AFW誕生の経緯
第二次世界大戦において、戦場の様相は一変した。従来の塹壕を頼みとした防御的なものから、機動力を生かした攻撃的なものへと戦いのスタイルを一変させた。そのような状況の中、従来の戦車を超える機動力や地形踏破性を有する兵器として登場したのが歩行戦車AFW(Armored Fighting Walker)である。
最初にこのAFW開発を行ったのは第二次世界大戦期のドイツである。時の国家元首ヒトラー総統より下された多脚兵器開発指令の元、ポルシェ社とヘンシェル社が共同で開発した多脚兵器「PzKgllアーマイゼ」、ドイツ語で蟻を意味する名を付けられたこの新兵器は当初は実験兵器の1つとしてしか見なされていなかったが、独ソ戦開戦後にソビエト軍が投入したソビエト戦車の高性能にショックを受けたドイツ軍上層部の命により急ピッチで開発が進められ、1942年8月に最初の試作機が完成する。その後、量産された機体は翌1943年7月にチタデレ作戦の山場たるクルスク北翼の戦いに投入される。丘陵地帯において攻撃能力と戦車以上の機動性が発揮されると期待されたが、実際にはアーマイゼ88mm砲型、20mm機関砲型2機種とも初期不良に悩まされ、結局は撤退時に追撃してくるソビエト軍戦車隊に対して固定砲台として使い捨てにされた。その後、数々の問題点は解決されたものの、戦況の悪化により生産数も落ち込み、東西からドイツに向けて迫る連合国軍の前では活躍の場も無かった。
一方、アメリカでは核戦争下において有効な陸戦兵器の開発が、原爆開発計画「マンハッタン計画」の一部として行われ、その過程で「放射線から乗員を守る密閉型戦闘室を備え、なおかつ核爆発の影響で荒れた地面を走破可能な歩行兵器」という案が固まり、これがアメリカにおけるAFW開発の始まりとなった。その後、1944年6月のノルマンディー上陸作戦にてアメリカ軍はドイツ軍の多脚兵器を鹵獲、8月にはAFWの前身である市街地戦用対歩兵掃射兵器として開発された歩行兵器「Wm-1」が、ドイツ軍を相手に活躍する。その後、密閉型戦闘室が放射能の遮断に対して不完全なことが証明されるも、開発に関わっていたGMI社は「圧倒的火力を有する大型AFWによって戦場を制圧する」という新コンセプトを打ち出し、アメリカ軍の支持を得たばかりかアメリカにおけるAFW開発の方向性をも定めた。
ソビエトでは、スターリングラードより始まった本格的な反攻作戦の中で、ドイツ軍のAFWと幾度となく交戦する中、次第にAFWに着目してゆく。そして、1945年2月にドイツ国境のオーデル川まで進軍していたソビエト軍は、東プロシアの兵器工場を接収。その中には多脚兵器プラントもあり、これによってソビエトでのAFW開発が始まる。その後、ドイツ多脚兵器拡大コピーである「Ire-3」が完成し、同年9月の北海道上陸作戦に投入された。
日本におけるAFW開発は、1944年7月にドイツからUボートにて設計図とネーベルン社技術者が到着したことをきっかけに、これに光菱工機の技術者を加えてスタートする。この当時、戦局の悪化で物資は欠乏し、基本部品の質は低下していたが、軍部の全面的協力と技術者達の不眠不休の努力が実り、1945年4月にはドイツAFWの縮小コピーである「五式甲脚装甲車」の生産・配備が進められた。そして、この五式甲脚装甲車は同年9月に北海道へと上陸したソビエト軍のIre-3と史上初のAFW同士の戦闘を展開。ソビエト軍に多大な出血を強いるも結局は物量に勝るソビエト軍に制される。また、同年11月のアメリカ軍による九州上陸作戦(オリンピック作戦)でもアメリカ軍を相手に砲火を交えた。
