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婚姻関係を終わらせること ウィキペディアから
離婚制度は有効に成立した婚姻を事後的に解消するものである点で、婚姻成立の当初からその成立要件の点で疑義を生じている場合に問題となる婚姻の無効や婚姻の取消しとは区別される。離婚の類義語としては、離縁、破婚、離別などがある。
「死後離婚」という言葉があるが、婚姻契約は配偶者が亡くなった時点で自動的に終了するので、死後に離婚することはありえない。これは、生前に離婚したら姻族関係も終了するのに対し、死別の場合は継続されるので、これを終了させる際にこう呼ばれる。日本法における正式名称は「姻族関係終了届」である。
なお、婚姻の解消原因には離婚のほかに当事者の一方の死亡(失踪宣告を含む)があり、講学上、「婚姻の解消」という場合には離婚よりも広い意味となる[2]。
本来、婚姻は終生の生活関係の形成を目的としている[3][4](故に離婚の予約は許されず法律上無効とされる[5][6])。しかし、実質的に破綻状態にある婚姻に対してまでも法律的効力の下に当事者を拘束することは無益で有害であると考えられることから、今日ではほとんどの国の法制は離婚制度を有するとされる[7][4]。とはいえ夫婦の一方の意思のみによって他方配偶者や子に苛酷な状況を生じさせることは妥当でなく、これらの者の保護のために離婚に一定の制約を設ける立法例が多い[8][9]。
国ごとに離婚の扱いはかなり異なる。離婚そのものを認めない国、一定の別居期間を経ないと離婚が認められない国、行政機関や裁判所による関与を要求する国などがある。日本では、夫婦が話し合いで離婚することを決めて離婚届を市区町村役場へ届け出ければ離婚が成立する協議離婚という制度も認められており[1]、このようなお手軽な方法で離婚ができるとする法律制度は世界にもあまり類を見ないものである[1]。この制度については、三行り半(みくだりはん)の文章で書いた離縁状を書いて渡せば、いつでも妻を追い出すことができるとされた江戸時代の離婚、追出し離婚(おいだしりこん)を容認するものとして明治時代以後も利用されてきた、と否定的にとらえることもできる一方で、離婚要件を緩和しようとする近年の世界的傾向からすれば、むしろ進歩的立法と肯定的にとらえることもできる[1]。
国ごとに離婚率は異なる。たとえばポルトガルでは離婚率は7割以上[10]に上る。
キリスト教など宗教上の理由から、離婚を法的・社会的に否定する国もある。カトリックの世界的中心で、ローマにあるバチカン市国は、離婚制度そのものが法律上無い[11]。フィリピン共和国ではイスラム教徒(ムスリム)は合法的に離婚でき、また、フィリピン人と外国人との外国での離婚はフィリピン国内で承認され得るが、それ以外のフィリピン国民同士の婚姻には婚姻の取消し・無効か法的別居しか認められておらず、どちらも暴力被害などの証拠を添えて裁判所に申し立てる必要があり、多大な手間と時間、費用が必要である[12]。世論調査では離婚合法化を国民の約半数が支持しており、離婚を認める法案の提出などが行なわれているが、特に上院の政治家はカトリックの篤実な信者を重視する傾向にあり、法案の上院可決には至っていない[12]。
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古代ローマ法やゲルマンの慣習法において離婚は比較的自由であったとされるが、中世ヨーロッパに入ってキリスト教の影響下、西洋では婚姻非解消主義が一般化することとなる[13]。教会法における婚姻非解消主義は西欧における婚姻法制に大きな影響を与えたとされる[14][7]。
『レビ記』21章には、祭司が子孫を汚すことのないために、「離婚された女」「あるいは淫行で汚れている女」を娶ってはならないとする規定がある。『マラキ書』2章16節にはイスラエルの神は離婚を憎むと記されている[15][16]。『ホセア書』では主はホセアに「淫行の妻と、淫行によって生れた子らを受けいれよ。」と述べている[17]。
イエス・キリストは神の創造から夫婦は一体であり、神が結び合わせたものを、人が引き離してはならないと命じた[18]。イエス・キリストは「不貞」[15]、「不品行」[19]、「不法な結婚」[20]以外に離婚を認めておらず、離婚された女と結婚する者も姦淫の罪を犯すと教えた[21][20]。イエス・キリストのこのことばはカトリック教会でもプロテスタント教会でも、離婚を禁じるイエス・キリストの命令であると受け止められてきた[22]。
ただ、現実には夫婦間に不和を生じて婚姻が実質的に破綻状態となる場合もあるため、教会法では離婚の否定を原則としつつ、婚姻の無効、未完成婚、別居制度などの方法によってこれらの問題の解決が試みられたとされる[14]。
