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開発許可制度(かいはつきょかせいど)とは、都市計画法に基づき、以下の二つの役割を果たすことを目的として、開発行為や建築行為等を都道府県知事等の許可に係らしめる制度である[1]。
一般的には、市街化調整区域における建築行為等の規制などの内容も、開発許可制度の範囲に含まれる。
具体的には、都市計画区域内外を問わず開発行為を都道府県知事等の許可に係らしめ、開発行為に対して必要最低限の公共施設整備を義務づけることにより宅地の技術的水準を保たせるとともに(技術基準、法第33条)、特に市街化調整区域については、技術的水準に加えて「特定のものを除いては原則として開発行為を行わせない」という用途的側面からの規制をかける(立地基準、法第34条)ことにより、上述の目的を達成しようとするものである。
また、開発行為のみを許可の対象にするのでは制度の目的が達成できないことから、市街化調整区域においては建築物に改変を加える行為も許可の対象とされる(法第42条、43条)。
本項では、開発許可制度内で使用される用語の定義をはじめ、申請手続き、許可の基準とそれらに付随する要件等のうち、主なものを都市計画法の逐条順に述べる(ただし、制度内で使用される用語であるものの、すでに記事がある用語の説明は、当該記事を参照のこと)。
開発行為とは、「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更」のことである(法第4条第12項)。開発行為に該当する工事等を行おうとする者は、後述の許可が必要となる。
「特定工作物」はさらに第一種特定工作物(コンクリート・プラントやアスファルト・プラント等)と第二種特定工作物(ゴルフ場、1ヘクタール以上の野球場等)に分かれる。「土地の区画形質の変更」とは、道路等の新設、変更又は廃止(区画の変更)、切土や盛土など建築物を建てる前の宅地造成(形状の変更)、宅地以外の土地を宅地とする行為(性質の変更)が該当する。
開発行為は規制範囲を決める一因であるが、学術的にも政治的にもあまり議論されていない。現在の日本の都市計画は欧州諸国と比べると比較的私権が優先されているが、それは開発行為の定義の仕方によるとされる。
イギリスの都市計画制度では、例えば、土地利用の変更は物理的な工事を伴わなくても開発行為とみなされ、許可が必要になることがある。例えば、犬を数十匹飼うと土地利用が変わったとする判決も出ている。
開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない(法第29条第1項)。ただし、法第29条第1項各号及び第2項各号に掲げられている以下の開発行為については、許可が不要である(同条但書)。
区分 | 許可が不要となる規模 |
---|---|
市街化区域 | 1,000m2未満または500m2未満 |
区域区分が定められていない都市計画区域 | 3,000m2未満 |
準都市計画区域 | 3,000m2未満 |
都市計画区域および準都市計画区域外 | 10,000m2未満 |
法第30条は、開発許可申請の手続きを規定している。申請にあたっては、次に掲げる事項を記載した申請書を都道府県知事等に提出しなければならない。
設計に係る設計図書(図面及び仕様書)は、国土交通省令で定める資格を有する者の作成したものでなければならない(法第31条)。設計の適正を期することとしており、この国土交通省令で定める資格を有する者とは、開発行為に関する工事のうち、周辺に大きな影響を与えるおそれのあるもの或いは設計について専門的な能力を要するもので、この資格者は建築士、技術士、測量士、不動産鑑定士のような国家試験合格者によってただちに与えられるといった独自の資格なのではなく、下記の通り一定の学歴取得者もしくは先の資格のうち建築士や技術士資格取得者と、学歴取得者や資格取得者に伴う経験年数の組合わせによって持つことができる資格である。またこの資格とは開発事業ごとにその資格能力を有しているか否かであり、不祥事で取り消されるといった性格のものではない。さらにここでいう実務の経験は、法施行以前からの住宅地造成事業などで開発許可に係る工事以外の開発工事の経験を含むことも当然となっている。
表(規則第18、19条関係概要)
資格を要する設計
資格 |
開発区域の面積が
1ha以上 20ha未満 の開発行為に関する 工事(規則第19条第1号) |
開発区域の面積が
20ha以上のもの |
---|---|---|
イ 大学(短期大学を除く)で右の課程を修めて卒業後、右の技術に関して、2年以上の実務の経験を有する者 | 土木、建築、都市計画、造園に関する課程
宅地開発に関する技術 |
左記のいずれかに該当するもので、開発区域の面積が20ha以上の開発行為に関する工事の総合的な設計に係る設計図書の作成に関する実務に従事したことのあるもの
その他国土交通大臣がこれと同等以上の経験を有すると認めたもの |
ロ 短期大学(専門職大学の前期課程を含む)において右の修業年限3年の課程(夜間部は除く)を修めて卒業した後(専門職大学の前期課程にあっては、修了した後)、右の技術に関して、3年以上の実務の経験を有する者 | 同上 | |
