Loading AI tools
ウィキペディアから
開心術(英: open heart surgery)とは、心臓外科手術において患者の心臓を切開し手術操作を行う方法である。人工心肺を用いた体外循環のもとに、心停止下で行われる。
心内病変の修復を行うには心臓の壁を切開して心内に到達する必要があるが、単純に切開しただけでは大出血が起こり全身への血液灌流が停止してしまう。また手術操作のためには、心内から血液が排出された状態(無血視野)が得られること、そして心臓の拍動が止まり、静止した状態で手術が行えることの二条件が得られることが望ましい。これを可能とするために、開心術においては全身組織への血液灌流と酸素化を代替する人工心肺が使用される。また心筋保護、即ち心停止を得ると同時に心停止中の心筋障害を最小限に抑えることを目的として心筋保護液(cardioplegia)を用いるのが主流である。
本項では、弁膜症手術など心内操作のために心臓切開が必要な手術に加え、その他広く心停止法・人工心肺による体外循環を必要とする心臓手術も含めて述べる。
第二次大戦の前後から、1938年に動脈管結紮術[1]、1944年にBTシャント術[2]などの非直視下心臓手術が行われてきたが、本格的な開心術の歴史は戦後より始まる。トロント大学の心臓外科医ウィルフレッド・G・ビゲローは1950年に、心臓手術における全身低体温法を発表した[3] 。それ以前の直視下心臓手術では、常温下の循環遮断時間に3分程度という厳しい制約があり、その短時間で行うことの出来る手技は非常に限られていたが、全身低体温法はこの遮断時間の延長を可能にするものであった。そして1952年にF・ジョン・ルイスらがこの低体温法による心房中隔欠損症の手術を最初に行い[4]、世界で初の開心術の実施例となった。その後も人工心肺による体外循環法と心筋保護法の発達により、心臓血管外科は急速な発展を遂げている。
心臓外科領域における手術の大部分は開心術であり、術式は多岐に渡るが、以下に代表的なものを挙げる。
ここでは一般的な開心術のおおまかな流れについて記述する。
開心術においては術者、臨床工学技士(以下CE)、麻酔科医の三者の術中の意思疎通が不可欠かつ重要である。術野と人工心肺側のやり取りとしては、体外循環開始や離脱の決断、そのタイミングは実際には術者からCEへ口頭での伝達により指示が行われ、その他術野側の回路のクランプや解除・大動脈遮断に合わせた人工心肺のポンプ流量の調節など、あらゆる操作が口頭での意思疎通により行われる。また術野と麻酔科側のやり取りとしては、凝固機能やヘマトクリット、血液ガスなどのデータの確認、輸血の判断、経食道心エコーで術野からは確認しにくい心内の構造物や人工心肺離脱時に残留している気泡の確認、心機能の確認などが行われる。
人工心肺に接続し体外循環の準備を行う手順について述べる[7]。
以下に代表的なカニューレ挿入部位を示す。
開心術における心筋保護液は、以下の目的で使用される[8]。
心筋保護液は以下の2種類に大別される。成人の心筋保護液で最もよく用いられるのは血液添加心筋保護液である。心筋保護液は、その添加物に何を加えるかにより様々な投与法があるが、各々の心筋保護液の組成の優劣については未だ議論の余地が多い[9]。
心筋保護液は、順行性にも逆行性にも投与出来る。実際には順行性投与と逆行性投与を様々な形で組み合わせて使用することが多い。
ここでは心停止・人工心肺の使用に起因する合併症について列挙する[10]。
経食道心臓超音波検査(TEE: transesophageal echocardiography)。TEEではプローブが心臓に近いため、より良好な画像が得られる。右室と左室の局所的、および全体的機能を評価する。虚血の発症を鋭敏に検出でき、また、弁機能障害の評価ができる。
オンポンプ冠動脈手術の際、人工心肺(CPB: cardiopulmonary bypass)前にTEEを行い、局所と全体の心室機能を術前評価する。
また、オフポンプ手術の際、術前には経胸壁心エコーで心機能を評価しているが、その評価よりもTEEでの評価が悪ければ、術式がオフポンプからオンポンプに変更になることもある。
プローブは全身麻酔導入後、ヘパリン化の前に挿入する。 CPB離脱後に、TEEで心室機能評価、心腔内気泡の確認、弁形成や弁置換の効果判定ができる[14]。
プローブを挿入する前に、食道穿孔などの重篤な合併症を引き起こす可能性が高いTEEの禁忌について確認する。 禁忌には、
などの食道疾患がある。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.