カトリック教会で教会法上、離婚が存在しない。民法上の離婚をして再婚をした場合は、教会法上の重婚状態とされ、その罪のため聖体拝領を受けることが出来ない。性的に不能であった場合は結婚そのものが成立していないので、バチカンにはかったうえで婚姻無効が認められることがあるが、「離婚」ではない(『公教要理』『カトリック教会のカテキズム』による)。
ペトルス・ロンバルドゥス『命題集』4.31は、配偶者が姦通して離れた場合でも再婚してはならないとしている[23]。
ウェストミンスター信仰告白は相手が姦淫の罪を犯した場合にのみ離婚を認めている。潔白な方は罪を犯した配偶者を死んだ者として扱う。マーティン・ロイドジョンズも『結婚することの意味』(いのちのことば社)において、離婚が認められる唯一の理由は、相手の姦淫だと断言している。モーセの時代の『司法律法』で姦淫は死刑になるため、離婚ではなく、死刑によって結婚が終了した[24]。
ジャン・カルヴァンは『キリスト教綱要』4篇19章「5つの偽りの聖礼典」の37「ローマ教会の婚姻に関する無意味な規定」で相手が姦通の罪を犯したために離婚しても、再婚してはならないとするローマ教会の規定を「迷誤を隠蔽」し専制を行っているとして批判している(中山昌樹、渡辺信夫の翻訳による)。
近代以降、西欧においては離婚の法的規律は教会によるものから国家によるものへと移行した(婚姻の還俗化)[25][26][7][13]。そこでも当事者の合意による婚姻の解消には消極的であり、配偶者の一方に夫婦間の共同生活関係の継続を困難にさせるような有責行為がある場合に限って、有責配偶者への制裁として、その相手方からの離婚請求のみを認める有責主義(主観主義)がとられ、現在でもカトリック教国でこの法制をとる立法例が多いとされる[25][27]。
これは根本では「現在ある人間関係を維持する」ことを意識している。同意のない離婚を事実上不可能にし、離婚の選択権を、離婚の原因(落ち度)の無い配偶者にゆだねている。これによって、配偶者が現在の人間関係を続けることを望めば、離婚できないようにしている[28]。
その後、自由主義の浸透とともに1960年から1970年代にかけて欧米では次々と離婚法改正が図られ、夫婦間の共同生活関係が客観的に破綻している場合には離婚を認める破綻主義(客観主義・目的主義)への流れを生じるに至ったとされる[25][7][9][13]。
イスラム教の一部の国では、男性が3回離婚を宣言すれば妻と離婚できる習慣があるが、女性側から離婚を宣言する習慣はない。しかし、2024年にはドバイの王女がSNSを通じて離婚を発表する動きが見られた[29]。
多くのイスラム諸国同様、夫が宣言するだけで成立する「口頭離婚」という慣習が古くから存在する。世俗主義的なシーシー政権は2017年に認めない方針を示したが、イスラム教指導者が容認している。逆に妻が離婚を望んで夫が拒否した場合は、妻が裁判所で正当な理由を証明する必要がある。このため夫婦喧嘩で夫を怒らせて離婚を口にさせ、離婚に持ち込む女性もいる[30]。
インドのイスラム教徒には古来、Talaq(タラーク、離別の意)を3回唱える。もしくはタラークを3回書いた手紙などで伝えると離婚できるとしている。この3回意志表明することをトリプルタラークと呼ぶが、一方的で女性の人権を脅かしてると考えた人権家達によって、インド最高裁判所に「時代遅れ」だと公益訴訟(Public interest litigation)が起こされた。2017年5月13日に、法律で「最悪の離婚形態」であると規定された[31][32]。
また、この慣習はサウジアラビア、モロッコ、アフガニスタン、パキスタンなどのムスリムが多数を占める国々でも禁止されている[33][34]。
「離婚」という言葉自体は、中国の歴史書『晋書』刑法志に「毌丘倹之誅、其子甸妻、(中略)詔聴離婚」とあり、これが言葉としての最初とされる[35]。離婚に関する規定としては、日本養老令戸令七出条に「皆夫手書棄之」があり、「七出」「三不去」などが定められた。「七出」とは、もともと唐律令に定められた「夫の一方的な意思により離婚できる7つの事由」[戸令のことで、舅姑に従わない、子ができない、姦通、言い争いが多い、盗み、嫉妬深い、たちの悪い病気の7つであり、また、「三不去」は(七出に該当しても)「離婚できない3つの事由」のことで、舅姑の喪に3年間服した、貧しい時に嫁いでのちに豊かになった、帰る所がないの3つである[35]。「皆夫手書棄之」では、離婚する場合は夫側が「手書」と呼ばれる書状を作成しなくてはならないとされているが、実際の離婚状は日本では見つかっていない[35]。日本古代の場合、女性の離婚に対する自主性(主導権)は高かったとされるが、「男女双方に離婚権はあったが男性側の主体性が高かった」とする研究者もいる[35]。
