モラクセラ

モラクセラ属（Moraxella）は、Pseudomonadota門ガンマプロテオバクテリア綱シュードモナス目モラクセラ科に分類される真正細菌の属の一つである。グラム陰性球菌であり、ヒトや動物の口腔・上気道・性器の粘膜における常在菌である。

モラクセラ属
モラクセラ・カタラーリス Moraxella catarrhalis モラクセラ・カタラーリスの抗生物質感受性試験。この菌株はβ-ラクタマーゼを生成し、抗生物質アンピシリンに対する耐性を持つ。このことは、この酵素の発生により「β」の紙ラベルが赤色に変色することによって確認できる。
分類
ドメイン : 真正細菌 Bacteria 門 : Pseudomonadota門 綱 : ガンマプロテオバクテリア綱 Gammaproteobacteria 目 : シュードモナス目 Pseudomonadales 科 : モラクセラ科 Moraxellaceae 属 : モラクセラ属 Moraxella
学名
Moraxella Lwoff 1939[1] (IJSEMリストに掲載 1980)[2]
タイプ種
モラクセラ・ラクナータ Moraxella lacunata (Eyre 1900) Lwoff 1939[1] (IJSEMリストに掲載 1980)[2]
シノニム
ブランハメラ属 Branhamella Catlin 1970[2] (IJSEMリストに掲載 1980)[3] ※現在はモラクセラ属に統合されている。
下位分類（種）(2024年6月現在)[4]
モラクセラ・アトランタエ Moraxella atlantae Bøvre et al. 1976[5] (IJSEMリストに掲載 1980)[2] モラクセラ・ベーブレイ Moraxella boevrei Kodjo et al. 1997[6] (IJSEMリストに掲載 1997)[7] モラクセラ・ボービス Moraxella bovis (Hauduroy et al. 1937)[8] Murray 1948[9] (IJSEMリストに掲載 1980)[2] モラクセラ・ボーボクリ Moraxella bovoculi Angelos et al. 2007[10] (IJSEMリストに掲載 2007)[11] モラクセラ・カニス Moraxella canis Jannes et al. 1993[12] (IJSEMリストに掲載 1993)[13]> モラクセラ・カプラエ Moraxella caprae Kodjo et al. 1995[14] (IJSEMリストに掲載 1995)[15] モラクセラ・カタラーリス Moraxella catarrhalis (Frosch and Kolle 1896)[16] Henriksen and Bøvre 1968[17] (IJSEMリストに掲載 1980)[2] モラクセラ・カビアエ Moraxella caviae (Pelczar 1953)[18] Henriksen and Bøvre 1968[17] (IJSEMリストに掲載 1980)[2] モラクセラ・クニクリ Moraxella cuniculi (Berger 1962)[19] Bøvre and Hagen 1984[20] モラクセラ・イクイ Moraxella equi Hughes and Pugh 1970[21] (IJSEMリストに掲載 1980)[2] モラクセラ・ヘモリチカ Moraxella haemolytica Li et al. 2024[22] (IJSEMリストに掲載 2024)[23] モラクセラ・ラクナータ Moraxella lacunata (Eyre 1900)[24] Lwoff 1939[1] (IJSEMリストに掲載 1980)[2] モラクセラ・リンカーニイ Moraxella lincolnii Vandamme et al. 1993[25] (IJSEMリストに掲載 1993)[13] Moraxella nasibovis Li et al. 2023[26] (IJSEMリストに掲載 2023)[27] Moraxella nasicaprae Li et al. 2023[28] (IJSEMリストに掲載 2023)[29] Moraxella nasovis Li et al. 2022[30] (IJSEMリストに掲載 2022)[31] モラクセラ・ノンリクエファシエンス Moraxella nonliquefaciens (Scarlett 1916) Lwoff 1939[32] (IJSEMリストに掲載 1980)[2] モラクセラ・オブロンガ Moraxella oblonga Xie and Yokota 2005[33] (IJSEMリストに掲載 2005)[34] Moraxella oculi Wilkes et al. 2024[35] (IJSEMリストに掲載 2024)[36] モラクセラ・オスロエンシス Moraxella osloensis Bøvre and Henriksen 1967[37] (IJSEMリストに掲載 1980)[2] モラクセラ・オビス Moraxella ovis (Lindqvist 1960)[38] Henriksen and Bøvre 1968[17] (IJSEMリストに掲載 1980)[2] モラクセラ・プルラニマリウム Moraxella pluranimalium Vela et al. 2009[39] (IJSEMリストに掲載 2009)[40] モラクセラ・ポーシ Moraxella porci Vela et al. 2010[41] (IJSEMリストに掲載 2011)[42] モラクセラ・サッカロリティカ Moraxella saccharolytica Flamm 1956[43] (IJSEMリストに掲載 1980)[2]

呼吸器感染症ではモラクセラ・カタラーリス（Moraxella catarrhalis）が主である。成人市中肺炎の起炎菌としてはしばしば検出される。β-ラクタマーゼ産生菌がほとんどであり、治療に際しては抗生物質の選択に留意する必要がある。アモキシシリン/クラブラン酸合剤、ST合剤、経口第2世代又は第3世代セフェム系、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、フルオロキノロン系が推奨される。

モラクセラ・オスロエンシス（Moraxella osloensis）は洗濯物の部屋干しの際に発生する悪臭の原因菌であることが同定された。この菌は、増殖する際に雑巾のような悪臭を発生する4-メチル-3-ヘキセン酸という物質を作る^[44]。