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この項目では、石森章太郎と石川森彦による漫画版『仮面ライダーアマゾン』について説明しています。すがやみつるによる漫画版『仮面ライダーアマゾン』については「新・仮面ライダー」をご覧ください。 |
『仮面ライダーアマゾン』(かめんライダーアマゾン)は、石森章太郎(後の石ノ森章太郎)による日本の特撮TVドラマシリーズ及び漫画作品、また、その作中で主人公が変身するヒーローの名称。ここでは『テレビマガジン』(講談社)にて、1974年11月号から1975年3月号まで連載された石森による漫画版を扱う。全5話。同名の特撮テレビドラマと同じ原案をもとにしたタイアップ漫画であるが、原作者自身が執筆していることから、しばしば原作漫画として扱われる。もっとも当時の石森は多忙だったために下描きまでしか行っておらず、ペン入れ以降の作業は石川森彦が行っている。内容は骨子こそ特撮テレビドラマと大差はないが、児童を対象とした月刊誌の限られたページ数と、短い連載期間といった制約から全編が短縮されている。
なお、連載開始前には全7ページのカラー予告編として、石森自身が出演したノンフィクション風の南米探険ルポ記事「私は見た 怪奇青年アマゾンライダーを!」が発表された[5][6]。
アマゾンと仲間たち
- アマゾン(仮面ライダーアマゾン[注釈 1])
- テレビドラマ版と異なり、日本人名は不明(予告カットではリュウ[7][8][注釈 2])。赤子の頃、南米アマゾン上空でのエンジントラブルによる飛行機墜落事故で親を失って、現地の原人[注釈 3]にひとり助けられ育てられた野生児であり、長じてはバゴーによってギギの腕輪を守る使命を託され、そのための改造手術を施された青年である。その結果、体の細胞ひとつひとつが怒りによって震えると“まるで仮面ライダーのように”、超人的な身体能力を持つ異形の戦士に変身することができる。バゴーに高坂博士と会うように指示されて、貨物船に密航して日本へとやって来た。
- ふだんはそれほど感情表現を露わにしない物静かな人物だが、優れた運動神経と勘の持ち主で、初めて乗ったバイク(ジャングラー)も一度で乗りこなすほどであった。変身することで獣のような嗅覚を発揮し、姿の見えない敵の位置も察知できる。また、完全に変身をせずに体の一部だけ変化させることもできるようで、鋸状の突起を右腕のみに表出させてヒョウ獣人の首を斬り落としてみせている。常に左腕に付けているギギの腕輪には、バゴーたちが守ってきたマヤ・インカの秘宝[注釈 4]の隠し場所が書いてあり、ガガの腕輪と合わせるとその隠し場所の扉を開くカギとなる。なお、腕輪にはテレビドラマ版のような特殊能力(治癒能力や超パワーなど)は秘められていない。
- バゴー
- 詳細は不明だが、南米アマゾンで密かに古代マヤ・インカの超科学の秘宝を守って暮らす部族の長老と思われる。テレビドラマ版と異なり、改造前のアマゾンと知己ではない。秘宝を手に入れようとする十面鬼の野望を阻止するため、ギギの腕輪を守る使命を託す若者と見込んでアマゾンを捕縛し、インカ古代科学の技術による肉体改造手術を施す。このことから秘宝とは別に、ある程度の超古代科学を継承していると思われるが、ゴルゴスが獣人を生み出したり、十面鬼となったりした技術も同様の超古代科学を元にしているかどうかは不明。はっきりとは描かれていないが、アマゾンの手術後に十面鬼の襲撃によって死亡したと思われる。
- 高坂マサヒコ
- 苗字の読みは“タカサカ”ではなく、“コウサカ”である。テレビドラマ版における岡村まさひこ。横浜港の倉庫街で偶然アマゾンと出会い、変身する姿を見て「仮面ライダーみたい」と表現した。クモ獣人から助けられて以後、大の仲良しとなる。アマゾンに対する姉の態度をからかったりするなど、少々ませている。なお、偶然にも彼の“おじ”こそがアマゾンの探していた高坂博士であった。
