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美術史においてバロックに続き退廃的とも優美で繊細とも評される美術様式 ウィキペディアから
ロココ(Rococo)とは、美術史で使われた用語で、バロックに続く時代の美術様式を指す。18世紀、ルイ15世のフランス宮廷から始まり、ヨーロッパの他国にも伝えられ、流行した。
ロココはロカイユ(rocaille)に由来する言葉である。ロカイユは岩の意味で、バロック時代のグロット(庭園洞窟)に特徴的な貝殻で装飾された岩組を指したが、そこから転じて、1730年代に流行した、貝殻の曲線を多用したインテリア装飾をロカイユ装飾(ロカイユ模様)と呼んだ。ロカイユ装飾は、イタリアの貝殻装飾に由来すると考えられているが、植物の葉のような複雑な曲線を用いた特有のものである(画像参照)。
新古典主義の時代(18世紀末~)になると、前時代の装飾様式が退廃的であるとして蔑称的に使われたが、その後、時代一般の美術・文化の傾向を指す用語として、広く使われるようになった。ロココ様式(スタイル)、ロココ建築、ロココ趣味などと使う。豪壮・華麗なバロックに対して、優美・繊細なロココともいわれるが、両者の境界は必ずしも明確ではなく、ロココはバロックの一種と考える人もいる。
ポンパドゥール夫人(1721年 - 1764年)を中心とするサロン文化の最盛期にロココ様式は流行し、デュ・バリー夫人の時代まで続いたが、ルイ16世(在位1774年 - 1792年)が即位した頃から、装飾を抑え直線と均衡を重んじるルイ16世様式(広義の新古典主義様式)に次第に取って代わられた。しかし、ロココ的な美意識や雰囲気は、宮廷が実権を失う1789年のフランス革命まで継続した。
スウェーデンでは、1771年に即位したグスタフ3世の治世を「ロココの時代」と称している。スウェーデンのロココ様式の流行は1792年にグスタフ3世が暗殺されるまで続いた。
ロココ様式はインテリアのデザインや装飾として出発し、建築などに波及していっためずらしい例である[1]。
1715年に幼いルイ15世が即位しオルレアン公フィリップが摂政となった。バロックとロココの過渡期であるこの時期の様式をフランス・オルレアン公様式、またはレジャンス(摂政)様式という[1]。やがて、婦人を中心とした社交生活が華やかになるとともに、女性的・感覚的で、直線を排した軽快で華麗なフランス・ロココ(ルイ15世様式)は完成されていった。
フランス・ロココの家具は、装飾彫刻はバロック様式に比べて浅く掘られ、ライトグレーやクリーム色などの淡い色に金箔を押したものが多く、カブリオール(猫足)と呼ばれる曲線の脚を持ち、陶磁器や金メッキ金物との組み合わせといった特徴がある。オーナメントの主なモチーフはアカンサス・貝殻・渦巻き・婦人像などがあり、アシンメトリーのデザイン手法が用いられた。
アン女王の治世にブルジョア家庭に流行した家具はクイーン・アン様式と呼ばれる[1]。クイーン・アン様式は、フランス・バロックのスタイルを残しつつ、貝殻の曲線や角の丸み、猫足などのロココの要素が取り入れられている。大ぶりな安楽椅子であるウイングチェアはこの時代に誕生した。
イギリス家具史上でジョージアン時代と呼ばれる時期に、家具デザイナートーマス・チッペンデールが贅を尽くした宮廷用家具を、美しさと合理性をもった庶民用へと変化させて工場で量産した[1]。チッペンデールの庶民向け家具はチッペンデール様式と呼ばれている。チッペンデール様式はクイーン・アン様式をフランス・ロココ風に変形させたもので、スワンネックや、カブリオールの先端に施されるボールクローと呼ばれる玉を掴んだ爪の飾りに特徴がある。また、ゴシックやシノワズリの要素を取り入れた家具も多い。
家具に関しては、後期バロックとイタリア・ロココの区別はあまりない[1]。花づな・花束をモチーフとした豊かな曲線が好まれた。明るい色調の木材が好まれ、シタンやオリーブ・トネリコを素材とした寄せ木細工が作られた。フランス・ロココと比べて金めっきの使用は控えめである。
ドイツ・ロココはバロックが発展したもので、優美さと流線の美しさが強調されている。ドイツ・ロココの宮廷家具はフランス・オルレアン公様式の貝殻模様などの装飾モチーフを借用するなど、フランス・ロココの影響を受けて発展した[1]。また、ブルジョア階級の家具はイギリスやオランダ家具の影響を受けている。
フランスでF.クープラン、ラモーら、イタリア(スペイン)のD.スカルラッティ、オーストリアのモーツァルトらに見られる装飾音符を多用した軽快・優美・繊細な音楽様式を音楽におけるロココ様式と呼ぶ。バロック時代後期から古典派まで様々な形で現れ、別名ギャラント様式ともいう。
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