ハ ロの者を除き、短期大学、高等専門学校、旧専門学校において、右の課程を修めて卒業した後(専門職大学の前期課程にあっては、修了した後)、右の技術に関して、4年以上の実務の経験を有する者 | 同上 | |
ニ 高等学校、中等学校において、右の課程を修めて卒業後、右の技術に関して7年以上の実務の経験を有する者 | 同上 | |
ホ 技術士法による第2次試験のうち右の部門に合格した者で、右の技術に関して、右の年数以上の実務の経験を有する者 | 建設、水道、衛生工学の部門
宅地開発に関する技術2年以上 | |
ヘ 建築士法による一級建築士の資格を有する者で、右の技術に関して、右の年数以上の実務の経験を有する者 | 宅地開発に関する技術2年以上 | |
ト 右の技術に関して、右の年数以上の実務経験を有する者で、国土交通大臣の登録を受けた者がこの省令の定めるところにより行う講習を修了した者 | 宅地開発に関する技術に関する7年以上の実務の経験を含む土木、建築、都市計画、造園に関する10年以上の実務経験 | |
チ 上記に掲げたもののほか、国土交通大臣が右に掲げる項と同等以上の知識及び経験を有すると認める者 | 大学院等に1年以上在学して土木、建築、都市計画又は造園に関する事項の専攻後、宅地開発に関する技術に1年以上の実務経験
※昭和45年1月12日建設省告示第38号 |
開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならず(法第32条第1項)、また、開発行為又は開発行為に関する工事により新たに公共施設が設置される場合には、その公共施設を管理することとなる者等と協議しなければならない(同条第2項)。申請には同意を得た旨の書面を添附しなければならない。
これは、開発行為の影響を受ける既存公共施設の機能保持及び新たに設置される公共施設の適正管理を目的としたものである。
なお、ここでいう「公共施設」には、以下のものが該当する。
開発許可を受けた開発行為、または開発行為に関する工事により公共施設が設置されたときは、その公共施設は、工事完了の公告の日の翌日において、その公共施設の存する市町村の管理に属するものとする。ただし、他の法律に基づく管理者が別にあるとき、または協議によって管理者について特段の定めをしたときは、それらの者の管理とする。
法第33条は、開発許可申請があった場合、申請の内容や手続きが法令に違反していないときは、都道府県知事等は開発許可をしなければならないとし、良好な市街地の形成と一定以上の宅地水準の確保を目的とした技術的基準を定めている。開発区域内の道路や消防水利、給水・排水施設に関する計画が、同条の規定に反しないよう留意しなければならない。
主な内容は以下のとおりである。なお、具体的な技術的細目(道路幅員の数値など)は政令で定めている。
関係者との意見調整により、権利をめぐる紛争を防止するため、土地等の権利者の相当数の同意を得なければならない(全員の同意でなくてよい)。ここで開発行為に同意をしなかった者は、開発行為に関する工事が完了した旨の公告があるまでの間は、その権利の行使として、開発許可を受けた開発区域内において建築物を新築することができる。
地方公共団体の条例で、以下のとおり技術基準の強化等をすることができる。条例が制定されている場合は、制限を満たさない開発行為は許可を受けることができない。
法第34条は、無秩序な市街化を防止し、農地や山林を保護するために設定される市街化調整区域において、開発行為を立地面から規制するために設けられた規定である。具体的には、申請に係る開発行為が以下のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事等は開発許可をしてはならないとされ、市街化調整区域で立地できるものが限定されている。この規定により、区域区分制度(線引き制度)が担保されているといえる。
なお、列挙されているもの(市街化調整区域で開発許可が取得できるもの)の内容は、以下のとおり整理できる。
第34条の立地基準の理念は、同条第14号(開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為)の規定に集約されている。第34条では、計画的な市街化を図るうえで支障のないものや立地を認めることがやむを得ないものが限定列挙されているのは前述のとおりであるが、これは第14号の考え方、つまり立地基準の理念に合致するものを類型化し、列挙しているものである。これらの要件に該当しないものであっても、理念に合致するものはその立地が認められるべきであり、そのような案件を個別に審査して認めるのが第14号の規定である。
なお、第14号の要件は裁量色が強いことから、適用にあたっては第三者機関である開発審査会の議を経ることとなっている。開発審査会の意見は法的拘束力を持たないが、最大限尊重される(開発審査会の詳細については後述)。
開発許可の申請がなされた場合、都道府県知事等はその内容が上述の基準に適合しているか等を審査し、遅滞なく、許可または不許可の処分をしなければならない(法第35条第1項)。 また、その処分をするには、文書で申請者に通知しなければならない(法第35条第2項)。不許可の場合は不許可の旨と不許可の理由を文書で通知しなければならない。