平野の多いヨーロッパではあまり活躍の場が無かったAFWは、山地が多く国土面積の狭い日本では極めて適した兵器であり、この日本における連合国軍を相手にしての活躍ぶりがAFWに対する評価を好転させることになる。その後、1950年6月に勃発した「日本戦争」ではAFWは南北日本両軍が主力兵器として使用。その有効性が証明された結果AFWは陸戦の基幹兵器として認められた。
AFWの機種
- 甲脚砲
- 1964年現在、AFWの中でも最も量産されている種類で、火力、装甲、機動力のバランスが取れた傑作品である。陸戦の王として陸軍の主力兵器として君臨している。機体構造はコクピットとエンジン、機関銃を備えた本体と主砲腕となっている右腕、白兵戦用の格闘腕である左腕そして防盾と呼ばれる増加装甲。中距離での戦闘が得意。主な必殺技「即応射撃」。
- 軽甲脚
- 多脚砲に次いで古い歴史を持つ種類。火力、装甲を犠牲にして、機動性を追求した機体。開発当初はAFWの集団運用の要たる装甲指揮車両だったが、現在では主に観測や偵察を任務とし、戦場での需要は大きい。機関砲や軽戦車砲を主武装としている。近距離での戦闘が得意。主な必殺技「回避運動」。
- 多脚砲
- 史上初のAFW「アーマイゼ」以来、AFWの中でも最も古い歴史を持つ種類。この多脚砲を元にして様々なAFWが開発された。大型化した砲身を支えるために、複数の脚があるのが特徴。口径100mm以上の長砲身砲を主武装としている。遠距離での戦闘が得意。主な必殺技「緊急充填」。
- 対甲脚
- 「日本戦争」後に出現した新しいAFWで火力と装甲のせめぎあいの流れに対抗するため近接戦闘能力を向上した機体である。機体自体は甲脚砲と同様の形状をしており、防盾もある。その一方で両腕は格闘腕となっており、そのため主砲の砲身は本体に内蔵された固定式で、しかも白兵攻撃の妨げにならないよう砲身長を短くしている為有効射程は短く、命中精度もあまり良くない。白兵距離での戦闘が得意。主な必殺技「高速移動」。
- なお、南日本軍やアメリカ軍など西側諸国軍は長距離火力を主としているため、対甲脚の開発計画自体が存在せず、そのため本機種は北日本軍やソビエト軍が運用する、東側オリジナルのAFWである。既存の火力を主体とするAFWとは運用の異なる兵器であるが、一部ではAFWが進化を遂げる中で発生した過渡期の機体と推測されている。
登場機体
劇中で登場するAFWは、各パイロットが自分の機体に付けた愛称と、メーカーが定めた名前が存在する。また機体の主武装と副武装は、モデルとなった第2次世界大戦時の戦車や装甲車、自走砲と同様の組み合わせである。
- 白虎
- 雅美・フォン・ヴァイツエッカーの初期搭乗機。
- 光菱インダストリー製の甲脚砲。メーカー名は壱式甲脚砲。火力と機動性を重視して開発され、光菱インダストリーが独自開発した高性能エンジンと駆動系を有する、純国産の機体。ただしその分、装甲が若干犠牲となっている。
- 南日本軍次期新型AFW候補機の1番目の機体である為、「壱号機」とも呼ばれる。
- 主武装は88mm砲L56、副武装は7.92mm機関銃。
- モデルはティーガーI戦車。
- 機体のシャーシの重量に対してエンジンの出力が過剰だった為、ヴァイは操縦時に余剰慣性を押さえ込むのに気を配らねばならなかった。
- 百虎
- 雅美・フォン・ヴァイツエッカーの2番目の搭乗機。
- 補給もままならない状況下で戦闘と無理を重ねた結果、故障し歩行すらままならなくなった白虎を修理・改造した結果誕生した機体。白虎に比べて各性能が向上しとりわけ耐久性が大幅に向上した。