『令集解』「戸令結婚条」の記述として、「同里(隣り合った2、3里の集落範囲)内で、男女が3ヵ月以上行き来しなければ、離婚とみなす」とあり、これは経済関係を夫婦関係とは別の所にもっていたことに加え、親族による育児など相互協力の機能していたからとみられる[36]。
日本では夫婦のまま長生きする「共白髪」を理想とはしながらも夫婦が分かれることも当然にあり得ることと考えられ[13]、また、西欧のように教会法における婚姻非解消主義の影響を受けることがなかったため、法制上における離婚の肯否そのものが議論となったことはないとされる[7]。
ただし、日本では離婚そのものは認められてきたものの、律令制のもとで定められた七出や三不去、また、後には三行半の交付による追い出し離婚など、いずれも男子専権離婚の法制であったとされる[37][38][9][39]。だが実際には、江戸時代の離婚は、現在と同様に協議離婚が殆どであり、離婚するにあたっては夫が妻に三行半を差出すことが義務付けられ、三行半がない離婚は処罰の対象とされた。
離婚権のなかった女性にとって江戸時代までは尼寺が縁切寺としての役割を果たし、一定期間その寺法に従えば寺の権威によって夫側に離縁状を出させる仕組みとなっていた[7][40][41]。北条時宗夫人である覚山尼は鎌倉に東慶寺を創建して縁切寺法を定め、三年間寺へ召し抱えて寺勤めをすることで縁切りが認められるとしていた[42]。また、寺院の縁切寺と同様に神社にも縁切り稲荷と呼ばれる神社が存在した。榎木稲荷(東京)、伏見稲荷(京都)、門田稲荷(栃木)が日本三大縁切稲荷とされている[43]。
江戸時代には女性が現金収入を得る手段である養蚕地帯において離縁状が数多く残されている。
妻側からの離婚請求が認められるようになったのは1883年(明治6年)の太政官布告からである[9]。ただし、前近代の全ての時代で、男性優位の離婚だったわけではなく、ルイス・フロイスの日本史によれば、戦国時代の日本の女性は自由に離婚が可能であり、また何回離婚しても、何回妊娠して堕胎しても、社会的に問題はなかったとされる[44]。
明治民法の起草時においても離婚制度を設けることそのものについて異論は出ず、また、離婚の形態についても法典調査会で検討されたものの日本人は裁判を望まない気風であり協議の形で婚姻を解消できる制度の必要性が挙げられ、協議離婚を裁判離婚と並置する法制がとられるに至ったとされる[45]。1898年(明治31年)7月16日に施行された明治民法第813条では十の具体的離婚原因[46]を列挙されたが、それらの有責行為を犯した配偶者に対しては一方の配偶者は離婚を提訴できるが、それ以外の裁判離縁は認めないとした。これらには立法としては旧来の追い出し離婚を排斥するという意味があるが、社会的な事実においても当事者の自由意思による離婚が行われていたか否かという点については別に問題となる[7][9]。
日本の近代離婚法は、また旧法時から公的審査を要件とせず、夫婦関係が破綻して離婚の合意さえあれば、役所への離婚届の届出で簡単に離婚出来ることから、既に破綻主義的な要素を含んでおり、この点は、1970年代になって破綻主義が一般化した欧米諸国と比較すると、驚くべき特徴である[47]。
大正時代に世間を騒がせた離婚として、1915年に愛人との同棲のために妻に別居と離婚を求めた作家の岩野泡鳴に対し、妻の清子が同居請求と妻子の扶養料要求訴訟を行い、妻が勝訴し、夫の離婚請求が敗訴となった一件があった[48]。清子は判決において民法第789条の「夫婦同居の規定」が「強制規定と解す可く」とあったことに満足し、「夫婦同居の権利義務は、夫権の行使を妨げざる範囲内に於て、全く平等にして差等あるものに非ず」という判断が下されたことを評価し、岩野清子は「法律の認めたる妻の権利」という一文を発表した[48]。
国際結婚の増加と共に、国際離婚も増加傾向にある。日本における届け出によれば、平成18年の離婚件数25万7475件のうち、夫妻の片方が外国人であったのは1万7102件(6.6%)であった[49][50]。
日本では協議離婚の制度が認められているが、離婚するか否かを当事者の完全な意思に委ねる制度を採用する国は比較的少数であり、離婚そのものを認めない国、一定の別居期間を経ないと離婚が認められない国、行政機関や裁判所による関与を要求する国などがある。
このように国によって離婚の要件や手続(特に手続に国家が関与する方法・程度)が異なるため、ある国での離婚の効力が、別の国では認められないこともありうる。例えば、裁判による離婚制度しか存在しない国では、当事者の意思に基づく協議離婚はありえないから、日本で成立した協議離婚の効力が認められるとは限らないし、裁判所が関与する調停離婚についてもその効力が認められる保障がない。
