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『Almagest -Overture-』(アルマゲスト オーバーチュア)とは、ソフトサークル「Serendipity」が開発したフリーの戦略シミュレーションゲームである。恒星間移民が進んだ時代を舞台にしたスペースオペラ作品で、ターン制を採用している。武力によってプレイヤー以外のすべての勢力を征服するだけでなく、すべての勢力と同盟関係となることによってもゲームをクリアすることができる自由度の高さを持つ。また、プレイヤーとして選べる勢力が多数用意されており、100名を超えるキャラクターを操作できることも特徴である[1][2]。シナリオに応じてキャラクター同士の会話イベントも用意されており、戦略シミュレーションゲームでありながら、ストーリーも楽しめる作りとなっている。
星刻歴516年、アルファケンタウリ星系の惑星イリアスが地球統一連邦に対して独立を宣言した。これを受け、地球統一連邦は惑星イリアスの地表に対して宇宙空間から直接攻撃を行うという暴挙に出る。結果、イリアスの住民の90%が死亡または行方不明となる大惨事となった。これを「イリアスの悲劇」と呼ぶ。その後も殖民惑星の地球統一連邦に対する不満はくすぶり続け、星刻歴520年に「ファンロン事件」が発生する。これはセレスタイト星系の惑星ダンビュライトで暴動が発生し、地球統一連邦アガスティア行政区が鎮圧するも、軍がそのまま惑星を占拠してファンロン共和国と称して独立したものである。この事件の後、各地で独立や自治を求める勢力が多発したが、地球統一連邦はこれらの動きを軍事力で抑圧し続けた。そのさなかの星刻歴522年がシナリオ1「投じられた小石」の舞台である。
プレイヤーは複数存在する内(ゲーム本来の主人公である国家はセレスティア共和国である)、一つの星間国家の元首となって、既知銀河の統一、若しくは同盟締結による戦争終結を目指すこととなる。
本作はターン制で進行し、主に自国の内政、他国との外交を行う戦略フェイズと宇宙艦隊同士の戦闘を行うフェイズを最終的にプレイヤー国以外の全国家が滅亡する若しくは、全ての残存国家がプレイヤー国と同盟関係になる(同盟国同士が交戦していても可)まで繰り返してゲームを進めてゆく。ただし、一部のエンディングは特殊な条件の下で到達できる。
惑星(他国)への侵略は宇宙軍をもって行われ、作品中の世界では「人類間の戦争において、宇宙空間から人類の居住惑星およびその固有衛星に対して直接攻撃を行う事」を禁止する「イリアス宣言」と呼ばれる国際条約が採択されているため、各惑星に配備された防衛衛星を破壊された時点でその惑星は侵攻国領となる。星間国家は主星(首都に類する)の防衛衛星が破壊された時点で国家としての能力を失い、降伏する。これがプレイヤー国であった場合はゲームオーバーとなる。
シナリオはバージョン3.04現在、3つのメインシナリオと2つのIfシナリオの5つが存在し、それぞれ登場する国家、兵器、人物などが微妙に異なってくるが、メインシナリオについては時間軸に繋がりが存在する。
本作ではEASY・HARD・LUNAの3段階の難易度が用意されている。このうちHARDが基準の難易度となっている為、EASYとLUNAの主な特徴を以下に記す。
・初心者向けの難易度。
・プレイヤー国のみ収入が増える。
・所有惑星に関係なく多くの艦艇を所持できる。
・COM国がプレイヤー国に対し友好的になる。
・特定のキャラがとても仕官しやすくなる。
・ゲームバランスを無視した上級者向けの難易度。
・他国の惑星の行政官の有無や艦隊の所在が見えなくなる。
・プレイヤー国の収入が減少する。
・プレイヤー国の兵器開発速度が減少する。
・所持できる艦艇の数が大幅に減少する。
・COM国がプレイヤー国に対し敵対的になる。
・特定のコマンドの実行にかかる費用が格段に上がる。
(※前述の通りこの難易度はゲームバランスを無視している為、セーブ&リロードを繰り返すなどのことをしないとクリアほぼ不可能である。)
ゲーム内に登場する兵器は多国籍企業のエルガレイオン社とフォルモーント社(両社とも架空の企業)によって各国に供給されている。なお、フォルモーント社については各国の技術レベルに応じて等しく技術提供とライセンス生産を認めているが、エルガレイオン社は連邦関係国と本社の置かれている惑星プロメテウスを領有しているオリンピア連合にのみ技術提供を行っており、親邦派国以外は既製艦を購入することでのみ同社の戦艦を運用できる。
