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数学において、n 次元球面(n-じげんきゅうめん、英: n-sphere, n 球面)は普通の球面の n 次元空間への一般化である。任意の自然数 n に対して、半径 r の n 次元球面は中心点から距離 r にある (n + 1) 次元ユークリッド空間における点の集合として定義される。ここで半径 r は任意の正の実数でよい。したがって、原点を中心とする n 次元球面は
によって定義される。これは (n + 1) 次元ユークリッド空間内に存在する n 次元多様体である。
特に:
である。
次元 n > 2 の球面は超球面 (hypersphere)[注釈 1] と呼ばれることがあり、3 次元球面は glome と呼ばれることがある。原点に中心のある半径 1 の n 次元球面は n-次元単位球面または単位 n 次元球面 (unit n-sphere) と呼ばれ、Sn と表記される。単位 n 次元球面はしばしば the n-sphere と呼ばれる。
n 次元球面は (n + 1) 次元球体の表面あるいは境界であり、n 次元多様体である。n ≥ 2 に対して、n 次元球面は正の定曲率の単連結 n 次元多様体である。n 次元球面にはいくつかの他の位相的記述がある。例えば、2 つの n 次元ユークリッド空間を貼り合わせることによって、n-次元超立方体の境界を一点と同一視することによって、あるいは (n − 1) 次元球面の懸垂を(帰納的に)作ることによって構成できる。
任意の(0を含む)自然数 n に対して、半径 r の n 次元球面は (n + 1) 次元ユークリッド空間のある固定された点 c から距離 r にある点全体の集合として定義される。ここで r は任意の正の実数でよく、c は (n + 1) 次元空間の任意の点でよい。特に:
n-次元球面 Sn を定義する (n + 1)-次元空間内の点 (x1, x2, …, xn+1) 全体の成す集合は、方程式
によって表される、ただし c = (c1, c2, …, cn+1) は中心であり r は半径である。
上の n 次元球面は (n + 1) 次元ユークリッド空間に存在し、n 次元多様体の例である。半径 r の n 次元球面の体積形式 ω は
によって与えられる、ただし ∗ はホッジスター作用素である; r = 1 の場合のこの公式の証明と議論は Flanders (1989, §6.1) を見よ。結果として、
n 次元球面によって囲まれる有界領域は (n + 1) 次元球体 (n-ball) と呼ばれる。(n + 1) 次元球は n 次元球面を含めば閉集合であり、含まなければ開集合である。
具体例:
位相幾何学的には、n 次元球面は n 次元ユークリッド空間の1点コンパクト化として構成できる。手短に言えば、n 次元球面は として記述でき、これは n 次元ユークリッド空間プラス全ての方向における無限大を表す一点である。特に、一点が n 次元球面から除かれると、 に同相になる。これは立体射影の原理である[1]。
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一般に、n-次元ユークリッド空間内の n-次元球体および (n + 1)-次元ユークリッド空間内の n-次元球面の n-次元体積は、いずれも半径 R の n-乗に比例する。そこで、半径 R の n-次元球の体積を Vn(R) = VnRn, n-次元球面の体積を Sn(R) = SnRn と書いて、これら比例定数の成す数列 Vn, Sn の性質を記述する。
半径 R の (n + 1)-次元球体の境界となる n-次元球面の「表面積」(正確には n-次元体積)は同球体の (n + 1)-次元体積との間に、微分方程式
によって表される関係を持つ。あるいは同じことだが、単位 (n + 1)-次元球体を無数の同心 n-次元「球殻」の合併として表すことにより
を得る。
(n + 2)-次元単位球面を、各部分が何れも円(一次元球面)と n-次元球面との直積として得られる (n + 1)-次元のトーラスとなっているような和集合として表すこともできる。r = cos(θ) かつ r2 + R2 = 1, 従って R = sin(θ) かつ dR = cos(θ) dθ と置くと、
を得る。ここで S1 = 2πV0 だから、任意の n ≥ 0 に対し等式 Sn+1 = 2πVn が成り立つ。
以上の漸化式をまとめると
ということになる。
上記の二つの漸化式から Vn+2 = 2πVn⁄(n+2) であり、k に関して帰納的に
を示すことは容易である。ただし !! は二重階乗を表す。これは奇数 2k + 1 に対して (2k + 1)!! = 1⋅3⋅5⋅…⋅(2k − 1)(2k + 1) と定義されている。
一般に、n-次元単位球体の(n-次元ユークリッド空間内での)体積は
によって与えられる、ただし Γ はガンマ関数であり、Γ(1/2) = √π, Γ(1) = 1, Γ(x + 1) = xΓ(x) を満たす。
Vn に Rn を掛け、R について微分して R = 1 とおくと、閉じた形
を得る。
漸化式は結合して図にかかれているように表面積に対して「逆向きの」漸化関係を与えることができる:
すると添え字を n から n − 2 にシフトすることで漸化式
を得る、ただし S0 = 2, V1 = 2, S1 = 2π, V2 = π.
