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裁判員法に基づいて、国民により選出され刑事訴訟手続を担当する人 ウィキペディアから
裁判員(さいばんいん)とは、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(通称:裁判員法)に基づいて、国民により選出され刑事訴訟手続を担当する人のこと。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
アメリカ合衆国の年次改革要望書の要望により、小泉純一郎内閣が検討し、2004年3月に国会に提出され、同年5月21日成立された裁判員制度に基づくもの。
裁判員法に基づき、一定の条件下の刑事訴訟について裁判官と合議体で裁判を行う。
裁判員は裁判官とともに証拠書類・証拠物の検討や、証人尋問、検証、被告人質問等の証拠調べを経て、評議・評決の上、判決成立に関与する。また、法律問題は裁判官のみによる合議で決定される。
裁判員は独立してその職権を行う(法第8条)。
まず、地方裁判所が、毎年9月1日までに、次の年に必要な裁判員候補者の員数をその管轄区域内の市町村に割り当て、これを市町村の選挙管理委員会に通知する(法20条)。
通知を受けた市町村の選挙管理委員会は衆議院議員の選挙権を有する者として選挙人名簿に登録されている者の中から、「くじ」により裁判員候補者の予定者を選定して「裁判員候補予定者名簿」を作成する。市町村の選挙管理委員会は、通知を受けた年の10月15日までに、作成した「裁判員候補予定者名簿」を地方裁判所に送付する(法21条、22条)。
地方裁判所は裁判員候補予定者名簿を元に、毎年、「裁判員候補者名簿」を作成する。裁判員候補者名簿に記載された者には12月頃までにその旨を通知する(法23条、25条)。
対象事件ごとに、地方裁判所は「裁判員候補者名簿」の中から、さらに呼び出す裁判員候補者を「くじ」で選定する。この「くじ」に際しては検察官及び弁護人は立ち会うことができる(法26条)。「呼び出すべき裁判員候補者」として選定された者には「質問票」と「呼出状」が自宅に送付される(法27条、30条)。
裁判員候補者は質問票に回答し、裁判所に持参または返送する。この質問票においては、欠格事由・就職禁止事由・事件に関連する不適格事由・辞退事由の存否について質問される。
質問票の回答により、明らかに欠格事由、就職禁止事由、事件に関連する不適格事由に該当する場合および辞退を希望して明らかに辞退事由が認められる者については呼出しが取り消されることもある。
なお、質問票に虚偽の事項を書いた場合には、50万円以下の罰金に処せられるか、または30万円以下の過料が課される(法110条、111条)。また、呼び出されたにもかかわらず、正当な理由なく出頭しない者は、10万円以下の過料が課される(法112条)。
裁判所に呼び出され、出頭した裁判員候補者の中から、非公開で裁判員と補充裁判員が選任される(法33条)。候補者としては裁判員・補充裁判員として必要な人数を超える人数(個々の事件ごとに、受訴裁判所(当該事件を担当する裁判体・裁判官のこと)が決定する。)を呼び出すこととなる(法26条1項)。
裁判長は裁判員候補者に対し、欠格事由の有無や辞退理由の有無、および不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断をするため、必要な質問を行う。陪席の裁判官、検察官、被告人又は弁護人は裁判長に対し、判断のために必要と思う質問を、裁判長が裁判員候補者に対して行うよう求めることができる(法34条)。
裁判所はこの質問の回答に基づいて選任しない者を決定する(法34条4項)。さらに、検察官及び被告人又は弁護人は、裁判員候補者について、それぞれ4人(補充裁判員を置く場合にはこれよりも多くなる)を限度に理由を示さず不選任請求できる(法36条)。これらの手続を経た上で、裁判所は、「くじ」等により、不選任の決定がされなかった裁判員候補者から、必要な人数の裁判員と補充裁判員を選任する(法37条)。
裁判員・補充裁判員の選任手続が終わったら公判準備及び公判手続に入る。公判開始後も、裁判員について不公平な裁判をするおそれがあるときや裁判から除外すべき場合、検察官、被告人又は弁護人は裁判所に対し、裁判員の解任を請求できる(法41条)。
なお、「裁判員候補者名簿」に記載されるのは毎年約29万5000人にのぼり、全国平均で352人に1人の確率とされている。実際に裁判員となる確率は、全国平均で約5,000人に1人になると想定されている[12]。
検察官、被告人又は弁護人は以下に該当することを理由として裁判所に対し裁判員又は補充裁判員の解任を請求することができる(法第41条)。
裁判員及び補充裁判員は、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判長から裁判員及び補充裁判員の権限、義務その他必要な事項を説明される(法第39条第1項)。
裁判員及び補充裁判員は、最高裁判所規則で定めるところにより、法令に従い公平誠実にその職務を行うことを誓う旨の宣誓をしなければならない(法第39条第2項)。
裁判員、補充裁判員及び裁判員選任手続の期日に出頭した裁判員候補者に対しては、旅費、日当及び宿泊料が支給される(法11条、29条2項)。
旅費は、鉄道賃、船賃、路程賃及び航空賃の4種であり、それぞれ裁判員の参加する刑事裁判に関する規則に定められた計算方法により算定される。
日当は出頭または職務およびそれらのための旅行に必要な日数に応じて支給され、裁判員及び補充裁判員については1日当たり1万円以内において、裁判員選任手続の期日に出頭した裁判員候補者については1日当たり8,000円以内において、裁判所が定めるものとされている(裁判員の参加する刑事裁判に関する規則7条)。
宿泊料は出頭等に必要な夜数に応じて支給され、1夜当たり8,700円ないし7,800円と定められている(同規則8条)。 なお、裁判員の精神的負担や経済的損失を考慮すると日当が少ないとの批判も多い[誰によって?](しかし、アメリカ合衆国、例えばカリフォルニア州の陪審員の日当は15ドル(2014年現在約1,500円)と、住所のZIPコードで機械的に算定される1マイルあたり34セント(1キロメートルあたり約21円に相当)の片道交通費だけである)。
強盗殺人事件の裁判員裁判に参加したため「急性ストレス障害(ASD)になった」として、元裁判員の福島県郡山市の女性(62)は2013年5月7日、国に慰謝料など200万円の損害賠償を求める訴訟を仙台地裁に起こした [14]。
女性側は 「裁判員制度は憲法違反」 とし、制度の見直しも訴えている。 3月に行なわれた県内初の強盗殺人罪に関する裁判員裁判においては、遺体写真のみならず殺害時の録音まで提示され [15]、 そのため女性は吐き気や不眠症に悩むことになり、判決後の同月下旬に病院でASDと診断された。
なお 「裁判員制度は違憲である」 として被告人側が行なった覚醒剤密輸事件の上告について、最高裁大法廷は2011年11月16日に[16]「制度は合憲である」 という判断を示し確定した(裁判員制度違憲訴訟)[17]。
2016年、暴力団の工藤會幹部の裁判を通じて、裁判員が暴力団関係者から声を掛けられる事案が発生。後に暴力団関係者は裁判員法違反で逮捕された。これ以降、暴力団関連事件では裁判員が審理に関わらないケースが増えた[18]。
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