教会暦

キリスト教で使われる暦 ウィキペディアから

教会暦(きょうかいれき)とは、キリスト教で用いられる暦のこと。典礼暦(てんれいれき)ともいわれる[1][2][注釈 1]太陽暦の1年を周期としている。教会暦における日界の始まりの時点)は常用時(日界は正子)とは異なり、日没である。

東方教会

正教会の教会暦

正教会で使われる教会暦を正教会暦という[3](単に「暦」と呼ばれる場合もある[4])。

正教会暦に従い日々の奉神礼が構成され、祭と斎(ものいみ)が定められる。これによって一定の生活様式の習得と保持が図られ[4]、生活における「時の成聖」が行われ[5]、常に起きるかつて起きた出来事の今日的現実化をもたらされる[6]

復活大祭パスハ)を中心とする周期を構成する動暦と、日にちで固定されている不動暦とで構成される[7]。正教会暦は9月1日に始まる[8]

西方教会

要約
視点

カトリック教会の典礼暦

カトリック教会においては、典礼暦はその一年が待降節から始まり、翌年の待降節の前日(土曜日)で終わるサイクルになっている。典礼暦にしたがって、ミサ中の朗読の配分、典礼色などが決まっている。

主日(日曜日)の朗読配分は3年周期である。西暦の年数(上述の通り典礼暦上の一年は待降節から始まるため、開始時点の年数に1を加えた数)を3で割った場合に、1余る年をA年、2余る年をB年、3で割り切れる年をC年と呼ぶ。A年にはマタイ、B年にはマルコ、C年にはルカの各福音書がおもに朗読される。
週日(月~土曜日)の朗読配分は2年周期である。西暦の奇数年を第1周年、偶数年を第2周年と呼ぶ。ただし、2年周期になっているのは「年間」の第1朗読だけで、福音書朗読および待降節・降誕節・四旬節・復活節の第1朗読については1年周期であり、毎年同じ箇所が朗読される。
また、1年を通して特定の日に聖人を記念する(カトリック教会の聖人暦を参照)。その際の朗読配分は基本的に1年周期で、毎年同じ箇所が朗読される。

現行の典礼暦上の一年は「待降節→降誕節→年間→四旬節→聖なる過越の3日間→復活節→年間」のサイクルになっている。典礼暦上のすべての日は、祭日・主日・祝日・記念日・週日のいずれかである。下記に挙げる祭日・祝日は「すべてのカトリック教会において、主日に優先して祝われる祭日・祝日」であるが、これら以外にも、聖人の祝日・記念日が特定の日にあてられている。それらが下記の祭日・祝日及び主日と重なった場合、下記の祭日・祝日及び主日を優先する(その教会の献堂日や名前の日、教区や修道会など共同体の守護聖人の日など、特別の事情がある場合には、祝日及び主日に優先する)。

聖公会の教会暦

聖公会では聖餐式中に旧約聖書使徒書福音書の朗読と詩篇の交唱が行われるほか、朝夕の礼拝においても日課として聖書朗読が行われる。朗読箇所は、聖餐式が3年サイクル(改訂共通聖書日課のA年、B年、C年)、朝夕の礼拝が2年サイクル(第1年、第2年)で指定されており、これを聖書日課と称する。聖書日課表は祈祷書に収録されているほか[9]、毎年の教会暦に従って「教会暦・日課表」が年ごとに作成される。なお、聖餐式で朗読される聖書箇所を抜き出した「聖餐式聖書日課」がA年、B年、 C年用と3種類作られ、用いられている。

日本聖公会では祈祷書によって祝日を定めている。祝日の種類は次の通りである。

祝日・記念日

  • 主要祝日
復活日(イースター)、昇天日聖霊降臨日三位一体の主日降誕日顕現日諸聖徒日
  • 主日に優先して守られる祝日
主イエス命名の日被献日主イエス変容の日

期節

Thumb
アドベントろうそくの1本(一番手前)がローズ・サンデイ用にバラ色で、クリスマス当日には全部点灯されている(ハワイ米国聖公会教会で、2016年12月25日)
  • 降臨節 (イエスの誕生を待ち望むための節)
    • 第三主日:ローズ・サンデイ
  • 降誕節 (イエスの誕生から顕現までの節)
    • 降誕日 (クリスマス、12月25日)
    • 主イエス命名の日(1月1日)
  • 顕現節
    • 顕現日(1月6日)
    • 顕現後第一主日・主イエス洗礼の日
  • 大斎節 イエスの受難を偲び、復活日まで悔い改めを行う節。
    • 大斎始日(灰の水曜日)
    • 聖週(扱いは大斎節)
      • 復活前主日
      • 復活前月曜日
      • 復活前火曜日
      • 復活前水曜日
      • 聖木曜日
      • 聖金曜日・受苦日
      • 聖土曜日
  • 復活節 イエスの復活を記念する節。
    • 復活日
    • 復活後月曜日
    • 復活後火曜日
    • 復活後水曜日
    • 復活後木曜日
    • 復活後金曜日
    • 復活後土曜日
    • 昇天日
    • 復活節第7主日・昇天後主日
    • 聖霊降臨日(ペンテコステ) 使徒に聖霊が降臨したことを記念する日。
  • 聖霊降臨後の節
    • 聖霊降臨後第1主日・三位一体主日
    • 聖霊降臨後第2主日~聖霊降臨後第27主日(27までない年もある)
    • 聖霊降臨後最終主日(降臨節前主日)