- 高坂美奈
- テレビドラマ版における岡村りつ子。テレビドラマ版と異なり、アマゾンを警戒したり拒絶することはなかった。後にドラマと同様にアマゾンにお手製の上着を贈っている。
- 高坂博士
- テレビドラマ版における高坂教授。高坂姉弟の“おじ”にあたるようだが、伯父・叔父のどちらなのかは不明。原人[注釈 3]を調査するために南米へ探検に行った際にバゴーと出会い、ジャングラーの設計図を託される。機械でアマゾンの記憶を探っていたその最中に、ヘビ獣人に殺害される。
- 立花藤兵衛
- 高坂博士の友人。立花モータースを経営しており、高坂博士から頼まれてスーパーバイク・ジャングラーを製作していた。マサヒコと美奈が訪ねてきた時の様子からすると、ふたりとは以前からの知り合いらしい。なお、名や容姿こそ石森の執筆した漫画版『仮面ライダー』と同じであるが、同一人物であるかどうか(世界観が繋がっているかどうか)は明らかでない。
- モグラ獣人[注釈 5]
- 元は人間の子供であり、ゲドンによって獣人に改造されスパイをさせられていた。アマゾンと十面鬼ならびにゼロ大帝との戦いの後、どうなったかは描かれていない。
敵
- 十面鬼ゴルゴス
- テレビドラマ版と異なり、最終回まで登場する。巨大な人面岩に下半身が埋まった奇怪な姿をしており[注釈 6]、空中を自由に飛び回る。右腕に付けたガガの腕輪を守る者として選ばれながら、世界征服を夢見て、そのために古代の超科学が生み出した兵器を欲し、ゲドンを組織して反乱を起こす。その体の改造経緯は不明であり、人面岩の周囲に配された9つの顔それぞれがどのような存在なのか(テレビドラマ版のように元が人間なのかどうか)も不明で、喋るシーンもない[注釈 7]。また、ゲドンも獣人以外の構成員は登場せず、組織としての全容は不明。
- ゼロ大帝
- 第4回のラストカットと最終回に登場。「ガランダー帝国のゼロ大帝」と名乗ってこそはいるものの、テレビドラマ版と異なり敵組織の交代は無く、配下も登場しないためガランダー帝国の実態はさだかでない。銃火器を備えたマシンに乗って空中を自在に移動し、自らアマゾンと十面鬼の戦いに介入。アマゾンとの交渉中に乱入した十面鬼を、マシンから放ったビーム砲らしき兵器によって、一撃のもとに葬り去った。
- ゴルゴスがゼロ大帝やガランダー帝国の存在を事前に知っていたのかどうかは不明[注釈 8]。「ゴルゴスのやり方が手ぬるすぎるので自ら出向いてきた」との発言から、あるいはテレビドラマ版における“真のゼロ大帝(全能の支配者)”のように、ゲドンの上位にある存在とも考えられるが、詳細は明らかにされなかった。
- なお、本人曰く名前は身につけたものを取ると姿が見えなくなる(=ゼロになる)ことに由来しているという。
- 獣人
- クモ獣人、獣人コンドル、ヘビ獣人、ヒョウ獣人、モグラ獣人、獣人ハンミョウ、ヤギ獣人[注釈 9]が登場する。
- ただし、漫画内で具体的に名称が明示されたのは「獣人コンドル」と「獣人ハンミョウ」のみであり[注釈 10]、その他の獣人の名称はいずれも姿から推測される便宜上のものである。
2001年には、『テレビマガジン』全連載分をまとめた『仮面ライダーEX』が双葉社より刊行された[31]。この単行本には「仮面ライダー絵コンテ漫画」[注釈 11]と、「キミは仮面ライダーをみたか?!」[注釈 13]も併録されている。
また2012年には、カラー口絵などの一部を除き、ほぼ同じ内容のものを文庫化した『仮面ライダーアマゾン 特別ふろく①仮面ライダー絵コンテ漫画 ②キミは仮面ライダーをみたか?!』が、徳間書店より刊行されている。
