地域特別気象中枢(ちいきとくべつきしょうちゅうすう、英語: Regional Specialized Meteorological Centre、略称: RSMC)は、世界気象監視計画WWW)の一環として、世界気象機関WMO)の会合にて合意を得て指定された気象機関の総称であり、WMOの特定のプログラムに関連した気象注意報・警報等の気象情報を作成・収集・配信する任務を委託されている。その機能によって、地域特化型RSMC (Centres with geographical specialization) と活動特化型RSMC (Centres with activity specialization) の2つに大別される[1]

名称については、地域特別気象センター[2]地区特別気象センター[3]の和訳もみられるほか、英語圏でも: Regional Specialized Meteorological Center: Regional Specialised Meteorological Centreと、米英の言語の差による表記の揺れが散見される。

地域特化型RSMC

2012年現在、世界に25ヶ所ある地域特化型の地域特別気象中枢 (Centres with geographical specialization) は、各地区内で以下の役割を担っている。

  1. 世界気象中枢と国家気象中枢の間で、気象資料の形式を調整したり、需要に応じて全地球的な気象データを提供したりする。
  2. 管轄地区内を対象に12時間から48時間先の気象状況を分析・予測したデータを提供する。
  3. 戦争や災害等により、地区内の国家気象中枢が緊急事態に陥った際や壊滅的な状態あるいは業務遂行不能の状況にある場合、当該国の気象業務を援助して国連の人道的なミッションを支援する。
  4. 他の地域特別気象中枢と協調して適切な気象業務を遂行する。
さらに見る 地域特化型RSMCおよび担当海域 (RSMCs with geographical specialization), 担当地域 ...
地域特化型RSMCおよび担当海域[1]
(RSMCs with geographical specialization)
担当地域所管する機関所在地外部リンク
第Ⅰ地区
(アフリカ)
アルジェリアの旗 アルジェリア国立気象局 アルジェ Météo Algerie (フランス語)
エジプトの旗 エジプト気象局 カイロ EMA (アラビア語) (英語)
セネガルの旗 セネガル国立気象局 ダカール
チュニジアの旗 チュニジア国立気象研究所
モロッコの旗 モロッコ国立気象局
チュニス/
カサブランカ
ケニアの旗 ケニア気象局 ナイロビ Kenya Meteorological Department (英語)
南アフリカ共和国の旗 南アフリカ気象局 プレトリア South African Weather Service (英語)
第Ⅱ地区
(アジア)
サウジアラビアの旗 サウジアラビア気象環境省 ジッダ PME (アラビア語) (英語)
ウズベキスタンの旗 ウズベキスタン水文気象局 タシュケント
日本の旗 気象庁 東京 気象庁 (日本語) (英語)
インドの旗 インド気象局 ニューデリー India Meteorological Department (英語) (ヒンディー語)
ロシアの旗 ロシア水文気象環境監視局 ノヴォシビルスク Росгидромет (ロシア語)
ハバロフスク
中華人民共和国の旗 中国気象局 北京 中国気象局 (中国語) (英語)
第Ⅲ地区
(南米)
アルゼンチンの旗 アルゼンチン国立気象局 ブエノスアイレス Argentina-Servicio Meteorologico Nacional (スペイン語)
ブラジルの旗 ブラジル国立気象研究所 ブラジリア Instituto Nacional de Meteorologia (ポルトガル語)
第Ⅳ地区
(北中米)
アメリカ合衆国の旗 国立ハリケーンセンター マイアミ NHC (英語)
カナダの旗 カナダ気象局 モントリオール Meteorological Service of Canada (英語) (フランス語)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ海洋大気庁 ワシントン NOAA (英語)
第Ⅴ地区
(南西太平洋)
ニュージーランドの旗 ニュージーランド気象局 ウェリントン Meteorological Service of New Zealand (英語)
オーストラリアの旗 オーストラリア気象局 ダーウィン Bureau of Meteorology (英語)
メルボルン
第Ⅵ地区
(欧州)
イギリスの旗 イギリス気象庁 エクセター Met Office (英語)
ドイツの旗 ドイツ気象局 オッフェンバッハ Deutscher Wetterdienst (ドイツ語) (英語)
ロシアの旗 ロシア水文気象環境監視局 モスクワ (上記)
イタリアの旗 イタリア気象局 ローマ Servizio Meteorologico (イタリア語)
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活動特化型RSMC

2012年現在、活動特化型RSMC (RSMCs with activity specialization) は、熱帯低気圧プログラムおよび環境緊急対応プログラムにおいて、その役割を担っている。

熱帯低気圧プログラム

以下の6つの地域特別気象センターの他に、熱帯低気圧の命名および警報・注意報を発表する地域的な熱帯低気圧警報センターが6つある[4]

さらに見る 担当海域, 担当機関 ...
熱帯低気圧プログラムに参画する地域特別気象中枢
(Regional Specialized Meteorological Centre for Tropical Cyclone Programme; RSMC for TCP)
担当海域担当機関所在地
南西太平洋 フィジー気象局ナンディ熱帯低気圧センターフィジーの旗 フィジー ナンディ
南西インド洋 フランス気象局レユニオン熱帯低気圧センターフランスの旗 フランス 海外県 レユニオン島
アラビア海およびベンガル湾 インド気象局トロピカル・サイクロン・ニューデリーインドの旗 インド ニューデリー
北西太平洋および南シナ海 気象庁太平洋台風センター日本の旗 日本 東京
太平洋北部および中部 中部太平洋ハリケーンセンターアメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ハワイ州 ホノルル
北東太平洋
北部大西洋カリブ海メキシコ湾
国立ハリケーンセンターアメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 フロリダ州 マイアミ
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主要な海域