- 主武装と副武装は白虎と同じ。
- モデルはティーガーII戦車。
- ベースとなっているのはマチルダがネーベルン社で初めて開発に携わり、その後カルマに提供された試作機「六号D型甲脚砲」で、防御力に重点を置き過ぎて機動性が劣悪だった為実戦投入は見送られ、補給拠点「社」の格納庫で保管されていた。
- 乗鞍岳の戦いの後、試作機を発見したマチルダのアイデアで白虎のエンジンと駆動系を換装。試作機のシャーシは白虎のものより重量は重いが堅固な作りで、光菱インダストリー製のエンジンともマッチしており、結果としてヴァイは従来の問題点である余剰慣性の押さえ込み操縦から解放された。
- 水狐
- 皆川リョウコの搭乗機。
- 三菱インダストリーとネーベルン社が壱式甲脚砲の試作機として共同開発した甲脚砲。メーカー名は65式甲脚砲。甲脚砲ながら白兵戦を重視した設計であり、優れた白兵攻撃力と、強固な装甲を有する。その代償に、シャーシの懸架重量制限の関係で、主武装は壱式甲脚砲よりも一回り小さなものを装備せざるを得ず、火力面では若干劣る。
- 南日本軍次期新型AFW候補機の2番目の機体である為、「弐号機」とも呼ばれる。
- 主武装は75mm砲L43、副武装は7.92mm機関銃。
- モデルはIV号戦車。
- 西側甲脚砲の中で白兵戦に適した本機をリョウコは父皆川英臣への復讐の道具に使おうとしていた。その為、英臣の愛機である「鬼の対甲脚」こと高性能対甲脚「夜叉」に対抗すべく整備の時は常に白兵戦重視の調整を行っていた。
- 九鬼
- 鬼無里謙一の搭乗機。
- ダイムラーが開発した軽甲脚。メーカー名は2号軽甲脚。開発当時は主力級の傑作機であったが、現在ではAFWの重装甲化・大火力化が進んだ為その運用方式も偵察や連絡に変わってゆく。対AFW戦より対人戦向けの機体。
- 主武装は20mm機関砲、副武装は無し。
- モデルはII号戦車。
- リトル・ジョン
- ジョン・リスゴーの搭乗機。
- GMI社が開発した多脚砲。メーカー名はM10多脚砲。大火力の多脚砲の本場であるGMI社製だけに、強大な火力を誇る。その要であるM1カノン砲は別名「ロング・トム」。
- 主武装は155mm加農砲、副武装は37mm砲。
- モデルはM40自走砲。
- 本機は強奪された超大型AFW「ドーラ・グスタフ」の破壊をカンパニーことCIAより命じられたジョンが、その任務を遂行するために用意された機体である。その為、試作段階の大出力エンジンを搭載する等高性能にカスタマイズされており、劇中では故障し歩行もままならなくなったヴァイの白虎を乗せて移動するという離れ業を行っている。
- 桜舞
- 桐野彩菜の搭乗機。
- ネーベルン社が開発した多脚砲。史上初のAFW「アーマイゼ」の流れを汲む機体で、生産された内の数機がカルマに提供された中の1機を彩菜が使用している。同じ多脚砲のM10多脚砲に比べて、火力よりも速射性を重視している。
- 主武装は150mm野砲、副武装は7.92mm機関銃。
- モデルはフンメル (自走砲)
- 鵺
- 長谷部純の搭乗機。
- GMI社が初期に手がけた軽甲脚で、比較的有名な部類だった機体を純が改造した機体。軽戦車砲を装備している為軽甲脚としては高火力であり、ジャイロスタビライザーを装着したことで命中精度も向上している。
- 主武装は37mm砲L54、副武装は12.7mm機関銃。
- モデルはM3軽戦車。
