+=O) である[4]。触媒サイクルの中では、N-オキソアンモニウムカチオンがアルコールを酸化しながら自分は TEMPO に戻り、再び次亜塩素酸により N-オキソアンモニウムカチオンとされる。すなわちこのサイクルで、次亜塩素酸ナトリウムは犠牲試薬、再酸化剤としてはたらいている[4]。この反応の例として、(S)-(−)-2-メチル-1-ブタノールの酸化による (S)-(+)-2-メチル-1-ブタナールの合成を挙げる[5]

TEMPOは、基本的に1級アルコールを特異的に酸化する。基質が2級アルコールの部位を持っていても、2級アルコール部位とは反応しない[4]。ただし反応条件によっては、2級アルコールを酸化させることも可能である[4]。次亜塩素酸ナトリウムに加えて亜塩素酸ナトリウムも共存させ、1級アルコールをカルボン酸とする手法も知られる。

4'-メトキシフェネチルアルコールを 4'-メトキシフェニル酢酸へと酸化する例を挙げる[6]

再酸化剤を使うと副反応が起こる場合では、化学当量の TEMPO をあらかじめ系中で N-オキソアンモニウムに変換しておき、そこへ基質を加えて酸化させる。例として、TEMPO の 4-アセトアミド置換体を用いたゲラニオールからゲラニアールへの酸化を挙げる[7]

東京大学磯貝明は、TEMPOを用いてセルロースからセルロースナノファイバーを製造することに成功した[8]

出典

Loading related searches...

Wikiwand - on

Seamless Wikipedia browsing. On steroids.