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ICH(医薬品規制調和国際会議)のサブスクリプション製品であるMedDRA(メドラ、Medical Dictionary for Regulatory Activities)は、市販前(前臨床研究~第III相臨床試験)から市販後(ファーマコビジランスまたは第IV相臨床試験)までの薬事プロセスにおいて、規制当局やバイオ・医薬品業界が安全性情報のデータ入力、検索、評価、提示のために使用する、臨床的に検証された国際的な医学用語辞書・類語辞典である[1]。また、有害事象分類辞書でもある[2]。
MedDRAの最初のバージョンは、1999年に英語と日本語でリリースされた。
現在、MedDRAは、中国語、チェコ語、オランダ語、フランス語、ドイツ語、ハンガリー語、イタリア語、韓国語、ポルトガル語、ブラジルポルトガル語、ロシア語、スペイン語にも翻訳されている[3]。
多くの国や地域では、バイオ・医薬品会社が安全性報告のためにMedDRAを使用することが義務付けられている。また、煙草や化粧品を含む他の多くの業界でも、健康上の有害事象を把握するためにMedDRAの使用が始まっている。
ICHの全ての規制メンバーは、5年以内にMedDRAを導入することが期待されている。
2020年現在、以下のICH規制メンバーがMedDRAを導入している:EC(欧州)、FDA(米国)、HSA(シンガポール)[4]、保健省(カナダ)[5]、MHLW/PMDA(日本)、スイス医薬品局(スイス)、TFDA(中華台北)[要出典]。
ICH規制メンバーによるMedDRAの導入状況に関する情報は、ICHのウェブサイトで更新されている[6]。
MedDRA は国際的に広く使用されており、125か国以上の6,800以上の組織が加入している。各組織は、そのユーザー数に関わらず、MedDRAのサブスクリプションは1つで済む。
ICH は、MedDRAを開発し、継続的に維持することにより、ヒトが使用する医薬品に関するデータの規制上の伝達や評価に使用できる、単一の標準化された国際的な医学用語を通じて、臨床情報の交換を促進することに努めている[7]。その結果、MedDRAは、医薬品の開発ライフサイクルの全段階における登録、文書化、安全性監視に使用できるように設計されている[7]。標準化された単一の用語は、規制当局、産業界、その他の利害関係者にいくつかの明確な利点をもたらす。
作成開始 - 1994年10月、英国の用語集「MEDDRA Version 1.0」が基礎として採用され、更なる発展・充実のためにICH M1 専門家作業部会が結成された[8]。
バージョン 1.0(αテスト版) - 1996年2月、製薬会社および三極(日米欧)規制当局がテスト開始。
バージョン 2.0 - 1997年7月。用語集名称が MedDRA(Medical Dictionary for Regulatory Activities)と決定する。
バージョン 2.1(初期バージョン) - 1999年3月リリース。英語版:MedDRA国際維持管理機関(MSSO)から、日本語版:日本MedDRA維持管理機関(JMO)から。
その後2年間は 年4回、その後は 年2回(3月と9月)更新されている[9]:スライド21。
2024年4月時点ではバージョン27.0である[10]。
MedDRA辞書は5段階の階層で構成されている。最も高い、または幅広いレベルは器官別大分類(System Organ Class、SOC)であり、さらに高位グループ語(High-Level Group Terms、HLGT)、高位語(High-Level Terms、HLT)、基本語(Preferred Terms、PT)、そして最後に最も細かい下層語(Lowest Level Terms、LLT)に分かれている[11][12]:7。さらに、MedDRA辞書には、MedDRA標準検索式(Standardized MedDRA Queries、SMQs)が含まれている。SMQsは、定義された医学的状態や関心のある分野に関連する用語のグループである[13]。
SMQは、ファーマコビジランスや臨床開発において、医薬品の安全性に関する問題を調査するための第一歩として、MedDRAでコーディングされたデータの検索を容易にするために開発されたものである。
現在、100以上のSMQが作成されている[14]。必要に応じて追加のSMQが作成される[15]。
個々の症例は通常、最も具体的なレベル(LLT)でデータ入力のためにコード化され、件数や症例の出力は通常、PTレベルで行われる。上位のレベル(HLT、HLGT、SOC)と SMQ は、検索や出力の整理、集計に使用される。
