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ニッケイ属

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ニッケイ属
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ニッケイ属(ニッケイぞく、学名: Cinnamomum)は、クスノキ科に分類される常緑木本の1つである。和名としてクスノキ属が充てられることもあるが[6][7][8]、2022年以降、クスノキなど一部の種はセイロンニッケイなどとは系統的にやや異なることが示され、別属 Camphora に分類することが一般的となっている。葉はふつう対生状、革質で3本の葉脈が目立つ(三行脈)(図1上)。花は6枚の花被片、9個の雄しべ、3個の仮雄しべ、1個の雌しべをもち(図1下)、果実液果で黒紫色に熟する。南アジアから東アジア東南アジアオーストラリア熱帯から温帯域に分布し、230種ほどが知られる。日本にはニッケイヤブニッケイマルバニッケイなどが自生する。芳香性の精油を多く含み、セイロンニッケイ(狭義のシナモン)、シナニッケイ(肉桂、カシア)などは香料香辛料生薬として広く利用されている。学名の Cinnamomum はシナモンを意味し、ギリシア語kinnamōmoncinein = 巻く、amomos = 申し分ない)に由来する[6][9]

概要 ニッケイ属, 分類 ...
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特徴

常緑性高木から低木[3][10][11](図2a)。精油を含み、樹皮にはしばしば強い芳香がある[3][10]対生またはややずれている[3][10][9][11](図2b)。葉身は革質、ふつう三行脈をもち、ドマティア(ダニ室)を欠く[10][11]。葉の表側(向軸側表皮細胞は不定形で細胞壁が波状、表面が網目状[11]

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2a. ヤブニッケイの樹体
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2b. セイロンニッケイの植物画

集散花序を形成し、腋生または頂生する[3][10](図2b)。は小型から中型、ふつう両性、放射相称、3輪性、黄色から白色、花托は杯状から鐘状で短い[3][10][11](図2b, 3a)。花被片は6枚、3枚ずつ2輪、ふつう一部または全体が早落性[10][3](図3a)。雄しべはふつう9個、3個ずつ3輪、はふつう4室、外側2輪の雄しべは腺体を欠き葯は内向、第3輪の雄しべ基部には1対の腺体があり葯は外向[3][10][11](図2b, 3a)。仮雄しべは雄しべの内側に1輪3個あり、柄があり心形またはやじり形[3][10][11](図2b)。雌しべは1個、花柱は細く、子房と同長、柱頭は頭状、盤状または3裂[3][10](図2b)。果実液果、成熟すると黒紫色を帯び、杯状や鐘形の果托に基部が覆われる[3][10][11](図2b, 3b)。

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3a. インドグスの花
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3b. ヤブニッケイの果実
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分布

インドヒマラヤ中国朝鮮半島日本台湾フィリピンインドシナ半島マレー半島インドネシアニューギニア島オーストラリア東部に分布する[3]

人間との関わり

ニッケイ属の植物はしばしば精油を多く含み、樹皮皮、果実などが香料香辛料生薬などとして利用される[9](図4)。樹皮における精油の主成分はシンナムアルデヒドであることが多い[9]。ニッケイ属の植物またはその樹皮はシナモン肉桂とよばれるが、狭義には、シナモンはセイロンニッケイCinnamomum verum)、肉桂はシナニッケイCinnamomum cassia または Cinnamomum aromaticum)を指す[9]。また、インドグスCinnamomum burmannii)、Cinnamomum loureiroiタマラニッケイCinnamomum tamala)も商業的に利用されている[12]。そのほかにも、いくつかの種が小規模に利用されている[9][12]。日本では、20世紀中頃までニッケイ[注 1]Cinnamomum sieboldii)の根皮が利用されていたが、現在ではほとんど利用されていない[9]。また、ニッケイ属の中には、木材用や観賞用として利用されるものもある[9][14]

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4a. セイロンニッケイの樹皮、その粉末、乾燥花
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4b. シナニッケイの樹皮

ニッケイ属の樹皮を乾燥させたものはシナモンとよばれ、狭義にはセイロンニッケイのものを指すが、シナニッケイなど他種のものもシナモンとされ、香料香辛料として菓子料理飲料に広く利用されている[9][15]。セイロンニッケイのものに比べてシナニッケイに由来するものは香りと辛味が強く、甘味が少ないとされる[9][15]

シナニッケイなどの樹皮を乾燥させたものは生薬とされ、桂皮(けいひ)ともよばれる[16][17]。また、細枝を乾燥したものは桂枝ともよばれる[17]。これらは芳香性健胃剤とされ、また漢方では発汗・解熱・鎮痛薬として用いられる[16][17]

一方で、ニッケイ属植物は、肝毒性や発癌性を示すクマリンを含み、特にシナニッケイでは多いとされる[9][18]

ニッケイ属植物の利用の歴史は古く、古代エジプトにおいてミイラの保存にセイロンニッケイシナニッケイが使われていたとされる[9]。またヨーロッパ中国では、紀元前からニッケイ属植物の薬用利用についての記述がある[9]。日本では、正倉院に「桂心」の名で収納されている[9]江戸時代には南西諸島原産のニッケイが本土南部で栽培されるようになり、その根皮が生薬や香料(八ツ橋、肉桂餅、ニッキ餅、ニッキ水など)に使われていたが、第二次世界大戦後はほとんど生産されていない[9][19]

分類

要約
視点
さらに見る 属/節, Cinnamomum ...

ニッケイ属は大きな属であり、かつては新世界に分布するものを含めて350種ほどが分類されていた[11]。しかし系統分類学的な研究に基づき、新世界に分布するものは Aiouea 属に分けられた[11]。この時点でニッケイ属に残された種(アジアからオーストラリアに分布)は、形態的な特徴から2つのCinnamomum sect. CinnamomumCinnamomum sect. Camphora)に分類されることが多かった[11](表1)。その後、分子系統学的研究から、この2節が近縁ではないことが示され、Camphora節の種(クスノキなど約20種)は別属 Camphora に分類することが提唱されている[11]。その結果、2024年時点でニッケイ属(Cinnamomum)には230種ほどが残されている[3]。経済的に利用される種や和名をもつ種を以下の表2に示す。

表2. ニッケイ属のおもな種

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脚注

外部リンク

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