- 軽甲脚としては優秀な機体であるが、純自身はいずれ「陸戦の王」と呼ばれる甲脚砲のパイロットに転向しようと考えている。
- 神夷
- 桐野一兵の搭乗機。
- 元々は大東亜戦争末期に光菱工機がソビエト軍の多脚砲に対抗すべく開発したAFWで、外観も性能も現在の軽甲脚に近い機体だったが、一兵による改造により白兵戦能力を有するようになった。そのため、劇中では対甲脚に分類されるが、純粋な対甲脚とは別物である。本機は射撃時に命中精度と安定性を高めるべく機体を地面に接地し射撃終了後は自力で起き上がる機構を備えていたが、この機構を改造強化することで本来の利用法のみならず白兵戦用の格闘腕としても使えるようになった。また、装甲も大幅に強化されている
- 一兵が旧日本軍のAFWパイロットとして、大東亜戦争時から乗り続けている愛機。彼が「ウィッチ・ハウンド(魔女の猟犬)」の名でソビエト軍から恐れられた数々の戦いと、常に共にあった。そのため一兵は「わしの伴侶」とまで言っている。
- 主武装は47mm砲、副武装は7.7mm機関銃。
- モデルは九七式中戦車。
- 元に比べて大幅に改造を受けた機体であるが、一兵本人いわく「射撃は性に合わん」との理由で火器類は特に手を加えられていない。本機を目にしたマチルダは積んでいる47mm砲を「年代物」と言ったが、格闘腕の構造には興味を示していた。
- テンペスタ
- エミリオ・パニーニの搭乗機。
- 盛岡収容所解放時に、収容所のAFW格納庫に保管されていた対甲脚。発見後にシュトライフェンによって接収されるが、その後の北日本義勇軍との戦闘時には整備が未完了だった為に待機状態であった。カルマ拠点防衛戦では整備が完了しエミリオの搭乗機として実戦投入される。対甲脚ながら射撃性能も重視されており、火力と命中精度は良好である。
- 主武装は75mm砲L24、副武装は7.92mm機関銃。
- モデルはIII号突撃砲A型。
- 本機は密かに北日本にAFW技術を提供していたシュリンゲンの産物であるAFW。シュリンゲン側の機体名は4式対甲脚。そのため、格闘腕以外のパーツや火器はネーベルン社製のAFWと同様のものを使用しており、外観はあたかもネーベルン社製AFWの特徴を有する。
- 最終的にこの機体が、シュリンゲンの不正を暴く証拠となった。
- 豹牙
- 海宝雄の搭乗機。
- ネーベルン社が開発した甲脚砲。メーカー名は零式甲脚砲。従来の甲脚砲とは異なり、両腕に折りたたみ式の主砲を備え射撃戦・白兵戦双方に対応している。この砲は構造面では複雑だが絶妙な構造によって実戦での負担にも耐えうる作りになっている。鬼無里によれば折りたたみ式の主砲は命中精度は高くなく、機体自体の性能の高さゆえに乗り手を選ぶ機体であるが、反面乗る人間の腕が良ければこうした点は関係ないとのこと。
- 南日本軍次期新型AFW候補機の3番目の機体であり、シュリンゲンをして壱号機こと壱式甲脚砲、弐号機こと65式甲脚砲をしのぐスペックを有しているが、富士演習場での実戦演習において海宝の手によって強奪される。その後、飯岡の港より輸送船にて北日本領内へと運ばれ、盛岡収容所のAFW運用施設にて調整が施され、機体のカラーリングも赤を基調とした「クリムゾン・ファントム」こと海宝の愛機らしいものへと塗り替えられた。また、この際海宝より「豹牙」の名を付けられる。
- 本来は南日本軍次期新型AFW候補機の3番目の機体である為、南日本側の呼称は強奪前・後を通して「参号機」。
- 主武装は75mm砲L48、副武装は7.92mm機関銃。
- モデルはV号戦車パンター
