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イルデブランド・ピツェッティ作曲の交響曲 ウィキペディアから
交響曲 イ調(正式名称:イタリア語: Sinfonia in A in celebrazione del XXVIo centenario della fondazione dell'Impero giapponese)は、イルデブランド・ピツェッティが1940年に作曲した交響曲。皇紀2600年奉祝曲として、大日本帝国政府の委嘱により作曲された。
日本国内の文献等においては、初演当時より現在に至るまで「交響曲イ調」として紹介されているが[1]、紀元二千六百年奉祝会が発行したこの楽曲のフルスコアの初版[2]においては「交響曲イ長調」と表記されている。
詳しくは『皇紀2600年奉祝曲』を参照されたい。
1940年に紀元二千六百年を祝うにあたって、日本政府からドイツ、フランス、イタリア、ハンガリー、イギリス、アメリカに奉祝楽曲の委嘱が行われた際、イタリア政府が奉祝楽曲の作曲家として指名したのは、当時ミラノ音楽院院長職にあったピツェッティであった。
詳しい作曲の日時および経過は明らかではないが、1940年7月に、関係諸機関を通じて日本へ楽譜が届いたことから、それ以前に完成していたものと見られる[3]。
1940年12月7日、東京の歌舞伎座で行われた来賓向けの招待演奏会において、ガエタノ・コメリ指揮、紀元二千六百年奉祝交響楽団によって初演された。
同年12月14日に、同じく歌舞伎座において、12月7日と同じ指揮者・管弦楽団によって公開初演された。12月15日には東京歌舞伎座で、12月26日・27日大阪歌舞伎座で再演されている。
フルート2、ピッコロ1、オーボエ2、イングリッシュ・ホルン1、クラリネット2、バスクラリネット1、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ1、ティンパニ、大太鼓、タムタム、小太鼓、タンバリン、シンバル、ハープ2、チェレスタ、弦六部。
通常の弦楽合奏の編成と違い、ヴィオラパートは第1・第2の形で二つに分けて書かれている。
表題は「交響曲イ長調」であるが、全曲の主音がA音であるというだけであり、イ長調で通して書かれた楽章は存在しない。
イ短調(正確にはイ音を主音とするフリギア旋法)、4分の3拍子。序奏付きのソナタ形式。
冒頭、ホルンとファゴットのユニゾンにより、グレゴリオ聖歌風の循環主題が提示される。弦楽器、木管楽器も加わって最初の頂点を築くとアレグロの主部に入る。イ短調の飛び跳ねるような第1主題の提示のあとすぐに、ホルンにファンファーレ風の第2主題が登場する。これら二つの主題と、循環主題が駆使されてソナタ形式を構成している。展開部が比較的長めに書かれている。再現部においては、第2主題のファンファーレに導かれて、第1主題がやや変化して再現される。静かにイ短調に終結する。演奏時間約16分。
循環主題を想起させる旋律が、フルートとファゴットに現れると、弦楽合奏で主題が提示される。次第に厚みを増してゆき、最初の頂点をへてB部分に入る。ここはやや速度を落とし、静かな、緊迫感のある音楽になる。内声の細やかな刻みが特徴的である。ヴァイオリン独奏に導かれてA部分が回帰し、ヘ長調で静かに曲を閉じる。演奏時間約9分。
メンデルスゾーン風のスケルツォ。木管楽器、弦楽器、ハープに現れる細やかなパッセージと、リズムの刻みの中、ファゴットにスケルツォ主題が現れる。2拍子と3拍子が同時に響く部分もあり、複雑に書かれている。トリオ部分はニ短調、4分の3拍子となり、弦楽器の絶え間ないパッセージとともに、循環主題を想起させる旋律が現れる。ファゴット、フルートに駆け回るような音形は受け渡される。スケルツォ部分が回帰し、派手なクライマックスを築いたあとは非常に静かになり、ハープのパッセージを従えてクラリネットが駆け上がって曲を閉じる。演奏時間約6分。
イ短調(正確にはイ音を主音とするフリギア旋法)、4分の6拍子(主部は2分の2拍子)、序奏付きの行進曲。
ティンパニがニ音を打ち鳴らす上でオーボエを始めとする木管楽器の掛け合いで循環主題が現れる。弦楽器も掛け合いに加わる。頂点を築いて静かになり、テンポを速めてヴィオラに行進曲の主題が提示される。途中やや速度を落として2分の3拍子となり、循環主題と新たな旋律が絡み合う。転調を重ねてもとの調で行進曲が戻ってくる。悲劇的なクライマックスののち、速度を緩め、次第に音量を落とし、循環主題がイ長調で現れる。最後はイ長調主和音の付加六の和音上に静かに終結する。演奏時間約14分。
録音は、長らく1940年のラジオ放送時の録音以外存在しなかったが、2017年に新たな録音がリリースされた。
また、この1940年の初演後は、ほとんど演奏機会に恵まれていないのが現状である。
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