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A-DNAまたはA型DNAは、DNAがとることのできる二重らせん構造の1つである。A-DNAは、B-DNA、Z-DNAともに生物学的活性のある3つの二重らせん構造のうちの1つであると考えられている。一般的なB-DNAに似た右巻き二重らせんであるが、B-DNAよりも短くコンパクトならせん構造であり、塩基対はらせん軸に対して直交していない。A型・B型のDNA構造はロザリンド・フランクリンによって発見され、命名された。彼女は脱水条件下でA型のDNA構造となることを示した。こうした条件はDNAの結晶の形成の際によく利用され、多くのDNAの結晶構造がA型構造である[1]。同様のらせん構造は、RNAの二重らせんやDNA-RNAハイブリッドの二重らせんでもみられる。
A-DNAは、主溝(major groove)と副溝(minor groove)を持つ右巻き二重らせんであるという点でB-DNAとよく似ている。しかしながら、下の比較表で示されているようにA-DNAはB-DNAと比較して、らせん1回転当たりの塩基対の数はわずかに多く(したがってねじれ角は小さくなる)、塩基対間の距離(rise per base pair)は小さい(したがって同じ長さの鎖から形成される二重らせんの長さは20–25%短くなる)。A-DNAの主溝は深くて狭く、一方で副溝は幅広く浅い。A-DNAはB-DNAよりも直径が大きく、らせん軸に沿ってより圧縮されたような見た目をしている[2]。
A型 | B型 | Z型 | |
---|---|---|---|
らせんの巻き方 | 右巻き | 右巻き | 左巻き |
反復単位 | 1 bp | 1 bp | 2 bp |
1塩基対ごとの回転 | 32.7° | 34.3° | 30° |
らせん1回転当たりの平均塩基対数 | 11 | 10 | 12 |
らせん軸に対する塩基対の傾き | +19° | −1.2° | −9° |
らせん軸に沿った塩基対間距離(rise/bp along axis) | 2.3 Å (0.23 nm) | 3.32 Å (0.332 nm) | 3.8 Å (0.38 nm) |
らせん1回転当たりの距離(rise/turn of helix) | 28.2 Å (2.82 nm) | 33.2 Å (3.32 nm) | 45.6 Å (4.56 nm) |
塩基対の平均プロペラねじれ角(propeller twist) | +18° | +16° | 0° |
グリコシド結合の結合角 | anti | anti | C: anti, G: syn |
糖の立体配座(sugar pucker) | C3′-endo | C2′-endo | C: C2′-endo, G: C3′-endo |
らせんの直径 | 23 Å (2.3 nm) | 20 Å (2.0 nm) | 18 Å (1.8 nm) |
DNAの脱水は二重らせんをA型へ駆動し、この変化は極度の乾燥条件下で細菌のDNAを保護しているようである[6]。また、桿状ウイルスの構造から示されているように、タンパク質の結合によってもDNAから溶媒が除去されてA型へ変換される[7]。
バクテリオファージで2本鎖DNAを詰め込みを担うモーターはA-DNAがB-DNAよりも短いことを利用しており、DNAのコンフォメーション変化自体がモーターの大きな動力源となっていることが示唆されている[8]。A-DNAがウイルスの生体モーターによる詰め込みの中間体であることの実験的証拠は2つの色素を用いたFRET測定から得られており、B-DNAは24%短くなったA型中間体構造をとることが示されている[9][10]。このモデルでは、DNAを脱水したり再水和したりするタンパク質のコンフォメーション変化を駆動するためにATPの加水分解が利用され、DNAの伸縮サイクルがタンパク質によるDNA結合解離サイクルと共役することによってDNAがキャプシド内へ向かう運動が生み出されている。
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