- 本機はネーベルン社が単独開発したことになっているが、実際には日本戦争時に亡命してきた北日本のAFW技術者が持ち込んだ北日本の技術を盛り込んで作られたAFWであり、シュリンゲンも開発に深く関わっていた。その経緯から、本機を「鳳」の暗号名で呼ぶ海宝や北日本義勇軍の将兵達からは南日本が北日本から奪い取った機体であるという思いを抱いており、海宝は強奪時にヴァイやロドリゲスに対して「この機体は返していただく」とまで言い放っている。なおこの際、ネーベルン社所属の本機のテストパイロットであった元南日本軍人の霧島慎二、そしてネーベルン社に属していた先述の亡命技術者は海宝の手によって全員殺害されている。
- ただし、皆川英臣が立案したクーデター計画では最重要目標は「ドーラ・グスタフ」であり、海宝による白昼堂々の強奪事件は南日本の目をドーラから反らす為の陽動作戦であった。しかし、先述の通りに本機に対する海宝達の思い入れは深く、海宝の手腕によって見事北日本へと「取り戻された」。
- このような事情から、シュリンゲンは本機が北日本が南日本に対する外交上の切り札に使い得るとし、最悪日本戦争が再発するとまで言った上で極秘に破壊するよう厳命。ヴァイ率いるシュトライフェンは数々の戦いを経てたどり着いた津軽要塞にて、ロドリゲス発案の元英臣率いる北日本義勇軍とソビエト軍が激戦を繰り広げる混乱の中に、両軍の疲弊を待たずして突入。その結果混戦の中で破壊に成功する。
- しかし、実際のところ本機は北日本のAFW技術が用いられているとはいえ、製造したのはネーベルン社であるため、本機の存在が南北日本間の戦争の火種になるのは無理があり、海宝達の本機に対する感情も第三者から見れば単なる一方的な思い込みに等しかった。そこから推測を重ねたヴァイ達は真相に到達する。本機は元々シュリンゲンによって北日本に提供される予定にあり、富士演習場の強奪事件もシュリンゲンの権限によって揉み消せるものであった。ところが英臣によってドーラが強奪されたことでシュリンゲンは否応なしに責任を問われることになってしまい、ドーラを秘密裏にどうにかせよとのアメリカからの圧力もあって、シュトライフェンを編成して北日本に送り込む羽目になってしまった。
- 夜叉
- 皆川英臣の搭乗機。
- ソビエト製の高性能対甲脚。新設計ではなく、対甲脚S-85シリーズをベースにした機体である。S-85シリーズとの違いはエンジン出力と装甲の強化、折り畳み式砲身を追加した主砲である。しかし、その高性能が仇になってソビエト軍で本機を扱いこなせるパイロットはおらず、北日本義勇軍を率いる英臣に託された。
- 主武装は85mm砲L52、副武装は7.62mm機関銃。
- モデルはSU-85 (自走砲)。
- 北日本義勇軍隊長機の証として、機体の前面には大きく部隊章である角の生えた牛の頭をかたどったマーキングがされている。この部隊章は角の生えた鬼のようにも見える為、英臣の命を狙うリョウコは本機のことを「鬼の対甲脚」と呼んでいた。
- 最後には英臣達の決起の果て、津軽要塞の戦いにおいて敗れ、本機は大破し英臣も死亡した。
- G.セルゲイ
- セルゲイ・イワノヴィッチ・エデムスキーの搭乗機。
- ソビエト製の重多砲塔甲脚砲。ソビエトの代表的AFWである重多砲塔多脚砲の流れを汲む機体。ベースとなった重多砲塔多脚砲はソビエト本国では、AFWの重装甲・大火力化が進む中過大化する重量を支える脚の開発が滞ったためH-53シリーズを最後に開発がストップし、開発対象は主力の甲脚砲、そして次世代機の対甲脚にシフトしてゆく。しかし、セルゲイはこの重多砲塔多脚砲をこよなく愛し、自らの権限で開発を続行した結果、既存の甲脚砲を上回る火力と装甲を有しなおかつ、多脚砲以上の機動性を獲得した本機を完成させた。