このような事情があるため、裁判離婚しか認めていない国の国籍を有する者が日本で離婚する場合は、離婚の準拠法の問題もあり、当事者による離婚の合意ができている場合でも、前述の審判離婚や裁判離婚をする例が少なくない。
千葉前法務大臣は、アメリカ合衆国などの要請を受けて[51]、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の批准を前向きに検討していると述べた。日本政府は2010年(平成22年)8月14日、ハーグ条約を翌年に批准する方針を固めた[52][53]。その後、第180回国会において批准承認案が提出され(2012年(平成24年)3月9日)たが、第181回国会まで継続審議になったものの衆議院解散で一旦廃案となった。ついで第183回国会に再度、批准承認案が提出(2013年(平成25年)3月15日)され、2013年(平成25年)5月22日に国会の承認がされた。
この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
日本法では、離婚について民法(明治29年法律第89号)第763条から第771条に規定があり、その他、戸籍法(昭和22年法律第224号)、家事事件手続法(昭和22年法律第152号)、人事訴訟法(平成15年法律第109号)及びこれらの附属法規において定められている。
現行法は、離婚の形態として、協議離婚(協議上の離婚)、調停離婚、審判離婚、裁判離婚(裁判上の離婚)を規定している。
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる(763条)。これを協議離婚(協議上の離婚)という。協議離婚という制度そのものは1804年のフランス民法典のほか現在では中国、台湾、韓国などでも採用されているが[25]、日本法における協議離婚は多くの国でとられるような公権による当事者意思の確認手続を有しておらず、離婚手続としては当事者の合意と届出のみで成立する点で世界的にみても最も簡単なもので特異な法制であるとされる[25][9][54]。日本では離婚のほぼ90%が協議離婚である[25][9]。さらに、協議離婚では、離婚届に理由を書く必要が無いため、日本では離婚原因の全体的な把握が難しくなっている[55]。
協議離婚は戸籍法の定めるところにより届け出ることを要する(764条・739条1項)。この届出は当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で又はこれらの者から口頭でしなければならない(764条・739条2項)。
離婚の届出は、その要式性に関する規定(739条2項)及び親権者の決定の規定(819条1項)その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない(765条1項)。ただし、離婚の届出がこの規定に違反して誤って受理されたときであっても離婚の効力は失われない(765条2項)。
届出がない場合には法律上の離婚の効果は生じないが(協議離婚における届出は創設的届出である)[15]、事実上の離婚としてその法律関係の扱いについては問題となる[56]。
離婚は当事者が離婚意思をもって合意すること要する(通説・判例)[57]。戸籍実務では夫婦の一方が他方に離婚意思がない(翻意した場合を含む)にもかかわらず離婚の届出が行われるのを防ぐため、当事者の一方が離婚の届出について不受理とするよう申し出る制度として離婚届不受理申出制度が設けられている(昭51・1・23民事2第900号民事局長通達)[58][59][60]。
家庭裁判所の調停において、夫婦間に離婚の合意が成立し、これを調書に記載したときは、離婚の確定判決と同一の効力(ここでは、いわゆる広義の執行力)を有する(家事事件手続法268条)。離婚の訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立てをしなければならない(同法244、257条)。これを調停前置主義という。
離婚調停成立後、調停申立人は10日以内に離婚の届出をしなければならない(戸籍法77条。協議離婚の届出とは異なり報告的届出となる)[15]。
調停が成立しない場合においても、家庭裁判所が相当と認めるときは、職権で離婚の審判をすることができ(家事事件手続法284条)、2週間以内に家庭裁判所に対する異議の申立てがなければ、その審判は、離婚の判決と同一の効力(「調停離婚」の項を参照)を有する(同法287条)。
