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情報を記録する媒体 ウィキペディアから
記録媒体(きろくばいたい)とは、情報を一時保管、ないし後世に残すために使われる物質である。
記録媒体には粘土板や石板などの媒体のほか、紙やパピルス、木簡などの筆記媒体および映像機器や音響機器での映像や音楽の記録再生や、電子計算機(コンピュータ)での情報処理に使用する電子媒体がある。
電子媒体に関して、記録内容は全てデジタルデータであるという特徴がある一方、映像機器や音響機器においては、アナログ方式で記録再生されるものもある。この電子媒体は法律では電磁的記録を保存するための媒体を意味する電磁的記録媒体と呼称される。
CD-ROM、DVD-ROM、BD-ROMなどの記録媒体は物理的(機械的)に作られており、本来「電子」媒体と呼ぶには無理があるが、日本の国家機関では使用されている[1][2]。
以下、本項では主に電子媒体としての記録媒体に関して述べる。
電子、磁気(電磁気)、光、光磁気、半導体などの技術や工学が使われている。また各種類の媒体の技術的工学的特性、例えば容量や記録密度やレイテンシやスループット、さらには経済性(コストパフォーマンス)などにより、適した用途がある。いくつかの例について述べる。
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大抵の記憶媒体は、採用する記録方式や使用素材などにより、特有の弱点を持ち合わせている。誤った使用や保管をすると、媒体寿命を極端に縮めてしまうことがある。媒体にとって弱点となる環境下に放置せず、適切な使用や保管をすることで、媒体寿命を延ばすことができる。
媒体によって向く使用用途・向かない使用用途もあるので、これを考慮して媒体を使い分けることも必要になる場合もある。
フロッピーディスク、ハードディスクなどが該当する。磁気、埃、汚れに弱い。当然ながら磁気に大変弱いため、磁石を密接させれば簡単に壊れてしまう。また構造上、記録面に埃などの異物や汚れが付着すると正常に読み取れなくなってしまう場合が多く、埃が被るような場所に放置すると数年と持たずに記録内容が壊れる(フロッピーディスクの場合、現在最も使われている3.5インチディスクはプラスチックのケースに入っているが、初期(5インチ・8インチ)の物は紙のケースに入っており、シャッターも無いために非常に破損しやすかった)。樹脂製ディスクやテープは、熱や湿気、紫外線の影響も受けやすく、変形を招いたり、カビが生えたりして使い物にならなくなる場合もある。
テープ媒体特有の弱点として、たるみ調整が正常でなかったり、ピンチローラーなどが汚れていたりすると、機構内部で巻き込み事故を起こし媒体が変形するなどの損傷に至る例がある。この場合、該当箇所・最悪の場合はテープメディア全体のデータが読み出せなくなる恐れがある。
レーザーディスク、コンパクトディスク、DVDなどが該当する。熱、湿気、紫外線に弱い。現在広く使われている基盤素材はポリカーボネートだが、熱や湿気の影響を受けて劣化する。過去に基盤素材として広く使われたアクリルは、より湿気を嫌う(基盤にガラスを使うものは理論上1000年以上の寿命がある)。有機色素を使うCD-RやDVD-Rなどは、紫外線の影響を受けやすい。紫外線への耐性は使用する有機色素の種類や製造時の品質によってまちまちだが、積極的に紫外線に晒される場所に放置すると、数年と持たずに寿命が尽きる。磁気ディスクに比べ埃や汚れの影響を受けにくく、多少の傷ならば特に問題なく使えるが、ディスクが剥き出しのものはカートリッジタイプよりも汚れやすく傷つきやすいことに注意。
カートリッジに収められており、磁気や紫外線の影響も受けにくく、他のどの媒体よりも耐久性があるとされるが、ドライブにプリズムを使用している関係上、埃の多い場所(喫煙者の居るオフィスも含む)でドライブを使用し続けると、ドライブの故障に陥りやすい。
フラッシュメモリを使ったUSBメモリやFlash SSD、各種メモリーカード(SDメモリーカード、コンパクトフラッシュなど)が該当する。テープメディアやディスクメディアと異なり完全な電子機器であるので、電気系のトラブル(接続や切断時の電気ショック、静電気、ショート、落雷など)には弱く、場合によっては故障する虞がある。構造上の問題から、特定ブロックへの書き込み集中を回避する構造(ウェアレベリング機構)を持たないタイプは書き込みに対する耐性が極端に低く、回避する構造を持つタイプでも磁気ディスクのそれには及ばないものが大半である。したがって、極端に書き換え頻度の高い使用(たとえば、ドライブレコーダーの記録媒体として)を行うと、数年と持たず寿命が尽きる。
適切な使用や保管を行ったとしても媒体を問わず、データを保持できる期間は有限である。読み込みや書き込み処理を行わずとも経年変化により媒体は劣化していき、やがては記録したデータが消失したり、正常に読み出せなくなる。例えば、CD-RやDVD-Rは色素が退色すると反射率が狂う。磁気テープやFDなどは磁力が薄れていく。フラッシュメモリはフローティングゲートに捕捉した電子を維持できなくなる。
書き換え可能な媒体であっても、無限に書き換えられるものではなく、書き換え回数(書き換えサイクル)は有限である。読み書きを繰り返すことで媒体は摩擦による摩耗や磁性の消失、レーザー光による熱、電圧などで劣化する。
例えばCD-RWやDVD-RWは基本的に全体を書き換える(書き込み時はシーケンシャルアクセスである)ため、1000回ほど書き換えると寿命になる。それ以外では基本的に1セクタあたりの書き換え回数であり、すべてのセクタを使っているのでもなければ、簡単には書き換え回数の寿命に達することはない。さらに磁気テープや一部のフラッシュメモリを除き、同じデータでも毎回記録位置を変えることで更なる延命を行っているため、書き換えサイクルの寿命の前に媒体の寿命が尽きる場合もある。
媒体別の書き換えサイクルとして、書き込みが特定ブロックに集中しないように対策されていないフラッシュメモリでは数百回、次いでCD-RW/DVD±RWの1000回、磁気テープ、BD-RE/UDO/PDDの1万回、DVD-RAM/GIGAMO/一部フラッシュメモリの10万回、Phase-change Dualの50万回、磁気ディスク/一部フラッシュメモリ/業務用GIGAMOの100万回、MOの1000万回となっている。
電子媒体の場合、光学ドライブなどの媒体を駆動させることで保存した記録を読みだす装置が故障することで、記録の保存および読み取りが不可能になる。そのため数世紀から数万年にかけて記録を保存するためには、石板、木簡、紙などの電子媒体が登場する以前から使用されていた媒体の使用を考慮する。
2014年10月20日、日立製作所と京都大学は共同で石英ガラスにデータを記憶する技術を開発したと発表した。 この技術を応用すれば半永久的(3億年)なデータ保存が可能となる。 JAXAは同年11月に打ち上げる人工衛星に試作チップを搭載する[3]。
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