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古典力学並びに量子力学におけるBerry位相(Pancharatnam–Berry位相、Pancharatnam位相、幾何学的位相とも)とは、系が断熱サイクルに置かれたとき、ハミルトニアンのパラメーター空間の幾何学的性質に起因して、サイクルの過程でもたらされる位相差のことである[1]。
この現象は、S. Pancharatnam (1956)[2]とH. C. Longuet-Higgins (1958)[3]のそれぞれで独立に見いだされ、のちにマイケル・ベリー (1984)[4]によって一般化された。
Berry位相はポテンシャルエネルギー曲面の円錐交差 (conical intersection)[3][5]やAharonov–Bohm効果において認められる。円錐交差が関与する例では、分子座標が断熱パラメータとなる。C6H3F3+分子の電子基底状態に関連する円錐交差周りのBerry位相が、Bunker and Jensenの教科書[6] (385-386ページ) で議論されている。Aharonov–Bohm効果の場合については、2つの干渉パスで囲まれた磁場が断熱パラメータとなり、この2つのパスがループをなすため周期的である。量子力学以外でも、古典光学のような様々な波動系でBerry位相は認められる。系のトポロジーのある種の特異点や穴の近傍において、波動を特徴づける2つ以上のパラメータが存在するとき、Berry位相が見いだされうることが経験的に知られている。2つのパラメータが必要な理由は、非特異状態の集合が単連結空間にならずホロノミーが非零となるからである。
波動はその振幅と位相によって特徴づけられ、波動の変化はこれらをパラメータとする関数で記述される。Berry位相は、両方のパラメータが同時かつ非常にゆっくりと(断熱的に)変化して、最終的に初期配置へと戻るときに生じる。量子力学では、回転運動のみならず粒子の並進運動もこのような元に戻る操作に含まれうる。このような操作の下での時間発展では、系の波動はその振幅と位相によって特徴づけられる初期状態に戻ることが期待されるが、パラメータ空間内での時間発展が、自己回帰的な前後移動ではなくループをなす場合、初期状態と最終状態の位相にずれが生じることがある。この位相差こそがBerry位相であり、その発生は、典型的には、系のパラメータ依存性の中で、特異なパラメータ組が存在することに対応している。
波動系におけるBerry位相を測定するためには、干渉実験が用いられる。フーコーの振り子は、古典力学的にBerry位相を説明するためによく用いられる例であり、系におけるBerry位相のアナログはHannay角として知られている[7]。
次固有状態にある量子系では、ハミルトニアンの断熱的な時間発展で系はハミルトニアンの次固有状態にとどまるものの、位相因子が付け足されることを見た。この位相因子は状態の時間発展からの寄与のほかに、変化するハミルトニアンとともに移り変わる固有状態からの寄与がある。後者がBerry位相に対応している。
この寄与は、非サイクリックなハミルトニアン変化に対しては、時間発展の各点のハミルトニアンの固有状態に対応する、異なる位相を選択することによって打ち消すことができる。
しかしながら、サイクリックな変化ではBerry位相は打ち消されることはなく、系の観測可能な不変量としてふるまう。マックス・ボルン、ウラジミール・フォック, Zeitschrift für Physik 51, 165 (1928) での断熱定理の証明によって、位相因子の全変化量への断熱過程の寄与を特徴づけることができる。断熱近似の下で、断熱過程における次固有状態の係数は次式で与えられる。
ここで、はパラメータに対するBerry位相である。をより一般的なパラメータに書き換えたとき、Berry位相は
と書かれる。ここで、はパラメータ空間内の断熱過程に対応する閉曲線であり、はサイクリックな断熱過程のパラメータ変数である。閉じた経路に沿ったBerry位相は、Stokesの定理を用いることで、で囲まれた曲面上でBerry曲率を積分することで計算できる。
Gaugeの独立した、Berry接続は
だから
ストークスの定理のために
そこ、Berry曲率は
ブロッホの定理によると
この時、シュレーディンガー方程式は
そして、kは自然にパラメータRである。
固体内に、Berry曲率は磁場と同様の効果を生み出すが、T対称性と空間対称性が同時に存在するなら、Berry曲率はゼロとなる。[9]
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