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第XI因子(だい11いんし、英: factor XI)または血漿トロンボプラスチン前駆物質(plasma thromboplastin antecedent)は、血液凝固カスケードの酵素の1つ第XIa因子の酵素前駆体である。他の凝固因子と同様、セリンプロテアーゼである。ヒトでは、第XI因子はF11遺伝子にコードされる[5][6][7][8]。
第XI因子は肝臓で産生され、不活性型のホモ二量体体として循環する[9]。血漿中の半減期は約52時間である。第XI因子は、第XIIa因子やトロンビンによって第XIa因子へと活性化され、第XIa因子自身によっても活性化される。第XIIa因子によって活性化されるため、内因系のメンバーである[10]。
第XIa因子は、第IX因子の特定のアルギニン-アラニン、アルギニン-バリン間のペプチド結合を切断し、活性化する。その結果生じた第IXa因子は第VIIIa因子と複合体を形成し、第X因子を活性化する。
第XIa因子の阻害因子にはプロテインZ依存性プロテアーゼインヒビター(ZPI、セルピンのメンバー)があり、その作用はプロテインZ非依存的である(ZPIの第X因子への作用はプロテインZ依存的であり、名称はそれに由来する)。
第XI因子は1本のポリペプチド鎖として合成されるが、ホモ二量体として血液を循環する。各鎖の分子量はおよそ80000である。第XI因子の一般的な血漿中の濃度は5 μg/mLで、二量体としておよそ30 nMに相当する。第XI因子の遺伝子の長さは23kbで、4番染色体(4q32-35)に位置し、15のエクソンを持つ[6][7]。
第XI因子は4つのAppleドメインから構成され、5番目のセリンプロテアーゼドメインの下にディスク状のプラットフォームを形成する。1つ目のAppleドメインはトロンビンとHMWKの結合部位を含み、3つ目のドメインは第IX因子とヘパリン、糖タンパク質Ibを結合する。4つ目のドメインは第XI因子のホモ二量体の形成に関与しており、ジスルフィド結合を形成するシステイン残基を含む[11]。
ホモ二量体では、Appleドメインは斜めに連結された2つのディスク状のプラットフォームを形成し、触媒ドメインはそこから両側に突き出している。
トロンビンまたは第XIIa因子による活性化は、二量体の両方のサブユニットのアルギニン369-イソロイシン370間のペプチド結合の切断によって行われる。その結果、触媒ドメインはディスク状のAppleドメインから部分的に解離し、4番目のドメインとはジスルフィド結合で連結されたままであるが、3番目のドメインからは離れた位置となる。これによって3番目のAppleドメインの第IX因子結合部位が露出し、第XI因子の第IX因子に対するプロテアーゼ活性が発揮されるようになると考えられている[12]。
第XI因子の欠乏は、稀な疾患である血友病Cを引き起こす。この疾患は主にアシュケナジムのユダヤ人にみられ、集団の約8%が影響を受けていると考えられている。頻度はより低いものの、血友病Cはイラクにルーツを持つユダヤ人やイスラエルのアラブ人にもみられる。他の集団では、血友病症例の約1%が血友病Cである。常染色体劣性の遺伝疾患で、特発性出血は稀であるものの手術時に過剰な失血が生じる可能性があり、予防が必要である[13]。
低レベルの第XI因子は、ヌーナン症候群など多くの他の疾患でも見られる。
高レベルの第IX因子は血栓症との関連が示唆されているが、何が因子のレベルを決定しているのか、そしてそれがどの程度重症であるのかについては不確実である。
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