米原汚水タンク殺人事件(まいばら おすいタンクさつじんじけん)とは、2009年6月12日滋賀県米原市で発生した殺人事件。

概要

2009年6月12日午前6時頃、滋賀県米原市の屎尿処理用タンク槽内から女性会社員の死体が作業員によって発見された。被害者の女性は6月10日午後8時頃に退社する姿が目撃されたのを最後に消息不明になっていた。司法解剖によると死亡推定時刻は6月11日午後8時頃で女性の死因はタンク内の汚泥を吸引したことによる窒息死だったが、頭を殴られたような痕があった。

警察は女性の交友関係や携帯電話の履歴などから、女性と同じ会社に勤務している交際相手の男が浮上。女性は男と交際をしていたが、男には妻子ある身だったため、不倫関係となっていた。最近は男の暴力に怯えていたため女性は同僚に相談していた。男は6月10日は出勤していたが、午後には退社をしておりアリバイがなかった。

男は女性の遺体が発見された翌日の13日に窓が割れたりルームミラーが折れたりしていた自家用車の修理を自動車販売会社に依頼していたことが判明(15日に依頼を取りやめ)。男の自家用車を調べていると車内から血痕が見つかり、女性のDNAと一致。また、被害者が退社してから消息不明になる直前に事件現場近くで男と会っていたことも判明した。

男は6月19日に逮捕されたが、男は否認をしたまま7月9日に殺人罪で起訴された。初公判は大津地裁101号大法廷にて2010年11月4日に開廷し、裁判員裁判の対象となった。公判回数は計11回にのぼり(内1回の午前中2時間の公判は非公開)、被告の車から検出された被害者の血痕と事件の関連性や被害者に頻繁にメールを送っていた被告の携帯電話が事件後になると被害者へのメールが激減した理由などが争点となった。

検察側は無期懲役を求刑する一方で、弁護側は無罪を主張した。

12月2日、大津地裁は不倫関係から動機が存在することや現場の血痕などの状況証拠について男の弁明は極めて不自然・不合理であり、男が犯人であることは明らかとした上で、計画性が低いことから検察の無期懲役の求刑を退けて懲役17年の有罪判決が下された。

その後、男は無罪を求めて最高裁まで争ったが、2013年2月2日に上告を棄却されて、懲役17年の判決が確定した。

冤罪の主張

有罪確定までに新聞、テレビなどでは冤罪の可能性を検証したような報道は皆無だが、実は公判では、男が事件以前に女性に暴力をふるっていたとか、男の車のフロントガラスに犯行時に生じたとみられるヒビがあったなどという、男が「クロ」だと世間に広く印象づける初期報道の多くが誤報だったことが明らかになっている。

また、遺体の状況からすると犯人が返り血を相当量浴びている可能性がきわめて高いにも関わらず、男が犯行後に座った運転席周辺から血液反応は一切出ていない。加えて、被害者は男の車の横で頭部を鈍器で乱打されたとされているにもかかわらず、車体から被害者の血液が検出されたのは、助手席と左後輪内側ブレーキドラムのみであった。公判で男は、助手席の血痕は自分と被害者の鼻血や経血であり、ブレーキドラムの血痕は被害者がタイヤ交換をした際に付いたものであると主張したが、判決ではそれらの主張は退けられている。

参考文献

  • 内田さとし「米原汚水槽女性殺害事件 本当にカレが彼女を汚水槽に投げ込んだのか?」『冤罪File』No.12(ほんとうにこわい嫁・姑2月号増刊)、冤罪File編集局、2011年1月、26-37頁。

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