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行旅死亡人(こうりょしぼうにん)とは、日本において、行旅中死亡し引き取り手が存在しない死者を指す言葉で、行き倒れている人の身分を表す法律上の呼称でもある。また、本人の氏名または本籍地・住所などが判明せず、かつ遺体の引き取り手が存在しない死者も行旅死亡人と見なす。「行旅」とあるが、その定義から必ずしも旅行中の死者であるとは限らない。なお、「行路死亡人」は誤り。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
行旅死亡人は該当する法律である行旅病人及行旅死亡人取扱法により、死亡推定日時や発見された場所、所持品や外見などの特徴などが市町村長名義にて、官報に掲載され公告される。
行旅死亡人となると地方公共団体が遺体を火葬し遺骨として保存、官報の公告で引き取り手を待つ事となる。行旅死亡人の取扱いに係る費用は、以下に示す順で支払われる。
発見された状態を問わないため、一般的に考えられる「行き倒れ」のイメージと異なる公告も多く見られる。
なお、本人の身元が判明した場合でも、「死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないとき」は、墓地埋葬法第9条に基づき、行旅死亡人と同様に地方公共団体の取り扱いとなる。
なお、行旅死亡人といっても一概に身元不明の人ばかりではなく、著名人でも行き倒れ、もしくは身投げで発見当時に身元がわからない場合公告が行われるケースが稀に存在する。映画祭で受賞経験がある著名な映画監督の池田敏春も海で水死し、遺体に身分が分かるものがなかったために公告された。[2]
行旅病人及行旅死亡人取扱法での行旅死亡人の定義は第1条で「行旅死亡人ト称スルハ行旅中死亡シ引取者ナキ者ヲ謂フ」とあり、また2項に「住所、居所若ハ氏名知レス且引取者ナキ死亡人ハ行旅死亡人ト看做ス」とあるので、行旅中に死亡し遺体の引き取り手が存在しない場合、もしくは本人の氏名または本籍地・住所などが判明しない人で、かつ遺体の引き取り手が存在しない場合、行旅死亡人として取り扱われる。
写真家の細川文昌が、2002年に発表した写真集『アノニマスケイプ:こんにちは二十世紀(ANONYMOUS SCAPES:HELLO, THE TWENTIETH CENTURY)』[3]は、20世紀の100年間、すなわち1901年から2000年まで1年につき1件ずつの公告が選び出され、行旅死亡人が発見された場所の現在の風景写真と、当時の官報に掲載されていた公告の複製写真とが、同一ページ上に並ぶ作品として出版された。
行旅死亡人が発見された場所の現在の風景と、その発見当時の状況を記録する地方官吏の手による詳細な文章との対比が20世紀の一部分を象徴していると云われる。それらの面などが評価され、「フィリップモリスK.K.アートアワード2002大賞」受賞作となった。
行旅死亡人の統計はないが、長野大学社会福祉学部の鈴木忠義は長野大学紀要第36巻第2号で、官報掲載の 「行旅死亡人の公告」記事を集計し、2000~2012年の行旅死亡人公告件数と2005~2009年の性別(推定)、死亡場所別(推定)、死因別(推定)、公告自治体(都道府県)別の年次推移を発表した[4]。
2000年は1,194件であったが、2005年以降は、行旅死亡人公示件数1,000件を割り、2012年は724件であった。2000年代後半では、性別(2005~2009年の合計)では、男性が約8割である。死亡場所別(2005~2009年の合計)では、「山林・雑木林」・「河川・ 沢・池・湖」・「海中」が約46%(1,879件)を占めており、自殺との関連性がうかがえる。死因別(2005~2009年の合計)では、不明・不詳または記載なし(2,582件、全体の約63.1%)を除くと、自殺とみられる死亡(「首吊り・縊死」、「溺死・ 水死」、「轢死(鉄道事故)」、「焼死・感電死」、「飛び降り・転落死」、「窒息死」、「中毒死」、「自殺(その他)」の合計)は1,140件(全体の約27.8%)と多かった。次いで、傷病によるとみられる死亡(「外因死(負傷など)」、「内因死(病死など)」 の合計)は291件(全体の約7.1%)、生活困窮によるとみられる死亡(「凍死・寒冷死」、「飢餓死」、「衰弱死」の合計)は57件(全体の約1.4%)、事件・事故によるとみられる死亡(「遺棄死」、「交通事故」の合計)は21件(全体の約0.5%)であった[4]。
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