2016年7月23日には、『仮面ライダーアマゾン1974 [完全版]』が復刊ドットコムより刊行された[6]。連載漫画の掲載当時の形での完全復刻を初め、予告編[5]も当時のままカラーで初復刻されているほか、上述の単行本にも収録されていた「新形式絵コンテ漫画 仮面ライダー」[注釈 11]が収録されている[6]。
注釈
この名称は作品タイトルのみであり、劇中では一度も登場していない。わずかにマサヒコが「仮面ライダーみたいに変身した」と口にするにとどまっている。
“リュウ”はアマゾンの企画段階における、素顔のときの青年の名前であった[9]。番組企画書10頁にもその名が残っていることが確認できる[10]。
高坂博士は「アマゾン化石人」と呼んでいたが、ほかに「森の人」、「謎の化石人間」などとも呼ばれていたらしい。
秘宝とは、現代科学の数倍も進んだ、世界を滅ぼしかねないほどの超古代科学の武器や兵器だという。
作中にこの名称は登場しない。その容姿から、テレビドラマ版を参考にした便宜上のものである。
下半身が人面岩に置き換わっている訳では無く、岩の中に両脚も埋まっている。これはテレビドラマ版の十面鬼ゴルゴスと同様である[23][24][25]。
ただし、表情は変化しているので意識がある可能性はある。その一方、人面岩中央の巨大な口からは、テレビドラマ版同様に火炎(弾)を発射したり、獣人を繰り出したりすることがある。
十面鬼の前で「ゼロ大帝だ」と名乗っていることから、初対面ではあるらしい。
作中でいっさいの説明がないため、実際はヤギの獣人かどうかもさだかでない。
クモ獣人はあくまでマサヒコが口にした呼称であり、同様にヒョウ獣人もマサヒコから「ヒョウ男」と呼ばれてはいるものの、本当の名称は不明。
「新形式絵コンテ漫画 仮面ライダー」は、『月刊少年マガジン』1979年8月号に掲載された絵コンテ風のスタイルと漫画を織り交ぜたもので、全100頁の読み切りである[32](「仮面ライダー絵コンテ漫画」のタイトルは、単行本収録の際に目次や章タイトルなどに付けられたもの)。仮面ライダーの姿が1(2)号を踏襲していたり、敵組織がショッカーという名であるなど、旧作『仮面ライダー』のリメイクのような体裁ではあるが、そもそもは同年10月から放映スタートする『仮面ライダー』(スカイライダー)のプロモーションを兼ねて発表されたという経緯があり、その内容に少なからぬ影響を与えていると見られている。
『TOKUMA COMICS 仮面ライダーアマゾン』の解説では“約半年前”と記述されているが、『仮面ライダーBLACK』のTV放映は1987年10月なので(企画書の表紙には手書きで1986.3と書き込まれている)、誤植もしくは筆者の誤認と思われる。
「キミは仮面ライダーをみたか?!」は、石森自身によるラフスケッチと直筆の文章で構成されており、『仮面ライダーBLACK』制作前の1986年3月に関係者に配布された 、一種の企画書ともいえるものである。「新形式絵コンテ漫画 仮面ライダー」と同様に仮面ライダーが1(2)号のイメージだったり、敵組織名がショッカーではあるものの、『仮面ライダーBLACK』放映の1年半前に執筆された[注釈 12]こともあって、『BLACK』に反映されたアイディアソースを垣間見ることができる。
出典
月刊『テレビマガジン』1974年10月号、講談社、59-65頁「私は見た 怪奇青年アマゾンライダーを!」。
月刊『テレビマガジン』1974年10月号、講談社、「アマゾンライダー登場!」4頁。
ENTERTAINMENT BIBLE.43『仮面ライダー大図鑑4 MASKED RIDER X:MASKED RIDER AMAZON』1992年3月15日、ISBN 4-89189-217-X、88頁。
“仮面ライダーEX”. ORICON NEWS. oricon ME. 2023年1月27日閲覧。
『月刊少年マガジン』創刊5周年記念特大号(1979年8月号)、講談社、1979年8月1日、211-311頁。