ボストン海軍工廠 (Boston Navy Yard , ボストンかいぐんこうしょう)は、アメリカ合衆国 のマサチューセッツ州 ボストン にあった海軍工廠 。1800年にチャールズタウン海軍工廠 (Charlestown Navy Yard ) として開設された。これはアメリカの海軍工廠のうちで最も古いものの一つである。なお、名称は1945年にボストン海軍工廠に変更され、1967年以降はボストン海軍造船所 (Boston Naval Shipyard ) とよばれた。南北戦争 の際などに何度か拡張工事が行われている。
1974年 7月1日に閉鎖され、30-エーカー (120,000 m 2 ) に及ぶ敷地は現在ボストン国立歴史公園 の一部として国立公園局 が管理している。同工廠は閉鎖までに200隻以上の艦船を建造しており、第二次世界大戦 中は護衛駆逐艦 の建造を行っていた。
なお、アメリカ海軍で最古の現役艦艇である帆船 コンスティチューション (USS Constitution ) はボストンを母港としている。そのために現在でも、コンスティチューションの整備用にドックなど一部施設は稼動可能な状態にある。また、第二次世界大戦期の駆逐艦 カッシン・ヤング (USS Cassin Young, DD-793 ) も博物館船として係留されている。地区の住民および国立公園局では現在でもチャールズタウン海軍工廠の呼称を使うことが多い[2] 。
チャールズタウン における艦艇建造は独立戦争 の頃に始められた。チャールズタウン海軍工廠 の敷地は1800年に購入され、間もなく開設された。同工廠はアメリカ海軍初の戦列艦 であるインディペンデンス (USS Independence ) を建造したが、1890年代まで修理および停泊所として使用された。その後工廠では「新海軍」のための鋼製艦艇の建造を始め、名称もボストン海軍工廠 と改められた。
1833年6月24日、マーティン・ヴァン・ビューレン 副大統領 、ルイス・カス 陸軍長官 、リーヴァイ・ウッドベリー 海軍長官 を含む多くの高官およびマサチューセッツ州の職員たちが臨席し、著名な土木技師であるロアミ・ボールドウィン が設計したニューイングランドにおける最初の海軍乾ドック において、コンスティチューション (USS Constitution ) が就役した[3] 。これは「アメリカ海軍史上における素晴らしい出来事」の1つであった。1975年3月14日、コンスティチューションは同工廠を使用する最後の艦としてドックから出渠した[4] 。
ロープ製造所は1837年の開設時から工廠が閉鎖された1975年まで海軍用の綱を製造、供給した。南北戦争 後、工廠は装備補給設備に格下げされた[4] 。
1890年代に海軍は拡大を始め、工廠は新たな時代に入った。20世紀に入ると2番目の乾ドックが建造された。
第二次世界大戦中にはドイツ国防軍 による損傷を受けたイギリス海軍 艦艇の修理を行った。1941年9月27日、リバティ・フリート・デー にコーウィー (USS Cowie, DD-632 ) とナイト (USS Knight, DD-633 ) が同工廠で進水した。
大戦後は艦隊近代化計画 (FRAM) に基づき艦艇の近代化に従事する。朝鮮戦争 およびベトナム戦争 では大規模な海戦が無かったため、工廠の作業が増えることはなかった。
1935 — ケース (USS Case, DD-370 ) - (マハン級駆逐艦 )[5] 真珠湾攻撃 - マリアナ沖海戦
1935 — カニンガム (USS Conyngham, DD-371 ) - (マハン級駆逐艦)[5] 真珠湾攻撃 - ミッドウェー海戦 - 南太平洋海戦 - クロスロード作戦
1936 — マグフォード (USS Mugford, DD-389 ) - (バッグレイ級駆逐艦 )[6] 真珠湾攻撃
1936 — ラルフ・タルボット (USS Ralph Talbot, DD-390 ) - (バッグレイ級駆逐艦)[6] 真珠湾攻撃 - 第一次ソロモン海戦 - コロンバンガラ島沖海戦 - レイテ沖海戦 - クロスロード作戦
1938 — メイラント (USS Mayrant, DD-402 ) - (ベンハム級駆逐艦 )[6] カサブランカ沖海戦 - クロスロード作戦
1938 — トリップ (USS Trippe, DD-403 ) - (ベンハム級駆逐艦)[6] ハスキー作戦 - アヴァランチ作戦 - クロスロード作戦
1939 — ウォーク (USS Walke, DD-416 ) - (シムス級駆逐艦 )[7] 第三次ソロモン海戦
1939 — マディソン (USS Madison, DD-425 ) - (ベンソン級駆逐艦 )[7] 大西洋の戦い - ドラグーン作戦
1939 — ランズデール (USS Lansdale, DD-426 ) - (ベンソン級駆逐艦)[7] 大西洋の戦い
1940 — ウィルクス (USS Wilkes, DD-441 ) - (グリーブス級駆逐艦 )[8] カサブランカ沖海戦
1940 — ニコルソン (USS Nicholson, DD-442 ) - (グリーブス級駆逐艦)[8] アヴァランチ作戦 - レイテ沖海戦
1941 — フォレスト (USS Forrest, DD-461 ) - (グリーブス級駆逐艦)[8] トーチ作戦 - ノルマンディー上陸作戦 - ドラグーン作戦 - 沖縄戦
1941 — フィッチ (USS Fitch, DD-462 ) - (グリーブス級駆逐艦)[8] トーチ作戦 - ノルマンディー上陸作戦 - ドラグーン作戦