- 主武装は76.2mm砲、副武装は7.62mm機関銃。
- モデルはSMK (戦車)、またはT-100。
- 津軽要塞にて英臣率いる北日本義勇軍が決起した折には自ら鎮圧部隊を率いて急行するも、強固な反撃やシュトライフェンの攻撃の前に本機は小破、セルゲイは「増援を要請する」との名目で離脱する。その後、函館の戦いにおいては精鋭部隊である「親衛赤軍」まで投入するが、戦闘の末ソビエト軍は親衛赤軍を含めて大打撃を被り、自ら押さえていた函館港での戦いの果てに本機は大破し、セルゲイは戦死した。
- ドーラ・グスタフ
- 海宝雄の最後の搭乗機。
- モデルは80cm列車砲。
- 1944年、終戦間際のドイツにおいて開発され、未完成のまま実戦投入された超大型AFW。ビルを横倒しにしたような外観の機体で、移動には大量に装着された脚を用いる。当時のコンセプトは主砲である800mm40口径砲による超長距離砲撃によって、敵を粉砕するものであったが、実際には移動する目標に対する命中精度は低く、連合国軍相手に特に戦果を出すことなく終戦を迎えた。
- 終戦後本機はアメリカ軍の手で捕獲され、アメリカ本土へと移送された後アメリカ軍当局の元で管理下に置かれた。その後、アメリカとソビエトとの間で核軍拡競争が進む中、アメリカは東西両陣営の対立の縮図にして、世界で初めて核兵器が実戦使用された日本での核使用を実質的に禁止した「新空戦規約」に抵触する航空機やミサイル兵器とは異なる、全く新しい運用方法の核兵器開発に着手。そのベースとしてドーラに白羽の矢が立った。ドーラの主砲はそれだけでも長大な射程と絶大な火力を有するが、アメリカ軍当局はこの主砲で核砲弾を発射することを発案。多脚砲において大きなシェアと多大な実績を有するGMI社によって改修が行われた。
- この改修により、ドーラには高精度な照準システムが施され、かつては不可能だった移動目標へのピンポイント砲撃が可能となった。そして、アメリカ軍当局はドーラの核発射演習を行うべく、日本戦争以来未だ緊張の続く北日本との軍事境界線への戦力強化のための配備という名目で海路で横須賀港へと移送し、そこから陸路にて運搬した。
- ところが、軍事境界線への運搬中にドーラは英臣率いる北日本義勇軍の襲撃を受け、無人の貨車を突入させるという大胆な方法の前に運搬部隊は壊滅。南日本・アメリカ側による追跡を困難にすべく線路を徹底的に破壊した上で、英臣はドーラを北日本領内へと強奪した。その後、「龍」の暗号名を付けられたドーラは更なる強化改造が施される。コクピットのある機体前部にマウントされた甲脚砲型AFWには、両腕部に76.2mm砲が装着され、本体部には7.62mm機関銃と白兵戦用のショベル型格闘兵器が装備される。また、ドーラ本体には大型の増加装甲が施され、その表面には北日本義勇軍の切り札とばかりに独自のカラーリングがされた。こうした改造により、ドーラは単独での近接戦闘をも可能にした。
