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日本の法律 ウィキペディアから
宗教法人法(しゅうきょうほうじんほう、昭和26年4月3日法律第126号)は、信教の自由を尊重する目的で、宗教団体に法人格を与えることに関する日本の法律である(第4条)。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
(上記3.の「破産手続開始の決定」の場合について)
大日本帝国憲法においては「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス」と定められていたが、その後長らく宗教団体に関する一般法は作られなかった[1]。
その間、何度も法案が提出されたものの廃案になっていたが、戦時態勢の強化のなか、大日本帝国憲法発布から50年を経てついに1939年4月8日に宗教団体の法人化を認める「宗教団体法」が公布され、翌1940年4月1日から施行された。宗教団体の設立には「文部大臣又は地方長官の認可」が必要とされ、文部大臣は宗教団体に対し、監督、調査、認可の取り消しなどの権限を持つと定められていた[1]。
大東亜戦争(太平洋戦争・第二次世界大戦)後に、日本に進駐していたGHQは1945年10月4日、治安維持法などとともに「宗教団体法」の廃止を命じた。1945年12月15日にGHQは人権指令と神道指令を発布した[3]。日本政府は同年12月28日、勅令(ポツダム命令)をもって宗教団体法を廃止し、それまでの認可制を認証制に変え、宗教法人の設立、規則変更、解散などを自由に行なえるようにした「宗教法人令」を即日施行した[4][1][5]。
この「宗教法人令」は当初から平和条約の発効により廃止されるものとされており、それに代わるものとして1951年4月3日「宗教法人法」が公布され、即日施行された。
新宗教の法人化が相次いでいた1958年4月22日、「宗教法人審議会」は「宗教法人法における認証、認証の取り消し等の制度の改善方策に関する答申」と題する答申を出した[1]。その内容は宗教団体の定義を明確にすること、宗教法人と認定する基準を設けること、公告制度、役員制度、財産処分等の手続きなどの改善、公益事業とその他の事業の明確化、宗教法人に対する調査および報告の取り扱いの明確化などであった。
しかし、この答申は当時の宗教界の反対により、「宗教法人法」に取り入れられることはなかった[1]。その後、1958年の答申でも宗教法人に対する認証基準が不明確であることが指摘され、1966年には所轄庁となる各都道府県に対し、所轄の宗教法人に法の趣旨を普及徹底させ、規則を遵守させるよう指導すべきとの通達が出された[1]。 1988年にも文化庁宗務課が宗教法人法に対する認証の際に充分な審査をすべきとの通達を出した[1]。
オウム真理教は1989年に宗教法人として認可されたものの、その後1995年に一連の凶悪事件が発覚し、テロリズム団体が宗教法人資格を得ていることが問題視された。一定の要件を満たしていれば、所轄庁は認証しなければならなかったことや、社会を暴力で混乱させる準備や行動をしている宗教法人をこれまでの方法では見つけ出せないことなどが問題となり、法改正を求める声が高まった。
一部の宗教団体は改正に反対したが、同法としては大きな改正がなされ、1996年(平成8年)9月に改正法が施行された。
宗教法人に解散命令が言い渡されたとしても、法人格を失うだけであり、権利能力なき社団(オウム真理教、その他後継団体等)あるいは新たに登記して一般社団法人として、宗教活動は続けることが可能であり、オウム真理教も後継団体が存在している。ただし、各種非課税措置を受けられなくなる。
2022年(令和4年)7月8日の安倍晋三暗殺事件に端を発し、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧世界基督教統一神霊協会)の霊感商法や信者に対する多額の献金要求が広く世間に知られ、当該団体の活動の在り方が問題とされた。その過程で、野党議員が解散命令請求について首相に問う[6]、全国霊感商法対策弁護士連絡会が所轄省庁の担当相らに裁判所に職権で当該団体の解散命令を出すことを請求するよう申入れを行う[7]等、当該団体の解散請求も政治問題として浮上してきた。
一方で、これまで解散命令が出た宗教法人がいずれも刑事事件で有罪となったことを挙げて、解散命令を出すには刑事事件違反でなければならず単なる民法違反では解散命令は出せないとの主張が、文化庁等の官庁側から出され[7]、一部メディアでも喧伝される等、強い政治的抵抗が続いていた[8]。この官庁側からの解散命令請求拒否の原因について、連絡会は、家庭連合と政治家との強いつながりを挙げている[7]。それまでも家庭連合との関係が取沙汰されてきた萩生田光一[9]、下村博文[10]らは、自民党安倍派清和政策研究会に解散直前まで所属し、文化庁の上部組織である文部科学省の大臣を務めたこともある、有力な文教族の議員であった。このような中で、2022年10月18日、第101代内閣総理大臣岸田文雄もいったんは、判例で確立しているとして、単なる民法違反では解散命令請求を行えないとの見解を示した[11]。
しかし、関係機関で業務に従事した者により書かれ、事実上、既往の官公庁側の法令解釈をほぼ反映するものとなっているはずの逐条解説書においても、「法令とは宗教法人法は勿論あらゆる法律、命令・条例を指す」と元々から書かれており、さらに、過去の衆院法務委員会で「宗教法人法ばかりに限ったことでなく、他の一般のいろいろな法規に違反する場合を指している」と、調査局長が答弁していたことまで明確に記載されていた[12]。
結局、翌日19日、岸田は立憲民主党の小西洋之の質問に答弁する形で、政府として考え方を整理した結果として、単なる民法違反でも解散命令請求を裁判所に行えると、答弁を変更した[13]。
1999年、宗教法人明覚寺による水子供養を謳う霊感商法による組織的犯罪が認定され、文化庁から解散命令が請求される。2002年、和歌山地裁が宗教法人明覚寺に対して解散命令を出した。宗教法人の解散命令は宗教法人オウム真理教とこの他には2021年現在出されていない。
宗教法人は学校法人や社会福祉法人などその他公益法人と同様に税制上の優遇措置が与えられている。そのため休眠状態にある宗教法人格を買取って転売して利益を得る宗教ブローカーなどにより、宗教法人が営利目的や反社会勢力の隠れ蓑として使われているケースが存在した[1]。なお、アメリカ合衆国やドイツでは、宗教活動に対する免税認定の際には、その団体が政治団体化、営利団体化しているかなどを審査している[14]。
1996年(平成8年)の法改正で、宗教法人に対し、役員名簿や財産目録などの法人備え付け書類の提出が義務付けられ、違反した場合には代表役員などに対し、過料が科せられるようになった。しかし、自治体によって提出率に差があり、未提出の宗教法人については、担当人員数の不足から活動実態の把握が難しく、形骸化しているのではないかとの指摘がある[15]。
1996年の法改正で、文化庁は宗教法人審議会の意見を聞いた上で、宗教法人法違反が疑われる法人に対し報告を求め、責任者に質問する権限(「報告徴収・質問権」、いわゆる「質問権」)を付与された。
2022年10月17日、岸田は家庭連合に対して質問権を行使するよう、第29代文部科学大臣永岡桂子に指示した[16][17]。2023年7月末までに同法人への質問は7度に及んでいる[18]。
第50条3項では宗教法人の解散決定後に処分出来ない財産は国家に帰属(国有化)されると定められている。このケースが適用された事例は2019年まで存在しなかったが、2020年に7年近く土地と建物の引き取り手が見つからなかった島根県大田市にある浄土宗の寺院金皇寺に対して、初めて適用されることになった[19][20]。
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