2週間以内に異議申立てがあれば審判は効力を失うため実際あまり利用されていないが[66]、調停合意には至らないものの審判に対する異議が出ないことが予想される事情が認められる場合や、国際離婚で両当事者ともに離婚に合意をしているが外国での離婚承認を得るために審判離婚(裁判所の判断による離婚)による必要がある場合などに利用されている。
協議離婚、調停離婚が成立せず、審判離婚が成されない時に、判決によって離婚すること。裁判離婚の成立は離婚総数の1%程度である。
離婚の訴えは、家庭裁判所の管轄に専属する(人事訴訟法4条1項、2条1号)。つまり、家庭裁判所に訴えを提起する必要があり、地方裁判所での審理を希望することは不可能である(もっとも、家裁と地裁は同じ場所に同じ数建っているし、地裁である必要性は現在は全くないことを付記しておく)。
なお、裁判は公開されている。よって第三者や利害関係人に家庭の事情を知られてしまうことは知っておかねばならない。
離婚の訴えに係る訴訟において、離婚をなす旨の和解が成立し、又は請求の認諾がなされ、これを調書に記載したときは、離婚の確定判決と同一の効力(「調停離婚」の項を参照)を有する(同法37条、民事訴訟法267条)。
裁判上の離婚には民法第770条に定められている離婚原因が存在しなければならず、夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる(民法第770条1項)。もっとも、離婚事由に該当するときであっても、裁判所は、一切の事情を考慮して婚姻の継続が相当であると認めるときには、離婚の請求を棄却することができる(770条2項)。
なお、"同性同士の場合は不貞行為に該当しない"。そもそも法律による規定が存在しない(法律が定められた時点で、同性間の不貞行為が想定されていなかった為)。したがって、不貞行為と認定されるのは異性間のみである。 ただし、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する。
裁判所は、民法第770条1項の第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる(民法第770条2項)。
離婚の形態としては協議離婚と裁判離婚があった。
旧民法では夫婦は何時でも協議上の離婚をすることができる(旧808条)。ただし、満25年に達しない者が協議離婚をするには婚姻についての同意権者の同意を得ることを要する(旧809条)。戸籍吏は法律上の要件を満たさない届出を受理することはできないが、これに違反して届け出を受理したときといえども離婚の効力は妨げられない(旧811条)。
子の監護権については協議で定めのない限り原則として父に属すが、父が離婚によって婚家を去った場合には母に属す(旧812条)。
裁判上の離婚は、民法上の離婚原因がある場合に限って提起しうる(旧813条)。ただし、民法上の一定の離婚原因については、夫婦の一方が他の一方の行為に同意したとき、宥恕したときには離婚を提起することができなくなる(旧814条)。また、離婚原因の発生から一定の期間が経過すると訴えを提起する権利が時効消滅するものも含まれていた(旧816条)。
なお、協議離婚における子の監護権の規定(旧812条)については、裁判離婚にも準用されるが、裁判所は子の利益のため監護権について異なる処分を命じることができる(旧819条)。
内閣府の平成19年度(2007年)「男女共同参画社会に関する世論調査」によれば、「相手に満足できないときは離婚すればよいか」との質問に対して、賛成派(「賛成」と「どちらかと言えば賛成」の合計)が46.5%にとどまったのに対して、反対派(「反対」「どちらかといえば反対」の合計)が47.5%となり、23年ぶりに反対派が賛成派を上回るという結果が出た[82][83]。賛成派は1997年の54.2%をピークに毎回減り続けており、一昔前に比べると、離婚に対して寛容ではなくなってきていることが窺える。
結婚した者同士が数か月間などの短期間で離婚することである。
成田空港から海外へ新婚旅行に出発し、旅行中に価値観の相違などで対立し、帰ってからすぐに離婚することを「成田離婚」と言う。
法的な婚姻関係と同居を継続していながら、実生活上での夫婦関係が失われている状態を言う。
中高年の夫婦の離婚のこと。
1969年(昭和44年)には新聞記事で、夫の退職を機に、それまで経済的な理由で離婚を控えていた妻が「いただくものはいただいてさっぱりし、老後を一人で送る」形で高年齢層の離婚が「じりじりと増えつつある」と報じられており[84]、この時代から中高年夫婦の離婚増加が話題になっていたことが窺える。
