『魔女』(まじょ)(原題:Häxan、英語: The Witches)は、ベンヤミン・クリステンセンが監督した1922年のモノクロ無声のスウェーデンの映画である。
題材からも手法からも、それまで誰も作ろうと考えたことはなかったフィルム・エッセイ第一号であり、映画史でもユニークな位置と価値を持つ作品である[2]。
- 悪魔:ベンヤミン・クリステンセン
- カルナ - 魔女:エラ・ラ・クール
- カルナのアシスタント:エミー・ショーンフェルド
- 老家政婦 - 惚れ薬で僧侶を騙す:ケイト・ファビアン
- 太った僧侶 - 高い身分で、惚れ薬を飲まされる:オスカー・ストリボルト
- アペローネ - 魔女:ヴィルヘルミーネ・ヘンリクセン
- アンナ - 印刷工ジェスパーの妻:アストリッド・ホルム
- アンナの母:エリザベス・クリステンセン
- アンナの妹:カレン・ウィンザー
- マリア - 貧しい織工:マレン・ペダーセン
- パテル・ヘンリック - 魔女裁判官:ヨハネス・アンデルセン
- 魔女判事ヨハネス - 魔女裁判にたずさわる若い僧侶:エリス・ピオ
- 魔女判事:アーゲ・ヘルテル
- 魔女裁判長:イブ・シェーンベルク
- ピーター・ティッタ - 異端審問官:ホルスト・ヨルゲンセン
- 修道女シスター・セシリア - サタンに強要されて聖体を汚し、幼子イエスの像を盗んだ:クララ・ポントッピダン
- 監督:ベンヤミン・クリステンセン
- 脚本:ベンヤミン・クリステンセン
- 撮影:ヨハン・アンカーステルネ
- 編集:エドラ・ハンセン
- 中世の風俗や思考形式についての考証は極めて綿密であり、また魔女裁判用の拷問の道具も本物である。
- 当時デンマークの映画界は衰退期に入ってしまっていたので、クリステンセンは資本をスウェーデンのスヴェンスク・フィルムインドゥストリ社に求めた。もっとも撮影はデンマークに戻ってコペンハーゲン近郊のスタジオで行われ、1918年から1921年の歳月と巨額の経費が掛けられた[2]。
- 製作国のスウェーデンの検閲は、文化史的論説の意義を認めず、魔女の宴のシーンのヌードや、拷問シーンの残酷な部分はカットされた。そのうえカトリック教会からも抗議が届き、配給会社は自主規制を加えた。そのため当時は観客には余り受けなかったが、同時代人である、カール・テオドア・ドライヤー監督や何人かの評論家はこの映画の重要性を認めた。魔女の社会心理学的解明の試みとハイパー=リアリスティックな描写の点で、誰も真似られなかった傑作である[2]。
- ハリウッドの映画プロデューサーであるルイス・B・メイヤーが1925年にベルリンでこの映画を見せられた時にエンドマークが消えたとたんに立ち上がって、「これを作った奴は何だ!狂人かね? 天才かね?」と興奮したと言われる[2]。
三木宮彦『映画史上ベスト200シリーズ・ヨーロッパ映画200』、キネマ旬報社刊、1992年5月30日発行(24-25ページ)