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AMR-WB(Adaptive Multi-Rate Wideband)は、Adaptive Multi-Rate(AMR)をベースとするマルチレートの広帯域音声符号化方式で、GSMやW-CDMA 方式の第三世代携帯電話、VoLTE[1]で利用される。AMR-WB と区別するため、従来の AMR は AMR-NB(Adaptive Multi-Rate Narrowband)と呼ばれることもある。
AMR-WB は、GSM などで使用される Adaptive Multi-Rate(AMR)と同様マルチレートをサポートする音声符号化方式で、AMR を広帯域化することで音質を高めたものである。通常の電話インタフェースの2倍の帯域幅を持つ 50 Hz-7 kHz(サンプリング周波数 16kHz)の音声信号を 6.60 kbps~23.85 kbpsまでの 9 種類のビットレートで符号化できる[3]。AMR-WB は標準化団体の3GPP(3rd Generation Partnership Project)が策定した。
ITU-T が勧告した広帯域音声符号化方式 G.722.2 も AMR-WB と同じものである。この規格は G.722、G.722.1 から派生したもので、これらと比べると同じ広帯域の音声をより低いビットレートで符号化できる。G.722.2 の正式な名称は"Wideband coding of speech at around 16 kbit/s using Adaptive Multi-Rate Wideband (AMR-WB)"(広帯域適応マルチレート (AMR-WB) 方式を用いた16 kbit/s程度の広帯域音声符号化)である[2]。
AMR-WB の符号化アルゴリズムは AMR と同じ ACELP(Algebraic Code Excited Linear Prediction)を使用し[3]、以下のビットレートをサポートしている。6.60 kbps~12.65 kbps までが必須マルチレート構成で、通常は 12.65 kbps が使用される。それより高いビットレートは背景雑音が多い環境、音声と音楽との組み合わせ、マルチパーティ会議など高い音質が要求される場合に使用される[3][2]。
ビットレート | サポート | 説明 |
---|---|---|
6.60 kbps | 必須 | 移動体回線交換システム(GSM, W-CDMA)で使用:無線状態が悪い時にのみ一時的に使用。広帯域音声とは見なされない。 |
8.85 kbps | 必須 | 移動体回線交換システム(GSM, W-CDMA)で使用:無線状態が悪い時にのみ一時的に使用。広帯域音声とは見なされない。48 kbps の G.722 と同等の音質。 |
12.65 kbps | 必須 | 移動体回線交換システム(GSM, W-CDMA)で使用:メインとなるビットレート。AMR より優れた音質で、これ以上のビットレートでは 56 kbps の G.722 と同等かそれ以上の音質。ドコモがVoLTEで利用[1]。 |
14.25 kbps | ||
15.85 kbps | ||
18.25 kbps | ||
19.85 kbps | ||
23.05 kbps | フルレートGSMチャネルは対象外。 | |
23.85 kbps | フルレートGSMチャネルは対象外。64 kbps の G.722 と同等の音質。 |
コーデックの入出力は 14ビット長、サンプリング周波数 16kHzの信号で、これを 12.8 kHz にダウンサンプリングして処理を行う。デコード時には処理結果を 16kHz にアップサンプリングし、6 kHz ~ 7 kHzの高域成分を追加する[2]。
会話での無音期間は、AMR の場合同様、音声区間検出機能(Voice Activity Detector、VAD)で検出を行い 160ms ごとに SID(silence descriptor)と呼ばれるデータを送信する。まったくの無音を避けるため、デコーダ側では SID を検出すると適度なレベルの背景雑音を再生する。
携帯電話やVoIPでの音声通信用以外に、AMR-WB は 3GPP で定義された各種マルチメディアサービスで使用することができる [5] [6] [7]。
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