2007年(平成19年)4月の年金制度の変更で、夫の厚生年金を離婚時に分割できるようになった(それまでは、離婚したら妻はもらえなかった)ときには、中高年夫婦が高い関心を寄せたという。実際に、法律事務所や司法書士事務所などへの相談件数は急増し、離婚を考えている者は多いという[85]。
夫婦共働きや、妻の家名の維持等、さまざまな理由で、夫婦のいずれもが旧姓を使い続けたいような夫婦において、事実婚へ移行するために離婚をする例が近年増えている。こういった離婚をペーパー離婚とも言う。なお、事実婚はさまざまな法律上の不利が存在するため、選択的夫婦別姓制度の導入を望むカップルもペーパー離婚予備軍として多く存在するといわれる[86]。
「人口千人あたりの、一年間の離婚件数」(「人口千人あたりの、生涯のどこかで離婚する人数」とは異なる)のことを普通離婚率というが、これは人口の年齢構成の影響を強く受ける。これ以外の離婚率を特殊離婚率という。特殊離婚率には、例えば男女別年齢別有配偶離婚率や、結婚経過年数別離婚率などがある[87]。日本では、普通離婚率は1883年(明治16年)には3.38であったが、大正・昭和期にかけて低下し、1935年には0.70となった。その後1950年前後(約1)および1984年(1.51)に二度の山を形成したが、1990年代から再び上昇し、2002年には2.30を記録した[88][89][87]。
日本では平成元年から平成15年にかけて離婚件数が増加し、その後減少している。厚生労働省「人口動態統計」によると、平成14年の離婚件数は約29万件、平成18年は約25万件となっている(離婚率でいえば、平成17年で人口1000人あたり2.08である)。平成14年を境に減少傾向となっており、離婚率が3.39であった明治時代に比べれば少ない[90](これは、明治時代の女性は処女性よりも労働力として評価されており、再婚についての違和感がほとんどなく、嫁の追い出し・逃げ出し離婚も多かったこと、離婚することを恥とも残念とも思わない人が多かったことが理由とされている[91])。現代の離婚の原因の主なものは「性格の不一致」である。また、熟年結婚が熟年夫婦による離婚の数値を押し上げている。
厚生労働省が定義する「離婚率」とは異なる[92]が、マスコミなどで言われる「3組に1組が離婚」[93]などの表現は、全国の「その年の離婚件数」を全国の「その年の新規婚姻件数」で割った数字である。若者の少ない現代の人口ピラミッドでは高い数字となり正確ではないという意見もあるが、その年1年間の離婚率しか表さない普通離婚率とは違い「生涯のどこかで離婚する割合」を示唆する上では一つの目安になっている。なお、厚生労働省「平成21年 人口動態統計」をみると過去40年間の婚姻数が3202万人、同じく30年間の離婚数が748万人となっており離婚率は23%ともっとも婚姻数が多い1970年代を含めたデータであるにもかかわらず「4組に1組が離婚」と比較的高い数字が出ている。
「離婚率」 には、地域別に特長が表れやすく、離婚率の高い都道府県、低い都道府県の傾向が出やすい。もちろん、日本国内に限らず世界的な離婚率の傾向もある。離婚には、様々な原因があげられるが、日本国内において職業や血液型で離婚率の傾向もある[94]。
離婚時に親権と慰謝料を有利に交渉する為に親による子供の拉致が横行しており理不尽な要求をするケースが多々ある。
弁護士が子どもを会わさないことにより精神不安を作り出し交渉することもある。
それらの問題は現在法改正に向けて検討中である。
ワシントン大学教授のジョン・ゴットマンは、新婚のカップルにインタビューを行って、5年後に離婚しているかどうかを、90%の精度で予測した。
アメリカのバージニア大学のThe National Marriage Project(アメリカで広く行われている、政府や大学公開講座や宗教団体などによる、健全な家庭生活を維持・増進させるための活動のひとつ)は、離婚の原因は「家庭の運営に必要な知識を持っていないこと」であるとして、必要な情報を提供している[95][96][97]。
PREP[108][109]という結婚教育プログラムは、カップルに効果的なコミュニケーションの仕方と、争いをコントロールする技術を教える。この結婚教育プログラムは、本[110]またはビデオまたは講習という形で提供される。このプログラムを行ったカップルが、結婚後5年以内に離婚する割合は、半分に減る[111]。PREPでは、「話す人-聞く人の技法」が行われる[112]。
物理学者のリチャード・P・ファインマンの離婚理由は「肉体的精神的苦痛(ボンゴの騒音と四六時中微積分に没頭していた)によるもの」としてファインマンもこれを事実として認める。
まず日本の統計把握の実情をありのままに言うと、日本の離婚は、当事者間での合意によって、離婚届を提出するだけの「協議離婚」が90%に達しており、その離婚届には「離婚の原因」を記す必要が無いため、原因の全体的な把握は難しい面がある[55]。