1941 — コーウィー (USS Cowie, DD-632 ) - (グリーブス級駆逐艦)[9] トーチ作戦 - ハスキー作戦
1941 — ナイト (USS Knight, DD-633 ) - (グリーブス級駆逐艦)[9] トーチ作戦 - ハスキー作戦 - アヴァランチ作戦
1941 — ドラン (USS Doran, DD-634 ) - (グリーブス級駆逐艦)[9] トーチ作戦 - ハスキー作戦
1941 — アール (USS Earle, DD-635 ) - (グリーブス級駆逐艦)[9] ハスキー作戦
1942 — ゲスト (USS Guest, DD-472 ) - (フレッチャー級駆逐艦 )[9] マリアナ沖海戦 - 硫黄島の戦い - 沖縄戦
1942 — ベネット (USS Bennett, DD-473 ) - (フレッチャー級駆逐艦)[9] 硫黄島の戦い - 沖縄戦
1942 — ハドソン (USS Hudson, DD-475 ) - (フレッチャー級駆逐艦)[9] マリアナ沖海戦 - 硫黄島の戦い - 沖縄戦
1942 — ハッチンス (USS Hutchins, DD-476 ) - (フレッチャー級駆逐艦)[9] レイテ沖海戦 - 硫黄島の戦い - 沖縄戦
1942 — コナー (USS Conner, DD-582 ) - (フレッチャー級駆逐艦)[10] マリアナ沖海戦 - レイテ沖海戦
1942 — ホール (USS Hall, DD-583 ) - (フレッチャー級駆逐艦)[10] フィリピンの戦い - 硫黄島の戦い - 沖縄戦
1943 — ハラデン (USS Haraden, DD-585 ) - (フレッチャー級駆逐艦)[10] フィリピンの戦い
1943 — ベニオン (USS Bennion, DD-662 ) - (フレッチャー級駆逐艦)[11] レイテ島の戦い - 硫黄島の戦い - 沖縄戦
1942 — エヴァーツ (USS Evarts, DE-5 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦 )[12]
1942 — ワイフェルズ (USS Wyffels, DE-6 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[12]
1943 — グリスォルド (USS Griswold, DE-7 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[12]
1943 — スティーレ (USS Steele, DE-8 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[12]
1943 — カールソン (USS Carlson, DE-9 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[12]
1943 — ベバス (USS Bebas, DE-10 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[13]
1943 — クロウター (USS Crouter, DE-11 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[13]
1943 — セイド (USS Seid, DE-256 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[13]
1943 — スマート (USS Smartt, DE-257 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[13]
1943 — ウォルター・S・ブラウン (USS Walter S. Brown, DE-258 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[13]
1943 — ウィリアム・C・ミラー (USS William C. Miller, DE-259 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[13]
1943 — カバナ (USS Cabana, DE-260 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[13]
1943 — ディオンヌ (USS Dionne, DE-261 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[13]
1943 — キャンフィールド (USS Canfield, DE-262 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[14]
1943 — ディード (USS Deede, DE-263 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[14]
1943 — エルデン (USS Elden, DE-264 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[14]
1943 — クラウズ (USS Cloues, DE-265 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[14]
