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座頭市と腕の立つ浪人との戦いという、第1作以来何度か描かれるモチーフを扱った一作。また、江ノ島の祭りで十文で殴られ屋をやる十文字糺や、藤沢遊行寺で客の投げた百文銭(天保通宝)を空中で千枚通しに通してに入れてみせる座頭市の即興の興行など、当時の風俗が垣間見られるシーンもある。シリーズ第3作『新・座頭市物語』において、故郷へ戻った座頭市が「笠間のイチタ」さんと呼ばれるシーンがあるが、本作では「ガキの時分から市、市って呼ばれておりやした」ということで、「ただの市」という渾名を付けられる。
館山から三浦崎に向かう船の中では、乗客たちによる丁半博打が開かれていた。市も壷振りとして参加するが、眼の見えないことをからかわれたことに腹を立て、乗客たちを手ひどくやりこめてしまう。同じ船には将棋好きの浪人、十文字糺(じゅうもんじ・ただす)が乗り合わせていた。ふとしたきっかけから将棋を指す仲になった市は腕を認められ、「ただの市」というあだ名を付けられ親交を深める。
船は江ノ島に着き、市は按摩の仕事に精を出すが、船の中でやりあった若い衆が馬入一家の者だったために、お礼参りに会ってしまう。そのもめごとに巻き込まれて怪我をしたのが元で、若い女お種と連れ立って遊芸に来ていた幼女おみきが破傷風にかかってしまった。自分のせいだと気に病んだ市は南蛮渡来の霊薬透頂香を買い、湯治のために共に箱根へと赴く。湯治宿に居合わせた客の中には、武家の友之進とその従者である六平という者がいた。友之進は父親の仇を追って旅を続けていたが、父を殺した者は定かではないが、将棋の揉め事から殺されたという。その折、六平が何者かによって殺された。
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