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特別自然美観地域

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特別自然美観地域
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特別自然美観地域(とくべつしぜんびかんちいき、Area of Outstanding Natural Beauty、以下AONB)は、イギリスイングランドウェールズ北アイルランドのカントリーサイド(田園地帯)の中でも、特に重要な景観価値があるとされた領域を指定し景観保全を行う制度、およびその領域。

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イングランドとウェールズの特別自然美観地域
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北アイルランドの特別自然美観地域

概要

国立公園と同じく、1949年施行の国立公園及び田園アクセス法による制度であり[1]、地域指定は政府外公共機関英語版の「Natural England」(イングランド)、「Natural Resources Wales」(ウェールズ)、「Northern Ireland Environment Agency」が行う。また、スコットランドにはAONBの制度は存在しないが、代わりに国立風致地域(national scenic area)という同様の制度が施行されている。国立公園と同様の開発からの保護を受けている一方で、不都合な開発を規制する特別な法的権限を持たない[2]。イギリス政府は、2012年3月の国家計画政策フレームワークにおいて、AONBと国立公園は、景観の問題に関する政策において同等の地位にあると述べている[3][4]国際自然保護連合の分類では、カテゴリーVの「保全された景観」に該当する[5]

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最初に指定されたダワー半島AONBのスリークリフベイの景観。

2022年時点で、イギリス国内には46のAONBがある(イングランド:33、ウェールズ:4、イングランド-ウェールズ国境:1、北アイルランド:8)[5]。最初のAONBは、1956年に南ウェールズのガワー半島英語版の一部が指定されたガワーAONBで、最も新しく指定されたのは1995年のテイマー・バレーAONBである[6]。また、2010年にはストラングフォード・ラフAONBとレカール・コーストAONBが合併して単一のストラングフォード・アンド・レカールAONBとなり、2012年にはクルイディアン・レンジAONBが拡張されてクルイディアン・レンジ・アンド・ディー・バレーAONBとなった[7]。多数の地方自治体に広がる2つのAONB(コッツウォルズとチルターン)には、「保全委員会」(conservation boards)という独自の法定機関がある[5]

AONBの面積、種類、用途は様々であり、また、区域の全体が一般公開されているものもあれば、一部分のみのものもある。最も小さいAONBはシリー諸島AONB(1976年指定、16平方キロメートル (6.2 sq mi))、最大のものはコッツウォルズAONB[8](1966、1990年に拡張[9]2,038平方キロメートル (787 sq mi))である。イングランドとウェールズのAONBは、両国のカントリーサイド地域の約18%に相当する。また、北アイルランドのAONBは、北アイルランドの海岸線の約70%をカバーしている[10]

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歴史

AONBのアイデアは、イギリスの公務員建築家であったジョン・ダワー(John Dower)によって、1945年の「イングランドおよびウェールズの国立公園に関する政府への報告」で最初に提唱された。ダワーは、面積が狭く野性味に欠けるために国立公園の指定は適さない地域であっても、美しい景観を保護する必要があると指摘した。この勧告は、1949年の国立公園及び田園アクセス法で、AONBとして制度化されることとなった[10]

AONBは大臣と教区によって任命された委員を含む特別委員会によって、AONBの存在する各地方自治体の責任で管理されているが、当初の法律では、各地方自治体にはごく限られた法的義務しか課せられていなかった。しかし、2000年に制定されたカントリーサイド・アンド・ライツ・オブ・ウェイ(Countryside and Rights of Way、CRoW)法によって、イングランドとウェールズにおけるAONBのさらなる規制と保護が追加された。

2021年6月、Natural Englandは、既存の二つのAONB(サリー・ヒルズ、チルターン)を拡張し、さらに新たに2地域(ヨークシャーウォルズ、チェシャ―・サンドストーンリッジ)を指定すると発表した。新規指定は1995年のTamar Valley AONB以来約四半世紀ぶりとなる[11]

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目的

AONBの主目的は、指定された景観の自然の美しさを保存および強化することにある[12]。その上で、農林業や地域産業が主目的を考慮しながら持続的な経済発展ができる地域づくりを行うことも目的とされている。そして、上記の目的を阻害しない範囲でレクリエーションの振興を行ってよいと定められている[1]。これらの目的を達成するために、AONBは計画規制と実質的なカントリーサイドの管理に重きを置いている。

AONBは国立公園と同等の優れた景観を有するため、国立公園と比較される場合もある。国立公園はイギリスの多くの国民によく知られている一方で、AONBの多くの居住者は居住地がAONBであることを知らないとも言われる。全国AONB協会は地域コミュニティにおけるAONBの認知度向上に取り組んでおり[13]2014年にはGoogle マップにAONBの境界線を表示するよう交渉した[14]

脅威

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旧サセックス・ダウンズAONBで建設中のファルマー・スタジアム(2010年)。

環境保護団体やカントリーサイド保護団体の間では、AONBの地位がますます開発の脅威にさらされているという懸念が高まっている。イングランド農村部保護キャンペーン(Campaign to Protect Rural England)は、2006年7月、多くのAONBがかつてないほど大きな脅威にさらされているとし[15]、特に脅かされている場所として、道路計画によって脅かされているドーセットAONB、ファルマー・スタジアムの建設が行われているサセックス・ダウンズAONB、そしてインペリアル・カレッジ・ロンドンによって数千の住宅とオフィスを建設する10億ポンド規模の計画が存在するケント州ワイのケント・ダウンズAONB[16]の3か所を挙げた。

また、2006年、地理学都市計画の専門家で環境問題に関しても取り組んでいるAdrian Phillips教授は、AONBが直面する大きな脅威として、「将来の土地管理への支援に対する不確実性」「開発圧力の増大」「グローバル化の影響」「気候変動」を挙げた。また、小規模な脅威として、忍び寄る郊外化と牧畜もあるとした[10]

2007年9月、イギリス政府は、サセックス・ダウンズAONBにあるブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCの新スタジアム(ファルマー・スタジアム)の開発を、環境保護主義者による激しい反対に遭いながらも承認した。その後、スタジアムは2011年7月に正式にオープンした。また、ドーセットAONBでは、周辺道路の渋滞を緩和するためのウェイマス・リリーフ・ロード(Weymouth Relief Road)の建設に環境保護団体が反対したが、建設を阻止するための高等法院での争いに敗れ、最終的に2008年から2011年の間に建設が行われた[17]

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特別自然美観地域の一覧

要約
視点

イングランド

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旧エリア

2005年にニューフォレスト国立公園が設立されたことで、サウスハンプシャーコーストAONBがそこに組み込まれた。また、イースト・ハンプシャーAONBとサセックス・ダウンズAONBは、2010年にサウス・ダウンズ国立公園に置き換えられた。

ウェールズ

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北アイルランド

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提案段階のエリア

以下は、Natural England[18]に提出された、新しいAONBの案である。

2019年の『ランドスケープ・レビュー』のレポートは、Natural Englandに掲載されなかった、Sandstone RidgeとVale of Belvoirの提案に関して好意的に言及している[19]

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脚注

関連項目

外部リンク

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