(上記のように、日本における離婚全体の原因の把握するためのデータはそもそも存在しないわけだが)あまり一般的ではないが協議離婚以外の離婚に限ったデータを挙げると、離婚の申し立ての文書に記入される(というより、チェック印を単につける)データは次のようになっている。
実際の離婚の原因はさまざまで、一言では説明できないと感じている人が多いが、日本の離婚申立の文書の場合は、選択欄の1番目に「性格が合わない」があるので、深く考えず、とりあえず1番目の枠「性格が合わない」にチェック印を入れる人が多い。つまり、1番目に印をつける人が多くても、それが離婚の本当の理由かかなり怪しい。「どれに印をつけても、結局、離婚することができる」という知識が世の中に広く出回っているので、あまり難しく考えず、とりあえず1番目の項目「性格が合わない」に印をつけるということが広く行われている。
なお「異性関係」は抽象的な表現だが、はっきり言うと、相手が異性と浮気をした、ということ。つまり、より具体的に言うと、夫からの申立としては、(1番目の選択肢を除くと)「妻が浮気をした」「妻の性格が異常だ」という申立が多いということになる。妻からの申立としては(1番目の選択肢を除くと)「夫が暴力をふるう」「夫が浮気をした」という申立が多い、ということになる。
1960年代までは、離婚は特に避けるべきことであるとは考えられていなかった。独身時代に付き合う人を何人かかえてもそれが普通であるように、結婚してから相手をかえるのも当然であると受け止められていた。しかし1970年代に入って、ウォーラースタインを始めとする研究により、離婚が子供に悪影響を与えることが知られるようになると、離婚を避けるための方策が模索された。1970年代のアメリカにおいて、大学に在籍し心理学的カウンセリングを実地に行っていた研究者たちが、離婚しかけているカップルに対してカウンセリングを始めたのであるが、当時は事実上、誰も離婚を止めることはできなかった[114]。こうして「なぜ人は離婚するのか。どうすれば離婚を防ぐことができるのか」というテーマで、研究が始められるようになった[115]。
研究のスタイルは大きく分けて二つある。一つは離婚したカップルと離婚していないカップルを多数集めて、各集団の特質の差を比較する方法である。こうした研究から離婚をきたしやすい特質が次のようなものだと明らかにされた[116][117]。
もう一つの方法は、離婚したカップルと離婚していないカップルに対して、質問や観察やテストを行い、なぜ離婚したのか、あるいはなぜ離婚しないのかを調べる方法である。離婚した後で調べる後ろ向き研究の他に、結婚して間もないカップルに対して観察を開始しその後の展開を調べる前向き研究も行われる[118][119][120]。
こうした研究から分ったことは次の2点である。
ただし、それらは不和の症状に過ぎないので、対策(処方)としては、単にそれらを避けるだけでなく、夫婦の関係を深化させることが必要である。それには、相手の側が結婚生活に求めるもの(例えば、愛情豊かな関係、あるいは性的満足)を正しく認識しそれを与え、さらに自分の側が結婚生活に求めるもの(例えば、愛情豊かな関係、あるいは性的満足など)を把握してそれを正直に相手に説明しそれを相手から与えてもらう必要がある[122]。
離婚に関係する心理学理論には以下のようなものがある[123][124]。
最初に指摘しておくべきことだが、結婚している人が自分の結婚相手と関係がうまくゆかないと感じ葛藤を感じている場合には、離婚をしようかなどと検討を始める場合があるわけだが、仮に離婚後に新しい相手を見つけて新しい相手とうまくやっていける可能性を夢見ていても、それが実現するかどうかは実際にはかなり不確実であり(たとえば、すでに子供がいる人などは新しい相手を見つけることはハードルがかなり高いし、たとえば仕事で忙しい日々の合間に自分の健康を維持しつつ新しい相手を見つけ交際し結婚に至るのは実際にはかなり困難であるなど、様々な困難があるので)、安易に離婚して新しい結婚相手が見つかることを空想・期待するよりは、現在すでに結婚している相手との関係を改善する努力をするほうがよほど現実的である[128]。
上のことを踏まえた上で、下のメリット・デメリットの各節を読んでいただきたい。
離婚により、結婚で得られる利益は失われる[129]。
人が健全な結婚(healthy marriage。あくまで、仲の良い夫婦関係)で得られる利益は次のようなものがある [130]
健全な結婚(仲の良い夫婦関係)で得られる利益やその大きさは、男女で異なるので、別々に挙げる。
