無主の土地を、他の国家に先んじて支配を及ぼすことによって自国の領土とすること ウィキペディアから
先占(せんせん、独:Besitzergreifung, 羅:occupatio)とは、いずれの国にも属していない無主の土地(無主地)に対し、他の国家に先んじて支配を及ぼすことによって自国の領土とすることである[1]。無主地先占、または先占の法理ともいわれ[2]、国際法においての領土取得のあり方として認められている[3]。
国際法において無主地先占は先占の法理ともよばれ、他の国家によって実効的支配が及んでいない土地を領土として編入する際にも適用される。また、領土問題が発生した場合には、領土の権源のひとつとしても採用される法理である。
領土問題において無主物先占が言及される事例としては、以下のものがある。
京都大学教授田畑茂二郎は、近世の国際法において先占(occupatio)の法理がもち出され、承認されていった背景として「新大陸、新航路の発見にともない展開された、植民地の獲得、国際通商の独占をめざした、激しい国家間の闘争」をあげている[7]。また、「国家間の行動を共通に規律する」国際法の動機について「他国に対して自国の行動を正当づけるといった動機が、多くの場合背景になっていた」と述べている[7]。
東京大学名誉教授の横田喜三郎は、無主地について、「国際法の無主地は無人の土地だけにかぎるのではない。すでに人が住んでいても、その土地がどの国にも属していなければ無主の土地である。ヨーロッパ諸国によって先占される前のアフリカはそのよい例である。そこには未開の土人が住んでいたが、これらの土人は国際法上の国家を構成していなかった。その土地は無主の土地にほかならなかった」と指摘している[8]。
また、横田によれば、19世紀には国際社会によって、先占は土地を現実に占有し支配しなければならないと主張され、それがしだいに諸国の慣行となり、19世紀後半には、国際法上で先占は実効的でなければならないことが確立したとしている[8]。
横田は「先占が実効的であるというのは、土地を現実に占有し、これを有効に支配する権力をもうけることである。そのためには、或る程度の行政機関が必要である。わけても、秩序を維持するために、警察力が必要である。多くの場合にはいくらかの兵力も必要である」と、警察力・軍事力と実効的先占の関連についても指摘している[8]。
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