よって、運用できる兵器に関しては各国ともに殆ど差異は生じえない。そのために、用意されているのが「改造」システムであり、これは自国で開発した技術を艦船に搭載することで性能を独自に強化する仕組みである。
開発できる技術は共通に技術供給が行われるものの他、国家ごとに大きく異なりそれぞれ自国領内のローカル企業などから技術支援を受けた固有の技術を開発できる。この技術は他国に対しては同盟国にのみ供給される。よって、同盟国を増やせば開発できる技術の数は増えてゆく。
全ての技術の収集もまた、このゲームの一つの目標である(ただし、同盟国にも供給されない技術も存在するため一度のプレイにおいて登場するあらゆる技術を収集することは不可能である)。
本作の舞台となる惑星は全40個(うち8つが宇宙要塞)存在し、それらは位置関係で5つの星系(ソル・アルファケンタウリ・イザナギ・セレスタイト・ロゼッタ)に分けられている。また、要塞は各星系の接続点の役割もある。そのため、敵対する国家、あるいは中立国家に要塞を占領されている場合その要塞の向こう側、あるいはこちら側の星系からの艦隊移動ができない(占領している国家と同盟関係ならば通行可)。
本作に登場する国家はそれぞれ違った主義(保守・改革・中道・孤立・中立のいずれか)を持っており、同主義の国家同士は友好な関係を築きやすい、などといった部分がある。
各国は、自国が他国をどう思うか、そしてその他国が自国をどう思うかを示す「印象値」を持っている。これは主義が異なっていれば少しずつ減少していき、宣戦布告をすれば減少し、講和締結や資金援助によって上昇する。この値が外交の発生率や成功率に影響する。
本作には王道値・覇道値というパラメータが自国にのみ設定される。
これは主義の他に自国の国際的な印象を表すものであり、王道値は信義を尊ぶ(例:他国と同盟を結ぶ、同盟国の要請と自国世論の賛成に従って宣戦布告する)行動を取った際、覇道値は武断的な(例:他国を武力で滅ぼす、同盟国の要請なくして宣戦布告する)行動を取った際に上昇する。
なお、国家数が多い状況で覇道値を上げ過ぎると、全他国(主義や交戦状態を問わず)から最大限の非難を受けるイベントが発生する。これによって全他国との印象値が激減し自国の主義が孤立になる(外交上極めて不利)が、高難度エンディングの必須条件でもある。
以下にシナリオ1開始時における国家について解説する。他のシナリオに登場する国家や、イベントによって生まれる国家もあるため、すべての国家を網羅したものではない。
銀河の盟主として君臨していた地球統一連邦は、強大な軍事力を背景に、各殖民惑星に対して苛烈な圧政を敷いていた。その象徴たる出来事が、惑星イリアスへの直接攻撃によって、総人口の90%もの人々を死に至らしめた事件「イリアスの悲劇」である。積年に渡り蓄積された連邦への不満は、連邦宇宙軍による惑星ダンピュライトの不法占拠事件(ファンロン事件)を契機に爆発。惑星クリアウォーターの独立宣言とセレスティア共和国の建国を先駆けとして、各地の殖民惑星が次々と独立を宣言するようになる。
本シナリオは「イリアスの悲劇」から6年が経過した、星刻歴522年の第10期が舞台となっている。これは、セレスティア共和国が「ファンロン事件」により弱体化した隣星アメトリンのクリアウォーター行政区を併呑した直後であり、従って、本シナリオにクリアウォーター行政区は登場しない。しかしながら、シナリオ開始時点で大小12もの陣営(保守4・改革3・中道3・中立1・孤立1)が入り乱れており、シナリオNo.3「天青の黎明」に次いで2番目に多くの陣営が登場する。
改革勢力の筆頭として躍進を続けるセレスティア共和国は、ファンロン共和国、アガスティア行政区を放逐し、ついにセレスタイト星系の統一を成した。時を同じくして、ハンス・トリティン首相は地球統一連邦に対し再三の呼びかけを行うが、連邦政府は対話の機会すら持とうとはせず、両者の溝は深まるばかりであった。他方、銀河中に波及した戦火の波は、各地の勢力図にも変革をもたらしていた。ロゼッタ星系では、地球統一連邦の一翼を担っていたメガリス行政区が滅亡し、ブラウローゼ公国とW.L.T.Cが星系を二分。イザナギ星系では、メシアン教徒過激派による皇族誘拐事件により、イザナギ皇国と神聖メシアン教国間で戦争が勃発する。最も広大なαケンタウリ星系では、アガスティア・フリーダムトーチ間の戦局が傾き、国力に劣るフリーダムトーチ共和国が滅亡の危機に瀕していた。しかし、頑なに連邦体制にしがみつくアガスティア行政区は、改革二勢力に対する過酷な二面作戦を強いられ、セレスティアの躍進を許す結果となる。また、事態を静観していたオリンピア連合は連邦体制のしがらみに囚われ、徐々に戦乱へと巻き込まれていく。そして、銀河の中心に陣取るアプサラス特別区は、不気味なまでの沈黙を保っていた。混迷極まる銀河の様相は、未だ収まる気配を見せない。
