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電位-pH図(でんいピーエイチず、もしくは、でんいペーハーず)とは、水中における化学種(特に金属)の存在領域を電極電位とpHの2次元座標上に図示したものである。1938年にマルセル・プールベが発表した。プールベダイアグラム(Pourbaix Diagram)、プールベ図、E-pH図とも呼ばれる。
電位-pH図は、熱力学的データ(平衡論)に基づいて計算して作成する。現在では、ほとんどの金属単体の電位-pH図が作成されている。また、一部の金属では、水だけでなく錯体を含む系の電位-pH図や、高温水での電位-pH図が作成されている。このような電位-pH図は、作成するための計算が複雑になる。
電位-pH図は、主に腐食防食工学で使用されるが、電析や電気めっき、無電解めっきの分野でも利用される。
電位-pH図を読むと、ある金属の特定の電位とpHで
かどうかが一目でわかる。しかし、平衡状態における図なので反応の速度の情報については載っていない。すなわち、腐食防食工学の観点で言えば、『電位-pH図を読むと金属の腐食挙動は分かるが、金属の腐食速度まではわからない。』となる。
代表例として、25℃の水中における鉄の電位-pH図を挙げる。この図の横軸はpH、縦軸は水素電極基準の電圧が示されている。
ここでは、鉄化合物をFe、Fe2+、Fe3+、 Fe2O3、Fe3O4、HFeO2−とし、 水の電気化学反応であるということから、H2O、H+、e−が加えられる。
以上のように、25℃の水中での鉄の腐食傾向は、電位とpHの両方の値がわかれば、『電位-pH図』を読むことによって判断できる。
なお、Cl−が存在すると、不動態域で孔食が起こり、鉄に孔があく。電位-pH図は、実際の環境で起る現象の全てを予測する事は出来ないが、金属の腐食反応を理解するための基本になる。
2本の破線a、bは水の生成・分解に関わる2つの反応の電位を示す。破線aは、
に対応している。ネルンストの式より、E = 1.23 − 0.059 pHとなる。この破線より上の領域では酸素が発生するが、下の領域では酸素が発生しない。
破線bは、
に対応している。ネルンストの式より、E = −0.059 pHとなる。この破線より下の領域のみ水素が発生する。
すなわち、破線aとbの間の領域が水の安定域である。
このようにして、全ての反応式について計算し、線のつながりを考えれば、電位-pH図が作成できる。
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