5つのレベルの階層は、それぞれのレベルで上位と下位の用語と連結されている。上位の用語は、それにリンクされている下位の用語を表現するより広範なグループ化された用語である。このように階層的なレベルは、用語集の垂直方向のリンクを表している[16]。
階層構造は、データを柔軟に検索したり、データを判り易く表示したりするための重要なメカニズムである。この用語集は5つのレベルで構成されており、必要とされる具体性のレベルに応じて、特定のグループまたは広範なグループによってデータを検索するためのオプションを提供している。また、LLTレベルでは、最大の具体性が得られる[16]。
この用語集は、正式な分類法として開発されたものではないため、器官別大分類(SOC)以下の階層の各レベルは、SOC毎に特異性または精度(granularity)が異なる場合がある。高位語(HLT)と高位グループ語(HLGT)は、臨床的に関連性のある用語をグループ化することで、データの検索と表示を容易にしている。MedDRAでは、HLTとHLGTを総称して「グループ化用語」と呼んでいる[16][12]:6。
27の器官別大分類(SOC)は、相互に排他的ではない並行軸を表している。この特徴は「多軸性」と呼ばれ、1つの用語が複数のSOCで表現されたり、異なる分類(病因や症状部位など)でグループ化されたりすることで、異なるデータセットでの検索や表示が可能となる。グループ化のための用語は、用語集の中で予め定義されており、データ入力担当者が入力中に選択するものではない。逆に、用語集は、データ入力用の用語を選択するとより上位の階層にあるグループ化用語が自動的に割り当てられるように構成されている。MedDRAでは用語の多軸リンクが予め設定されており、データ検索時にどのSOCを選択しても、包括的で一貫性のあるデータ検索が可能である。
MedDRA 27.0(2024年3月)での収録語数は[17](p9)、
である。
MedDRA は階層的、多軸的、多言語的[18]であり、定期的に更新され、MSSO(Maintenance and Support Services Organization)によって厳密に管理されている。ICHはMedDRAの知的財産権(所有権)を有している。
MedDRA は、世界中の全ての規制当局、学識経験者、医療従事者、非営利団体が自由に利用できる。サブスクリプション価格は、産業界の企業収益に応じて設定されている[19]。日本の MSSO のカウンターパートは JMO(Japanese Maintenance Organization)と呼ばれる[20]。
MSSOでは、4種類のサブスクリプションを提供している[21]。
JMOでは、MSSOと異なる会員区分となっている[22]。
MSSO/JMOは加入者からの変更要求に応じてMedDRAを更新する。例えば、まだMedDRAに存在しない新しい医学的概念の追加や、既存の概念の変更・修正などである。提出された変更要求に対する決定は、医療従事者からなる国際的なチームが、チームの一般的な合意に従って、グループ化されたカテゴリー内の用語をどのようにマッピングするかについて決定する。最終的な決定は、考慮すべき点の文書化、以前のデータへの影響、国際的な言語への配慮など、複数の要素に基づいて行われる。
MSSOとJMOは、年に2回、3月と9月にMedDRAのアップデート版をリリースする。英語版と日本語版は3月と9月の1日にリリースされ、その他の翻訳版は15日にリリースされる。3月のリリースは主要な年次リリースであり、HLTレベル以上の変更とLLTおよびPTの変更を含む。9月のリリースには、LLTおよびPTレベルの変更のみが含まれる。
MSSO/JMOは、ユーザーコミュニティ独自の視点や微妙なニーズを把握するために、ユーザーコミュニティからのフィードバックを頻繁に取り入れている。これらの意見は、MSSO/JMOがMedDRAを適宜変更するのに有用である。
世界の規制当局が規制する製品の範囲を拡大するにつれ、それに対応して、規制当局からの要請に先立ってMedDRAを積極的に使用することが増加している。このような拡大に伴い、多くの製品タイプに適用されるMedDRAの用語も増加している。バージョン19.0では、SOCの27番目の「製品の問題」が追加されたことで、医療機器の問題のみならず、製品の品質、供給、流通、製造、品質システムの問題に対してもMedDRAが使用され始めた。
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