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主な熱帯低気圧の形成海域と各海域の担当機関(RSMC

慣例上、熱帯低気圧の発生する領域は、以下の7つに区分される。

全海域の中で最も熱帯低気圧の活動が活発なのは太平洋西部で、最も活発でないのは北インド洋である。世界中で年間平均86個のトロピカル・ストーム級(最大風速17.2m/s以上)の熱帯低気圧が発生し、うち47個はハリケーン/タイフーン級(最大風速32.7m/s以上)に成長し、さらにそのうち20個はインテンス・トロピカル・サイクロン級(最大風速46.3m/s以上で、最小のものでもハリケーンのカテゴリー3に相当する)にまで発達する[6]

  • 北東太平洋: この海域は北西太平洋に次いで熱帯低気圧の活動の活発な海域であり、年間発生数は全海域で最も多い。この海域で発生するハリケーンメキシコ西部へ影響することが多く、次いで米国本土(特にカリフォルニア州)、中央アメリカの北部にも影響を及ぼす。近代的なデータベースにはカリフォルニア州に上陸したハリケーンの記録はないが、1858年にサンディエゴで75mph(33.5m/s)を超える風速(ほぼ熱帯低気圧がハリケーンに分類される最低限の風速)を記録したとする伝承がある。しかし、この時本当にカリフォルニア州にハリケーンが上陸したのかは明らかにされていない[9]1939年のロングピーチ・トロピカル・ストーム、1976年のハリケーン・カスリーン、1997年のハリケーン・ノラはいずれもゲールフォース・ウィンド(強風級の風)をカリフォルニアにもたらした[9]
カーボベルデ諸島付近のアフリカ西岸沖で発生する熱帯低気圧は、大西洋の他の海域で発生する熱帯低気圧よりも勢力が強いことが多く、カーボベルデ型ハリケーンと呼ばれる。
時に、2006年9月にスペインブリテン諸島に強風をもたらした[11]ハリケーン・ゴードンの例のように、ハリケーンから衰退した温帯低気圧ヨーロッパまで到達することもある。
2005年9月には、ハリケーン・ヴィンスがトロピカル・デプレッションとなってスペイン南西部の沿岸に上陸し、熱帯低気圧としてイベリア半島に衝撃を与えた唯一の例となった[12]
  • 南西太平洋: この海域における熱帯低気圧の活動はオーストラリアを中心にオセアニア諸国に大きな影響を与える。ただし、トロピカル・ストームが勢力を保ったままオーストラリアのブリスベン付近やニュージーランドに到達することは滅多になく、温帯低気圧へと衰退していく最中や温帯低気圧に切り替わった後に接近・上陸することがほとんどである[14]

熱帯低気圧警報センター

南半球には、上述の気象センターを補完する6つの主要な熱帯低気圧警報センター (Tropical Cyclone Warning Center; TCWC) がある[4]

さらに見る 担当海域, 担当機関 ...
熱帯低気圧警報センター (Tropical Cyclone Warning Center; TCWC)
担当海域担当機関所在地
南東インド洋(南緯10度以南) オーストラリア気象局 オーストラリアの旗 オーストラリア パース
アラフラ海およびカーペンタリア湾 オーストラリアの旗 オーストラリア ダーウィン
珊瑚海 オーストラリアの旗 オーストラリア ブリスベン
ソロモン海およびパプア湾 パプアニューギニア国立気象局パプアニューギニアの旗 パプアニューギニア ポートモレスビー
タスマン海 ニュージーランド気象局ニュージーランドの旗 ニュージーランド ウェリントン
南東インド洋(南緯10度以北) インドネシア気象気候地球物理庁インドネシアの旗 インドネシア ジャカルタ
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環境緊急対応プログラム

国境を横断するような大規模な環境災害が発生した場合に備えて、大気の輸送・(汚染)沈着・分散をモデル化し、運用・配信する8つの気象センターがある[17]

さらに見る 担当地域, 担当機関 ...
環境緊急対応プログラム (Environmental Emergency Response Programme) に参画する気象機関[17]
担当地域担当機関所在地
ヨーロッパおよびアフリカ イギリス気象庁 イギリスの旗 イギリス エクセター
ヨーロッパおよびアフリカ フランス気象局 フランスの旗 フランス トゥールーズ
南西太平洋の後方支援およびアメリカ大陸 カナダ気象局 カナダの旗 カナダ モントリオール
南西太平洋の後方支援およびアメリカ大陸 アメリカ海洋大気庁 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ワシントンD.C.
アジア ロシア水文気象環境保護局 ロシアの旗 ロシア オブニンスク
アジア 気象庁 日本の旗 日本 東京
アジア 中国気象局 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 北京
南西太平洋 オーストラリア気象局 オーストラリアの旗 オーストラリア メルボルン
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このほか、ドイツオッフェンバッハに通信ネットワークのゲートウェイを置き、万一原子力災害等が発生した場合、迅速に情報交換ができるように国際原子力機関 (IAEA) とWMOを24時間リアルタイムで接続している[17]

出典・脚注

関連項目

外部リンク

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