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米韓自由貿易協定(べいかんじゆうぼうえききょうてい、 英: U.S.-Korea Free Trade Agreement, KORUS FTA[5])は、アメリカ合衆国と大韓民国間の自由貿易協定[6]。略称は米韓FTA。
交渉は2006年2月2日に開始され、2007年4月1日に締結し、2007年6月30日に調印された[7]。さらに追加交渉が2010年12月初旬に署名された[8]。
米国における協定の実施のための国内法として米韓国自由貿易協定実施法(英語:United States – Korea Free Trade Agreement Implementation Act)が、2011年10月3日に提出され、2011年10月12日に下院を賛成278・反対151で、同日に上院を賛成83・反対15で通過し、10月21日に大統領の署名[9]により成立した[10]。その102条で国内法優先を規定した[11]。公認システム監査人の田淵隆明はSAPジャパンホームページ上のコラムの中で、同法により米国国内法上は、米国の連邦法>米国の州法>当該FTA>韓国の法律、となると指摘する[11]。
一方、韓国国会における批准同意案は、2011年6月3日に韓国国会に提出され、野党が激しく反対し、2011年10月28日には、米韓FTAに反対するデモ隊が国会に乱入し、67人が逮捕された[12]。11月22日、批准同意案は議長職権で本会議に上程され、米韓FTA批准同意案が可決された。
協定は、2012年3月15日に発効[4]。米韓FTAの発効により5年以内に95%の品目への関税を撤廃される[8]。保険部門における郵政改革も規定・実現された[13]。限度額/商品の変更は省令改正によっていたものが大韓民国金融委員会の監督を受けるようになり、新たな金融商品の販売は禁止となった。
協定には、投資家対国家の紛争解決(ISDS条項、Investor State Dispute Settlement)といわれる条項がおかれている[14]。これは締約国政府と外国企業や外国投資家との間に紛争が生じた場合には、その締約国の裁判手続きではなく投資紛争解決国際センターに提訴できるとする規定である[14]。また、米韓FTAにおいては繊維品目のセーフガードに加え、外国為替危機などの経済危機に瀕した場合には、韓国は外貨の輸出入に対し一時的にセーフガードを発動できることとされた[15]。セーフガードとは、特定の品目輸入が急増することによって国内産業が打撃を受けることを予防するため、関税賦課や輸入数量制限といった形で行われる措置である[16]。
さらに、協定には「ラチェット規定」と呼ばれる条項が盛り込まれている[17]。これは締約国が一旦市場を開放すると、何らかの事情により後に規制した方が望ましいと思っても一旦開放した市場の規制を強化することが許されないとする規定である[17]。これらを韓国国内では「毒素条項」と呼んで警戒している[18]。
環太平洋戦略的経済連携協定の交渉分野ごとに、該当分野に相当する、米韓自由貿易協定の章が次のようにまとめられている[19]。右上テンプレート内の条文リンク、英語正文を参照のこと。
なお、交渉内容等の守秘義務が課されていた点も類似する(米韓FTAは締結後3年間、環太平洋戦略的経済連携協定は発効後または交渉最後の会合後4年間)[20][21]。
「毒素条項」という主張は出所が不明だが、韓国外交通商部「わかりやすく書いた、いわゆる米韓FTA毒素条項主張に対する反論」(2011年1月)からは、内容が以下のようにまとめられる[22]。
韓国外交通商部「わかりやすく書いた、いわゆる米韓FTA毒素条項主張に対する反論」(2011年1月)からは、韓国政府による反論が以下のようにまとめられる[24]。
上の反論に書かれた「留保表」は、附属書Ⅰ(Annex I: Non-Conforming Measures for Services and Investment)と附属書Ⅱ(Annex II: Non-Conforming Measures for Services and Investment)である[25]。
留保表には附属書Ⅲ(Annex III: Non-Conforming Measures for Financial Services)もある[26]。
2017年、ドナルド・トランプが第45代アメリカ合衆国大統領に就任すると、メキシコとならび韓国との間の貿易不均衡状態を指摘。各国との自由貿易協定の見直し、停止に言及しだした[28]。米韓自由貿易協定の見直しは、同年6月30日に行われた米韓首脳会議にも議題として取り上げられ、会議後、協定の再交渉が行われることが明らかになった[29]。
2018年3月27日にアメリカのトランプ政権は米韓FTAの見直しの中で通貨安誘導を禁じる為替条項の初導入で合意したと発表した[30]。ただし、韓国政府は為替条項は米韓FTAの付帯協定ではないとしている[31]。
2018年9月24日に、米韓両国は、米韓FTAを改正する議定書[32]に署名し、改正議定書は、2019年1月に発効した[33]。
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