- その後、ドーラはソビエトに対する英臣のクーデターを悟らせない為極秘裏に津軽要塞に向けて移動を開始。途中今別にてシュトライフェンに捕捉されるも海宝の阻止行動や鳥羽の犠牲もあって津軽要塞に到着。その絶大な火力の前に津軽要塞はあっけなく英臣達の手に落ちた。その後、シュトライフェンとセルゲイ率いるソビエト軍鎮圧部隊が津軽要塞に迫る中、ドーラは前々からの英臣のクーデター計画に従い、眼前での戦闘には投入されず津軽要塞にソビエト軍が極秘に配備していたソビエト製核弾頭と共に、豹牙を破壊され英臣と今生の別れを交わした海宝やその部下の手で青函トンネルを通ってヴァストカヤスクへと移動。松前にて核砲撃に向けて準備を進めるが、準備が整う前にシュトライフェンが到着する。これに対し海宝の部下達はAFWを駆り攻撃を行い、海宝もドーラの通常弾を用いた長距離砲撃にて援護するが、守りを突破したシュトライフェンに懐に入られ砲撃の為の測距や弾道計算を行う余裕を失い、やむなく近距離戦に移行する。しかし、壮絶な戦いの果てドーラは大打撃を被り海宝も重傷を負うが、海宝は最後の意地で核砲撃を強行。放たれた核砲弾は英臣の計画通りにヴァストカヤスクの無人の原野に炸裂した。その直後、英臣のクーデター声明を録音したものがあらゆる周波数の電波にて流され、同時にドーラも大破。海宝もドーラと運命を共にした。
- なお、スペック上ドーラの主砲の最大射程は通常弾の鉄鋼弾7.1tで38000m、核砲撃用の特殊弾頭4.8tでは48000mとなっている。この射程はSRBM(短距離弾道ミサイル)にも劣るが、砲弾自体に推進力が無い為新空戦規約には一切抵触しない。
一般敵機
本作に登場する一般の敵機は北日本製、もしくはソビエト製のAFWである。これらの機体には以下の条件がある。
機体名は基本型を示す名前の後に、A・S・B・Cいずれかのアルファベットが付く。A型は北日本軍の一般部隊に配備されており、一部は南日本国内で活動する左翼共産ゲリラへと提供されている。S型は敵に機体を鹵獲される恐れの少ない、南日本との軍事境界線から離れた後方の部隊に配備されている。B型は精鋭部隊である北日本義勇軍にのみ配備されている高性能機。C型は北日本とヴァストカヤスクに展開するソビエト軍に配備されている機体で、最高水準の性能を有する。これは西側陣営の南日本との有事に備え、かつ衛星国である北日本への軍事的圧力をかける意味合いが強い。
なお、これら一般機は第2次世界大戦時にソビエト軍に配備されていた戦車や装甲車、自走砲と同様の主武装と副武装を有している。
- H-43シリーズ
- 洗練された形状と優れた運動性を持つ甲脚砲。主武装は76.2mm砲、副武装は7.62mm機関銃。
- なお、H-43Bは北日本義勇軍下士官、鳥羽兼朝の搭乗機でもある。
- VH-2シリーズ
- 鈍重だが、攻撃力を重視した設計の甲脚砲。主武装は152mm砲、副武装は7.62mm機関銃。
- H-37シリーズ
- 小型軽量の軽甲脚。主武装は20mm機関砲、副武装は無し。
- BH-5シリーズ
- 重火力の軽甲脚。主武装は45mm砲L46、副武装は7.62mm機関銃。
- H-53シリーズ
- ソビエト伝統の重多砲塔AFWの流れを汲む多脚砲。主武装は122mm砲、副武装は45mm砲と7.62mm機関銃。
- Su-76シリーズ
- 重多砲塔AFWの要たる脚部開発が滞ったソビエトにおいて開発された、西側と同様のスタイルである多脚砲。H-53シリーズに比べて運動性や速射性で勝っている。主武装は122mm砲、副武装は7.62mm機関銃。
- S-85シリーズ
- 台形状の本体が特徴の対甲脚。主武装は85mm砲L52、副武装は7.62mm機関銃。
- 北日本義勇軍を率いる皆川英臣の搭乗機、夜叉の開発時にその元となった機体でもある。
- IS-2シリーズ
- 重装甲と大火力を有しながら、良好な運動性を有する対甲脚。主武装は100mm砲、副武装は7.62mm機関銃。