ただし、上はあくまで「健全な結婚」(仲の良い夫婦)で得られる利益に限った話であって、《不健全な結婚》(険悪な関係の夫婦)では上のような利益は得られない。《不健全な結婚》(陰険な喧嘩をし、憎み合うような夫婦)では、精神的ストレスが大きくなり寿命は短くなる。また毎日陰険な喧嘩をしていると、仕事にも集中できず、仕事上の支障も出がちで、(小さなトラブルの積み重ねが原因で)仕事を失ってしまうことにも繋がりかねない。また《不健全な結婚》を無理して維持し、両親が憎み合う姿を見せることは子供の精神(子供が心に抱く心理モデル)にも悪影響を及ぼす。つまり「不健全な結婚」を無理に続けるよりは、離婚したほうが利益が大きい場合がある。
また、離婚後、姓を戻しても戻さなくてもそのことで女性(あるいは改姓した男性)が精神的なダメージを受けることがある[138]。
かつて、離婚は子供に何の影響も与えないと考えられていた。アメリカの心理学者ジュディス・ウォーラースタインは、親が離婚した子供を長期に追跡調査して、子供達は大きな精神的な打撃を受けていることを見出した。子供達は、両方の親から見捨てられる不安を持ち、学業成績が悪く、成人してからの社会的地位も低く、自分の結婚も失敗に終わりやすいなどの影響があった。
また、バージニア大学のヘザーリントン教授は、実証的研究を行って次のように述べた。「両親がそろっている子供のうち、精神的に問題が無い子供は90%であり、治療を要するような精神的なトラブルを抱えている子供は10%であるのに対して、両親が離婚した子供では、それぞれ75%と25%である。」(1993年)[139]。離婚が子供に悪影響を及ぼすことについて、多くの国で大規模な追跡調査が行われ、悪影響が実際に存在することが確認された[140][141][142]。棚瀬一代は、親の離婚で壊れる子供たちについて報告した[143]。
また各国で、子供から引き離された片親が片親引き離し症候群(PAS)にかかるとの報告も存在する。
ケンブリッジ大のマイケル・ラム教授は、離婚が子供の成育にマイナスの影響を及ぼす要因として、次の5つを挙げている[144]。(1)非同居親と子供との親子関係が薄れること、(2)子供の経済状況が悪化すること、(3)母親の労働時間が増えること、(4)両親の間で争いが続くこと、(5)単独の養育にストレスがかかること[145] [146]。
子供の健全な発育には、父親の果たす役割も大きい(「父親の役割」を参照)。
こうした事実を踏まえて、欧米各国では、1980年代から1990年代にかけて家族法の改正が行われ、子供の利益が守られるようになっている。
2019年に発表された台湾出身の子供を対象とした調査では、両親が離婚した13-18歳の子どもは10.6%も大学進学率が低いことがわかった[147]。これは家庭収入が低下したためではなく、精神的な理由によるものとされる。
離婚後、子供の氏は変わることなく、離婚前の氏となり、また戸籍も以前のままとなる。親と苗字が違うためにいじめなどの悪影響が懸念される。ただし、家庭裁判所で許可を得れば、旧姓に戻った親の姓を子供が名乗る事が出来る。また、戸籍は氏を変更する許可を得て氏を変更後に市区町村役場にで変更することが出来る。[148]
米国価値研究所Institute for American Valuesの調査結果によれば、離婚と事実婚についての主な代償として次のことが挙げられる。
日本も批准した子どもの権利条約では、その対策として、(1)子供の処遇を決めるに際しては、年齢に応じて子供の意見を聞くこと、(2)別居が始まれば両親との接触を維持することを求めている。
離婚の悪影響を少なく抑えるための条件は、二人の親の間で争いが少なく、近くに住んで、再婚せず、二親とも育児に関わり、育児時間が50%ずつに近いことである[151][152][153]。
2010年(平成22年)3月9日の衆議院法務委員会で、千葉景子法務大臣(当時)は、次のように述べた。「離婚したあとも、両親がともに子供の親権を持つことを認める『共同親権』を民法の中で規定できないかどうか、政務3役で議論し、必要であれば法制審議会に諮問することも考えている。」[158]
民主党や自民党などの超党派議員は、平成23年の通常国会に、離婚後の子供との面会を保証する法案を提出する準備をしている[159]。
離婚によって収入を得ている職業としては、弁護士[160](法曹)、探偵などが挙げられる[161]。人によってはこのような職業・業務を「離婚関連産業」「離婚産業」などと呼んだりすることがあり、また、離婚関連のお金の動きを「市場」と見なし、「離婚関連市場」などと呼ぶ人もいる[162][163] [164][165] [166][167]。
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