本シナリオは、「No.1 投じられた小石」から1年が経過した、星刻歴523年の第3期が舞台となっている。No.1との相違点として、ゲーム開始時でファンロン共和国、メガリス行政区の2勢力が滅亡していることが挙げられる。したがって、選択できる勢力は10個(保守3・改革3・中道3・中立1)となっており、特定のエンディングへと向かうための条件の達成がやや難しいものになっている。
惑星クリアウォーター。「人類の生まれなかったもう一つの地球」とも評されるその星は、かねてより新しい星間国家を模索する風潮が強かった。そんな折、連邦宇宙軍による惑星ダンピュライトの不法占拠事件(ファンロン事件)を受けて、クリアウォーター独立派は意を同じくする隣星アメトリンと共に決起。独立の是非を問う民主選挙を行った。こうして誕生したのが、セレスティア共和国である。しかしながら、「地球連邦なくして人類の存亡は成し得ない」とする旧体制派は、隣星アメトリンを主星として決別。ここに、旧体制派とクリアウォーター独立派との戦いが幕を上げた。
本シナリオは、「No.1 投じられた小石」のわずか10期前である、星刻歴522年の第1期が舞台となっている。セレスティア共和国に主眼を置いたストーリーとなっているが、無論プレイヤーはその他の勢力を選択することも出来る。登場する勢力としては、クリアウォーター行政区が滅亡していないため、シナリオNo.1よりも1つ多い、13もの陣営(保守5・改革3・中道3・中立1・孤立1)が選択可能である。これは、Ifシナリオを含む全てのシナリオにおいて、最多の陣営数である。
シナリオNo.1「投じられた小石」と同じ、星刻歴522年の第10期が舞台となっており、登場する勢力やキャラクターは共通している。しかし、メインシナリオとは異なるIFストーリーであり、全勢力が他勢力と交戦状態、印象値0となっている点が大きな特徴である。これに伴い、メインシナリオでは地球統一連邦の同盟国であったアガスティア行政区やメガリス行政区のような保守勢力や、アプサラス特別区のような中立主義陣営のプレイ難易度が大幅に跳ね上がっている。
「イリアスの悲劇」を追体験することができる。
本シナリオがIFストーリーの体裁を取っているのは、これが、セレスティア共和国初代首相のハンス・トリティン氏による追体験にすぎず、厳密には史実と異なるからである。各国の首相や士官には、ハンスのよく知る人物を「代役」として当てはめているに過ぎず、真実の明らかでない要素も含まれている。これは、ゲーム内のシナリオ紹介ページにて、ハンス自ら『歴史の教科書に載せられるような代物ではない』と称していることからも伺うことが出来る。なお、イリアスの悲劇によって滅亡するアヴィリオン共和国は、本IFストーリーにのみ登場する勢力であり、プレイ難易度は本ゲーム中で最も難しいものとなっている。また、このシナリオでのみ到達可能なエンディングが存在するうえ、LUNAモードでのプレイに重宝する「Blue Ghost」搭載済み艦艇データは、本シナリオにのみ登場するアヴィリオン共和国で最高難易度エンディングを迎えなければ入手することが出来ないため、注意が必要である。
開発は音楽・効果音を除いて作者のむつきみかつが一人で行った。宇宙艦隊が活躍するスペースオペラがやりたかったことが開発のきっかけだったという[1]。2017年11月現在公開されている最新のバージョンはVer.3.04である。続編である『Almagest II』が開発中であるが、2015年に作者から「確たる情報を出せる状態にない」とアナウンスされている。
Vectorのレビューでは、100人以上のキャラクター全員にオリジナルの顔グラフィックと個別の性格が与えられていることを高く評価し、プレイヤーのアイデア次第で多様な遊び方ができることが魅力だとしている[1]。窓の杜のレビューでは、「奥深さが分かってくるにつれ、面白さも格段に増してくる良作」としている[2]。
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