Loading AI tools
ウィキペディアから
数学において多重劣調和函数(たじゅうれつちょうわかんすう、英: plurisubharmonic function)は、複素解析において用いられるある重要な函数のクラスを形成する。しばしば psh、plsh あるいは plush 函数と略される[1]。ケーラー多様体上で、多重劣調和函数は劣調和函数の部分集合を形成する。しかし、(リーマン多様体上で定義される)劣調和函数とは異なり、多重劣調和函数は複素解析空間上で完全な一般性をもって定義される。
定義域が であるような函数
が多重劣調和的(plurisubharmonic)であるとは、それが上半連続であり、すべての複素直線
に対して函数 が次の集合上で劣調和的であることを言う:
完全な一般性をもって、この概念は任意の複素多様体や複素解析空間 でも次のように定義できる。ある上半連続函数
が多重劣調和的であるための必要十分条件は、任意の正則写像 に対して函数
が劣調和的であることを言う。ここで は単位円板を表す。
が(微分可能性の)クラス に属するとき、 が多重劣調和的であるための必要十分条件は、成分が
で与えられる、 のレヴィ行列としてよく知られている半正定値なエルミート行列である。同値ではあるが、-函数 f が多重劣調和的であるための必要十分条件は、 が正 (1,1)-形式であることである。
ケーラー多様体との関係: n-次元複素ユークリッド空間 上で は多重劣調和函数である。実際、 は、定数倍を除き の上の標準ケーラー形式に等しい。さらに一般的には、 が、あるケーラー形式 に対し、
を満たすと、 は多重劣調和函数であり、これはケーラーポテンシャルと呼ばれる。
ディラックのデルタとの関係: 1-次元複素ユークリッド空間 上で、 は多重劣調和函数である。 がコンパクトな台を持つ C∞-級函数とすると、コーシーの積分公式 からは、
であることが分かり、これを次の形に変形することができる。
これは、ほかならぬ、原点 0 でのディラック測度である。
その他の例
φ を 2次元の複素数空間 C2 上の実数値関数とし、φ < 0 で定義される領域 Δ が有界領域であったとする[4]。 エウジェーニオ・エリア・レヴィは Δ が擬凸状であるためには L(φ) を
で定義したとき Δ の境界で L(φ) ≧ 0 となることが必要であることを示した。
この L は、L(φ1) > 0 かつ L(φ2) > 0 であったとしても L(φ1 + φ2) > 0 となるとは限らない。この不便さを取り除くため[5]、岡は同じような役割を演ずる函数であって和に関して不変であるようなものを探した。
D を C2 の擬凸状領域とする[6]。x と y を C2 の座標とし、複素数 ξ に対して x = ξ で定義される解析直線による D の切り口を D(ξ) と表す。Ry(x) を、複素平面における y と D(x) の境界との距離とする。この函数はハルトークスの正則半径に相当する。ハルトークスは
が x に関して劣調和な函数であることを示した。
岡は、この函数がすべての解析直線上で劣調和函数になることを証明した[7]。これは一つの発見であった[8]。ここから多重劣調和函数の概念は誕生した。
が成立するなら、 は定数である。
多重劣調和函数の理論の主要な幾何的応用は、1942年に岡潔によって(特別な場合に)証明された有名な定理に見られる[11]。
連続函数 は、原像 がすべての に対してコンパクトであるとき、階位函数 (exhaustion function) と呼ばれる。多重劣調和函数 f が強多重劣調和的(strongly plurisubharmonic)であるとは、M 上のあるケーラー形式 に対して、 が正形式であることを言う。
岡の定理: M は、滑らかな強多重劣調和階位函数を持つ複素多様体とする。このとき、M はシュタイン多様体である。逆に、任意のシュタイン多様体はそのような函数を持つ。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.