SNAP25(Synaptosomal-associated protein, 25kDa)は、ヒトではSNAP25遺伝子にコードされるt-SNAREタンパク質である[5]。SNAP25はトランスSNARE複合体の構成要素であり、シナプス小胞細胞膜との膜融合の特異性を担うとともに、緊密な複合体を形成することで両者の融合を実行する[6]

概要 PDBに登録されている構造, PDB ...
SNAP25
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

1KIL, 1XTG, 3DDA, 3RK2, 3RK3, 3RL0, 3ZUR, 2N1T, 3DDB

識別子
記号SNAP25, CMS18, RIC-4, RIC4, SEC9, SNAP, SNAP-25, bA416N4.2, dJ1068F16.2, SUP, synaptosome associated protein 25kDa, synaptosome associated protein 25
外部IDOMIM: 600322 MGI: 98331 HomoloGene: 13311 GeneCards: SNAP25
遺伝子の位置 (ヒト)
20番染色体 (ヒト)
染色体20番染色体 (ヒト)[1]
20番染色体 (ヒト)
SNAP25遺伝子の位置
SNAP25遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点10,172,395 bp[1]
終点10,308,258 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
2番染色体 (マウス)
染色体2番染色体 (マウス)[2]
2番染色体 (マウス)
SNAP25遺伝子の位置
SNAP25遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点136,555,373 bp[2]
終点136,624,348 bp[2]
RNA発現パターン


さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 SNAP receptor activity
calcium-dependent protein binding
血漿タンパク結合
SNARE binding
syntaxin-1 binding
voltage-gated potassium channel activity
syntaxin binding
細胞の構成要素 細胞質
小胞
細胞質基質

成長円錐
ミエリン鞘
BLOC-1 complex
voltage-gated potassium channel complex
細胞膜
シナプス
synaptobrevin 2-SNAP-25-syntaxin-1a-complexin I complex
細胞結合
trans-Golgi network
SNARE complex
perinuclear region of cytoplasm
neuron projection
シナプス小胞
presynaptic membrane
神経繊維
specific granule membrane
somatodendritic compartment
tertiary granule membrane
postsynapse
extrinsic component of cytoplasmic side of plasma membrane
細胞骨格
glutamatergic synapse
生物学的プロセス associative learning
regulation of neuron projection development
synaptic vesicle docking
locomotory behavior
regulation of insulin secretion
synaptic vesicle exocytosis
synaptic vesicle fusion to presynaptic active zone membrane
glutamate secretion
神経伝達物質の取り込み
synaptic vesicle priming
regulation of establishment of protein localization
neurotransmitter secretion
長期増強
化学的シナプス伝達
positive regulation of synaptic plasticity
好中球脱顆粒
short-term synaptic potentiation
exocytic insertion of neurotransmitter receptor to postsynaptic membrane
neurotransmitter receptor internalization
エキソサイトーシス
小胞の融合
potassium ion transmembrane transport
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)
NM_003081
NM_130811
NM_001322902
NM_001322903
NM_001322904

NM_001322905
NM_001322906
NM_001322907
NM_001322908
NM_001322909
NM_001322910

NM_011428
NM_001291056
NM_001355254
NM_001355255

RefSeq
(タンパク質)
NP_001309831
NP_001309832
NP_001309833
NP_001309834
NP_001309835

NP_001309836
NP_001309837
NP_001309838
NP_001309839
NP_003072
NP_570824

NP_001277985
NP_035558
NP_001342183
NP_001342184

場所
(UCSC)
Chr 20: 10.17 – 10.31 MbChr 20: 136.56 – 136.62 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス
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構造と機能

神経伝達物質の放出時にエキソサイトーシスを駆動する分子装置。コアSNARE複合体は、シナプトブレビン、シンタキシン、SNAP-25からの4本のαヘリックスによって形成される。シナプトタグミンはCa2+センサーとして機能し、SNAREのジッピング(zipping)を調節する[7]

Q-SNAREタンパク質であるSNAP-25は、分子中央部のシステイン残基に共有結合したパルミトイル側鎖を介して細胞膜細胞質側に固定されている。このことは、SNAP25は膜貫通ドメインを持たないことを意味する[8]

SNAP-25は、4本のαヘリックスドメインからなるSNARE複合体に2本のαヘリックスを提供している因子として同定された[9]。SNARE複合体は小胞融合に関与し、細胞膜への小胞のドッキングと融合によってエキソサイトーシスが行われる。小胞関連膜タンパク質英語版(VAMP)ファミリーのシナプトブレビン英語版、そしてシンタキシン1英語版もそれぞれ1本ずつαヘリックスを提供することでSNARE複合体の形成を助ける。SNAP-25はシナプトブレビン、シンタキシン1とともに組み立てられ、これらの選択的な結合により正確な位置での小胞のドッキングと融合が行われる[10]

SNARE複合体の形成の際には、シナプトブレビン、シンタキシン1、SNAP-25は結合し、互いに巻き付いてコイルドコイル構造を形成し始める。シナプトブレビンとシンタキシン1の双方のαヘリックスがSNAP25のαヘリックスと結合する。シナプトブレビンはSNAP-25のαヘリックスのC末端近傍に結合するが、シンタキシン1はN末端近傍に結合する[8]

SNAP-25はシナプス前のP型Q型英語版L型電位依存性カルシウムチャネルを阻害し[11]シナプトタグミン英語版のC2BドメインにCa2+非依存的に結合する[12]。SNAP-25はグルタミン酸作動性シナプスではCa2+応答性を低下させるが、GABA作動性シナプスには存在しない[13]

SNAP-25には2つのアイソフォームmRNAスプライスバリアント)が存在し、それぞれSNAP25A、Bと呼ばれている。2つのアイソフォーム間には9アミノ酸残基の差異が存在し、4つのシステイン残基のうちの1つも位置が異なる[14]。両者の主要な特徴は下の表に記されている。

さらに見る SNAP25A, SNAP25B ...
SNAP25A SNAP25B
構造 N末端のαヘリックス

中心部に密集した4つのシステイン残基を含むランダムコイルリンカー領域

C末端のαヘリックス

N末端のαヘリックス

C末端側に密集した4つのシステイン残基を含むランダムコイルリンカー領域

C末端のαヘリックス

発現 胚や発生中の神経組織で主要なアイソフォーム

脳下垂体副腎を除いて成体組織ではほとんど発現していない

胚発生中はほとんど発現していないが、成体神経組織では主要なアイソフォーム[15]
局在 分散 神経終末やバリコシティ(varicosity)に局在[15]
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臨床的意義

マウスのSNAP-25の遺伝子のヘテロ接合型欠失によって、注意欠陥・多動性障害(ADHD)に類似した活動過多の表現型が生じる。このことは、SNAP-25がシナプスでのCa2+応答性を調節していることと一致する。ヘテロ接合型マウスでは、ADHD治療薬アデロール英語版の有効成分であるデキストロアンフェタミン(デキセドリン)によって活動過多の緩和が観察される。SNAP-25のホモ接合型欠失は致死である。その後の研究によって、ヒトのSNAP25遺伝子の変異の少なくとも一部はADHDの素因となる可能性が示唆されている[16][17]

ゲノムワイド関連解析によって、この遺伝子のrs362584多型が神経症傾向と関係している可能性が指摘されている[18]

ボツリヌストキシンA、C、EはSNAP-25を切断し[19]ボツリヌス症麻痺を引き起こす。

相互作用

SNAP-25は次に挙げる因子と相互作用することが示されている。

出典

関連文献

外部リンク

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