に対する漸化関係も 2 次元極座標での積分を経由して証明できる:
3 次元ユークリッド空間に対して定義される球面座標系に類する座標系を n 次元ユークリッド空間において定義できる。座標は動径座標 r と n − 1 個の偏角座標 からなる、ただし は ラジアン(あるいは [0, 360) 度)の範囲を動き、他の角度は ラジアン(あるいは [0, 180] 度)の範囲を動く。 が直交座標であれば、 を から次によって計算できる:
下で述べる特別な場合を除いて逆変換は一意である:
ただし、ある k に対して であるが がすべて 0 であれば、 のとき であり、 のとき ラジアン(180度)である。
逆変換が一意でない特別な場合がある; がすべて 0 であるときにはいつでも、任意の k に対して は ambiguous になる; この場合 は 0 と選ぶことができる。
ラジアンで角度を表すとき、n 次元ユークリッド空間における体積要素は変換
のヤコビアンから見つかるだろう、そして n 次元球の体積の上記の等式は
を積分することによって再び得ることができる。(n − 1) 次元球面の体積要素は、2 次元球面の面積要素を一般化するが、
によって与えられる。角度座標上の直交基底の自然な選択は j = 1, 2, ..., n − 2 に対してゲーゲンバウアー多項式
の積であり、角度 j = n − 1 に対して球面調和関数と一致して e isφj である。
3次元に埋め込まれた 2 次元球面が 2 次元平面の上へと立体射影によって写像できるのと全く同じように、n 次元球面は n 次元超曲面の上へと立体射影の n 次元バージョンによって写像することができる。例えば、半径 1 の 2 次元球面上の点 は xy 平面上の点 に写る。言い換えると、
同様に、半径 1 の n 次元球面 のステレオグラフ射影は 軸に垂直な 次元超平面 に次のように写る
一様に分布したランダム点を (n − 1) 次元球面(すなわち n 次元球の表面)上に生成するために、Marsaglia (1972) は以下のアルゴリズムを与える。
正規分布に従う n 次元ベクトル を生成する(実は分散の選択は任意であるが N(0, 1) を使うので十分である)。
今この点の「半径」 を計算する。
ベクトル は単位 n 次元球の表面上一様に分布している。
例えば、n = 2 のとき正規分布 exp(−x12) は別の軸 exp(−x22) 上拡大されたとき掛けた後 exp(−x12−x22) あるいは exp(−r2) の形を取り、したがって原点からの距離のみに依存する。
超球面上ランダム分布を生成する別の方法は超球の外にある点を除く単位超球を含む超立方体上の一様分布を作って残りの内点を原点から表面の上に外へ射影することである。これは一様分布を与えるが、外点を除く必要がある。超球の超立方体に対する相対的な体積は非常に急速に次元とともに減少するから、この手続はかなり小さい数の次元に対してのみ高い確率で成功する。
ウェンデルの定理は生成される全ての点が超球面の同じ半分にある確率を与える。
n 次元球の表面から一様に無作為に選ばれた点とともに、n 次元球内の一様に無作為に点を得るためには半径のみが必要である。u が区間 [0, 1] から一様に無作為に生成された数であり x が一様に無作為に n 次元球の表面から選ばれた点であれば、u1/nx は全単位 n 次元球上一様に分布している。
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