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広義にはレンサ球菌属による感染症すべてを、狭義には化膿レンサ球菌による感染症を指す語 ウィキペディアから
溶連菌感染症(ようれんきんかんせんしょう、英: Streptococcal infection)は、広義にはグラム陽性球菌のうちレンサ球菌属(英: 羅: Streptococcus, 複数形は-cocci)によって惹き起こされる感染症すべてを指す。
このうち特に感染症を起こす頻度が高く、一般によく知られているのは化膿レンサ球菌(英: 羅: Streptococcus pyogenes)であるため、通常単に「溶連菌」といえば化膿レンサ球菌の事を指し、「溶連菌感染症」といえば化膿レンサ球菌による感染症のことを指す。化膿レンサ球菌には他に「A群レンサ球菌」(英: 羅: Group A streptococcus, GAS)という別名もある。
レンサ球菌はグラム陽性球菌でLancefieldの血清学的分類により、A群、B群、C群、G群などに分けられる[1][2]。また、レンサ球菌はヒツジ赤血球加血液寒天培地上での性状により、不完全溶血となるα溶血、完全溶血となるβ溶血、非溶血となるγ溶血に分けられる[1]。
このうち最も多くみられるのがA群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)Streptococcus pyogenesで、菌種名としては化膿レンサ球菌と呼ばれる[1][2]。
以下では最も多くみられるA群β溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes、菌種名は化膿レンサ球菌)[1][2]を中心に述べる。
臨床症状として発熱、咽頭痛や咽頭発赤および頚部リンパ節炎(発疹を伴う場合あり)、苺舌などがみられる[1]。
咽頭・扁桃炎や気管支炎、猩紅熱などの上気道感染症などがみられる[2]。
皮膚感染症として伝染性膿痂疹や丹毒、深部の蜂巣炎などがみられる[2]
化膿性合併症として肺炎、髄膜炎、敗血症など、非化膿性合併症としてリウマチ熱、急性糸球体腎炎などを起こすことがある[1]。
黄色ブドウ球菌を菌体とする病態にtoxic shock syndromeがあるが、同様の病態を示すものに溶連菌感染症の原因となるA群溶連菌を病原体とするtoxic shock-like syndrome(TSLS)があり急速に進行することを特徴とする[5]。後者はトキシックショック様症候群とも訳され[6]、レンサ球菌を病原体とすることからStreptococcal Toxic Shock-like Syndrome[7][2](severe invasive streptococcal infection[7])として区別され、劇症型溶連菌感染症[2]や劇症型溶血性レンサ球菌感染症[7]とも呼ばれている(略称はTSLSのほかSTSSも用いる[2])。四肢が侵され病巣が拡大することから俗に人食いバクテリアと呼ばれているものの一つである[5]。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、感染症法上、「5類」に分類されている。
国立感染症研究所によると、日本国内における劇症型溶血性レンサ球菌感染症の報告数が2022年以降、増加している。2023年夏以降は、2010年代にイギリスで流行した病原性・伝播性が高い「S. pyogenes M1UK lineage(UK系統株)」の集積が確認されている[8]。
咽頭扁桃炎、伝染性膿痂疹など、病巣を直接綿棒などで擦過できる部位の感染症では、擦過物を血液寒天培地で培養することにより溶連菌が発育することをもって、溶連菌感染(あるいは保菌)を診断できる。化膿性関節炎、リンパ節炎などで膿が採取できる場合には膿の培養が有用であり、敗血症を伴う感染(侵襲性感染症)では血液培養が陽性となることも多い。
咽頭炎の場合、迅速テストの感度は80〜90%、特異度は90%を超える[3]。陽性なら抗菌薬を開始し培養は不要となる[3]。陰性の場合、咽頭ぬぐい液の培養24〜48時間で結果が得られる[3]。感度は90%を超える[3]。治療の開始が9日遅れてもリウマチ熱の発症率に影響を与えないといわれる[3]。
リンパ節炎があるが化膿していない場合や、蜂窩織炎など直接検体を採取できない場合、または急性糸球体腎炎やアナフィラクトイド紫斑病など、急性感染症以外の合併症の場合にGAS感染を証明するには、血清診断が有用である。抗ストレプトリシン抗体価(ASLO)、抗ストレプトキナーゼ抗体価(ASK)がこの目的で使用される。
学校保健安全法によって定められその他に分類される伝染病であり、溶連菌感染症に罹患した学童は、適切な治療が開始されてから24時間は登校することができない[9]。
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