プロテスタントの教会暦

宗教改革を記念し、10月31日宗教改革記念日が祝われる。

教会暦を用いないプロテスタントもある。歴史的にはルーテル教会は教会暦を守り、ピューリタンは教会暦のクリスマスや待降節も否定する傾向にあった[10]。講解説教を行う教会では、教会暦に直接対応しない聖書箇所が朗読箇所になることもあり、その場合の判断は各教会によって分かれる。

ルーテル教会の教会暦

ルーテル教会の教会暦である[11]

  • 待降節
  • キリスト降誕祭、年末、顕現日(待降節)
  • 降誕日
  • 降誕後第一主日
  • 大晦日夕べの祈り
  • 新年(主の割礼と命名の日)
  • 降誕後第二主日(日本では「顕現主日」の場合が多い)
  • 顕現日
  • 顕現後
    • 顕現後最終主日(変容主日)
  • 四旬節前
  • 四旬節
    • 灰の水曜日
    • 枝の日曜日
  • 聖木曜日
  • 聖金曜日(受苦日)
  • 聖土曜日
  • 復活徹夜祭
  • 復活日
  • 復活節
  • 主の昇天
  • 聖霊降臨祭(ペンテコステ)
  • 三位一体日(聖霊降臨後日曜日)
  • 宗教改革記念日10月31日
  • 最後の審判の日曜日、永遠の日曜日(教会暦最終日曜日)

日本のプロテスタントの教会暦

日本では、戦時体制下の苦い記憶と偶像崇拝の罪を犯した歴史を記憶するためとして、2月11日を「信教の自由を守る日」としている。

以下は、多くの教会で守られている祝日である[12][13]

  • 待降節
  • クリスマス
  • 元旦礼拝
  • 公現日
  • 信教の自由を守る日(2月11日) 
  • 灰の水曜日
  • 受難節
  • 世界祈祷日
  • 棕櫚の主日
  • 洗足日
  • 受難日
  • 復活日
  • 母の日
  • 昇天日
  • ペンテコステ
  • 三位一体主日
  • 子どもの日(花の日
  • 世界聖餐日
  • 父の日
  • 宗教改革記念日(10月31日
  • 収穫感謝日

注釈

  1. 典礼がカトリック教会において頻繁に使われる単語であることから、「典礼暦」という用語もカトリック教会で頻繁に使われるが、出典の通り、プロテスタントにおいても「典礼暦」という用語が使われる事例も若干ある。
  2. 「主の降誕(12月25日)」が日曜日の場合に限られる。この場合、12月30日は金曜日となる。
  3. 週日にあたる1月6日に祝う場合、1月2日から5日の間にある日曜日は「降誕節第2主日」となる(1月6日から8日の間の日曜日に祝う場合は「降誕節第2主日」が存在しない)。
  4. 「『主の洗礼』の翌日」は常に週日にあたるため、「年間第1主日」が祝われることはない(「『主の洗礼』の翌日」から土曜日までを「年間第1週」と呼び、「年間」に入って最初の主日は「年間第2主日」となる)。ただし、「年間第1主日」用の典礼文は存在する。
  5. 灰の水曜日から3日後の土曜日までは「四旬節 灰の式の週」と呼ばれる。4日後の日曜日が「四旬節第1主日」となり、その日曜日から始まる週が「四旬節第1週」となる。
  6. これに先立つ木曜日の午前中には、各教区の司教座聖堂にて「聖香油のミサ」が行われることが多い。
  7. 「復活の主日」は、「聖なる過越の3日間」と「復活節」の両方に含まれる。
  8. 「年間」の週の数は、降誕節後と復活節後の分を合わせて33ないし34ある。「年間」の主日が34ある場合は、四旬節の始まる週の直後の週の分から続けて数える。33しかない場合は、「聖霊降臨の主日」の後に採用するはずの最初の週の分を省いて数える。ただし、いずれの場合においても、「聖霊降臨の主日」の翌週の日曜日は「三位一体の主日」、翌々週の日曜日は(木曜日から移動されなければ)「キリストの聖体」が優先されることに留意すべきである。
  9. 「王であるキリスト」の翌週の日曜日が「待降節第1主日」となる。

参照元

参考文献

関連項目

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