開発許可を受けた者は、当該開発行為に関する工事を完了したときは、都道府県知事等に届け出なければならない(法第36条第1項)。都道府県知事等は当該工事が開発許可の内容に適合しているかどうかについて検査し、適合していると認めたときは、検査済証を当該開発許可を受けた者に交付しなければならない(法第36条第2項)。都道府県知事等は、前項の規定により検査済証を交付したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、当該工事が完了した旨を公告しなければならない(法第36条第3項)。
開発区域内の土地においては、法第36条第3項の公告があるまでの間は、建築物を建築し、又は特定工作物を建設してはならない(ただし工事用の仮設建築物又は特定工作物その他都道府県知事等が支障がないと認めたとき、法第33条第14項の同意をしていない者が権利の行使として建築する行為は例外)(法第37条)。
法第42条本文により、開発許可を受けた土地においては、工事の完了公告後に以下の制限がかかる。
制限の内容を一言で述べると、「開発許可を取得したところでは、許可された用途以外のものは立地してはならない」ということである。これは、許可された用途以外の用途のものが立地されてしまうと、用途に応じて定められた基準を適用している開発許可制度の実効性が著しく損なわれるためである。
ただし、都道府県知事等が当該開発区域における利便の増進上もしくは開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障がないと認めて許可したときはこの限りではなく、予定建築物の用途以外の用途のものが立地できる(同条但書)。また、当該区域の土地について用途地域等が定められているときも、本条本文の適用がない(同条但書)。すでにより厳しい用途規制があるためである。したがって、用途地域が定められている市街化区域では、原則として本条の適用がなく、知事が制限を定めることはできない。なお、国が行なう行為については、当該国の機関と都道府県知事との協議が成立することをもって、知事の許可があったものとみなす(同条2項)。
許可した後、知事は、以下の事項を開発登録簿に登録し、この登録簿を常に公衆の閲覧に供するよう保管し、かつ請求があったときはその写しを交付しなければならない(法第47条)。完了検査を行なった場合において当該工事が当該開発許可の内容に適合すると認めたとき、または制限外の知事の許可があったとき、国と知事との協議が成立したときは、開発登録簿にその旨を附記しなければならない。
法第43条は、市街化調整区域のうち、開発許可を受けていない土地で行われる建築物の新築、改築もしくは用途の変更等の行為(以下、「建築行為等」)について、許可を得なければならない旨規定している。以下では、この許可のことを「建築許可」と呼ぶ。 開発許可制度は、開発行為を規制することによりその目的を達成しようとするものであるが、開発行為(土地の改変行為)を規制するだけでは、目的の一つである「区域区分制度の担保」をすることができない。つまり、区域区分制度の担保のためには、開発行為が行われることなく建築行為等が行われる場合についても規制する必要があり、それを規定しているのが本条である。
許可不要となる開発行為が規定されているのと同様に、第43条でも建築許可が不要な建築行為等が規定されている。内容は以下のとおり。
建築許可の基準は政令第36条に規定されており、開発許可基準と同様に技術基準と立地基準が存在する。基準の内容は、原則として法第33条と法第34条を準用するものであるため、ここでの説明は省略する。
開発審査会は、法第78条第1項の規定に基づき、開発許可権限を持つ自治体に設置される附属機関である。構成と所掌事務は、以下のとおりである。 開発審査会の組織および運営に関し必要な事項は、都道府県等が条例で定めることとされている。
処分が不服であっても、開発審査会による裁決を経た後でなければ、裁判所へ出訴することはできない(審査請求前置主義、法第52条、行政事件訴訟法第8条第1項但書)。なお、「開発許可制度運用指針」は、開発審査会は上述の事務のほか、地域の実情に応じた弾力的な開発許可制度の運用のため積極的な役割を果たすことが期待され、そのために開発審査会の一層の充実を図ることが望ましいとしている。
現行の都市計画法は、旧都市計画法(1919年(大正8年)制定)が廃止されたのに代わり、1968年(昭和43年)6月15日に公布され、1969年(昭和44年)6月14日に施行された。開発許可制度は、この新都市計画法に基づき開始された。その後の推移は以下のとおり。
第1次改正 - 1975年(昭和50年)
第2次改正 - 1980年(昭和55年)
第3次改正 - 1983年(昭和58年)
第4次改正 - 1987年(昭和62年)
第5次改正 - 1992年(平成4年)
第6次改正 - 1998年(平成10年)
第7次改正 - 2000年(平成12年)
第8次改正 - 2006年(平成18年)(開発許可制度に係る部分は平成19年11月30日施行)
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