『鳴風荘事件 殺人方程式II』(めいふうそうじけん さつじんほうていしきツー)は、綾辻行人による推理小説。
1989年に刊行された「殺人方程式」の続編。綾辻作品の中で初めて「読者への挑戦状」が付された作品である。
1996年に土曜ワイド劇場でテレビドラマ化された。
1982年の月食の夜、女流作家の美島紗月が惨殺される。当時女学生だった深雪は、紗月の妹・夕海と共に、その遺体を発見する。
それから6年半後の1989年8月17日、深雪は10年前、高校時代に埋めたタイムカプセルを掘り出すために、急病で行けなくなった夫・叶の代わりに双子の兄・響を身代わりに、長野県の「鳴風荘」を訪れる。そこで再会した夕海は、かつての紗月そっくりに変貌していた。
だが翌朝、夕海の死体が発見される。死体からは髪が切り取られ、他にも様々なものがなくなっていた。犯人はなぜ髪を持ち去ったのか。
主要人物
- 明日香井 叶(あすかい きょう)
- 警視庁刑事部捜査一課の刑事。27歳。生来、血や暴力などが大の苦手。殺人現場へ行くとしょっちゅう目眩や吐き気と格闘している。
- 大学生の頃、月蝕の観測のためにいたマンションの屋上から、向かいのマンションで女性が殺害される場面を目撃してしまう。その事件を通じて深雪と出会った。
- 明日香井 響(あすかい きょう)
- 叶の一卵性双生児の兄。27歳。哲学者志望。京都の国立K**大学文学部哲学科に在籍している。急性虫垂炎で入院を余儀なくされた叶に代わり、深雪と共に「鳴風荘」を訪れる。
- 明日香井 深雪(あすかい みゆき)
- 叶の妻。旧姓・相澤。25歳。大学1年の時、高校の同級生・夕海と再会し、彼女の姉・紗月のマンションへ行ったところ、彼女の惨殺死体を発見する。中学生の頃、美術部に所属していた。高校1年生の時、夢を書いたタイムカプセルを埋め、「10年後に誰が一番夢に近づいているか」を競う約束をしていた。
鳴風荘に集った人々
- 美島 夕海(みしま ゆうみ)
- 深雪の中学・高校の頃からの友人。深雪と共に姉の遺体を発見する。事件後長らく入院していた。姉・紗月そっくりの風貌に変わり、彼女のような不思議な力を持っている素振りを見せる。
- 蓮見 皓一郎(はすみ こういちろう)
- 建築家。鳴風荘の設計者。
- 後藤 慎司(ごとう しんじ)
- 映像関係の仕事をしている。
- 杉江 あずさ(すぎえ あずさ)
- 学年一の美人だった。証券会社勤務。犬が苦手。
- 青柳 洋介(あおやぎ ようすけ)
- 深雪の中学時代の美術部の顧問。通称・画伯。3年前に交通事故で左足を失う。
- タケマル
- 青柳の飼い犬。「バカめ」でお座り、「なかよし」でお手、「ごめん」で伏せをする変わった犬。
- 五十嵐 幹世(いがらし みきよ)
- 学習塾の講師。深雪が中学2年の頃から高校3年まで家庭教師をしていた。深雪の又従兄に当たる。
- 市川 登喜子(いちかわ ときこ)
- 青柳が雇っている使用人。週2回通ってくる。
- 千種 君恵(ちぐさ きみえ)
- 夕海が連れてきたフリーの編集者。夕海に心酔している。
- 蓮見 涼子(はすみ りょうこ)
- 蓮見の妻。鳴風荘は元々涼子の父親の所有。
その他
- 美島 紗月(みしま さつき)
- 夕海の7歳年上の姉。美人作家・イラストレーターとして注目されていた。1982年の月蝕の夜に惨殺される。腰まで伸ばしていた長い髪が切り取られ持ち去られていた。
- 中塚 哲哉(なかつか てつや)
- 紗月殺害の容疑者として警察に追われていたが、事件から6日後に死亡、自殺と判断された。
- 長森 勇(ながもり いさむ)
- U**警察署の刑事。
- 楠 等一(くすのき とういち)
- 長野県警警視。27歳。K**大学法学部卒で、響の知人。
深雪の実家
- 相澤 政治(あいざわ まさはる)
- 深雪の父親。60歳。町田市の一等地に豪邸を構える。
- 相澤 冬子(あいざわ ふゆこ)
- 深雪の母親。
- 相澤 正義(あいざわ まさよし)
- 深雪の長兄。有能な外交官として夫人と共に海外に駐在中。
- 相澤 真実(あいざわ まさざね)
- 深雪の次兄。34歳。父親の秘書をしている。両親と同居。
- 相澤 あやめ(あいざわ あやめ)
- 真実の妻。33歳。都内の大学病院に看護師として勤務していた。
- 相澤 勝利(あいざわ まさとし)
- 深雪の三番目の兄。30歳。兄弟の中で唯一の独身。定職に就かずぶらぶらしている。
『"月蝕の館"殺人事件』のタイトルで1996年(平成8年)8月17日に放映された。
響と叶の兄弟は響1人となり、佐野史郎が演じた。この大きな変更について原作者は猛反対し、当初は原作に忠実に制作される予定だったが、後にプロデューサーに説得され、根負けして許してしまったという[1]。