1943 — オトール (USS O'Toole, DE-527 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[14]
1943 — ジョン・J・パワーズ (USS John J. Powers, DE-528 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[14]
1943 — ジョン・M・バーミンガム (USS John M. Bermingham, DE-530 ) - (エヴァーツ級護衛駆逐艦)[14]
1943 — エドワード・H・アレン (USS Edward H. Allen, DE-531 ) - (ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦 )[15]
1943 — トゥィーディー (USS Tweedy, DE-532 ) - (ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦)[15]
1943 — ハワード・F・クラーク (USS Howard F. Clark, DE-533 ) - (ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦)[15]
1943 — シルヴァースタイン (USS Silverstein, DE-534 ) - (ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦)[15]
1943 — ルイス (USS Lewis, DE-535 ) - (ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦)[15]
1943 — ビヴィン (USS Bivin, DE-536 ) - (ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦)[15]
1943 — リッジ (USS Rizzi, DE-537 ) - (ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦)[15]
1943 — オスバーグ (USS Osberg, DE-538 ) - (ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦)[15]
1955 — ワグナー (USS Wagner, DER-539 ) - (ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦)[15]
1955 — ヴァンディヴィアー (USS Vandivier, DER-540 ) - (ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦)[15]
1番ドック
工廠はベトナム戦争の後に閉鎖された。工廠を再利用するため様々な案が考慮され、その中には石油タンカー 建造施設として使用するというものもあったが[16] 、全てが失敗に終わった。結局工廠の跡地はボストン国立歴史公園 の一部として管理されることとなった。その目的は「海軍の造船技術と歴史を後世に伝える」ことである[4] 。
チャールズタウン海軍工廠では多くのアトラクションが開催されている。現役艦であるコンスティチューションおよび博物館船のカッシン・ヤングは1番埠頭に係留され、一般に公開されている。工廠にはまた USS コンスティテューション博物館があり、様々な資料が公開されている。1番乾ドックは現在も使用されており、主に歴史的艦艇の整備を行っている。
工廠はフリーダムトレイル の北端に位置している。マサチューセッツ湾交通局 のウォーター・シャトルが3番埠頭近くに停船し、多くの観光客が同シャトルを利用して訪れる。
係留される
カッシン・ヤング (
USS Cassin Young, DD-793 )
Silverstone, Paul H. U.S. Warships of World War II (1968) Doubleday & Company p.118
Silverstone, Paul H. U.S. Warships of World War II (1968) Doubleday & Company p.124
Silverstone, Paul H. U.S. Warships of World War II (1968) Doubleday & Company p.126
Silverstone, Paul H. U.S. Warships of World War II (1968) Doubleday & Company p.132
Silverstone, Paul H. U.S. Warships of World War II (1968) Doubleday & Company p.135
Silverstone, Paul H. U.S. Warships of World War II (1968) Doubleday & Company p.140
Silverstone, Paul H. U.S. Warships of World War II (1968) Doubleday & Company p.141
Silverstone, Paul H. U.S. Warships of World War II (1968) Doubleday & Company p.153
Silverstone, Paul H. U.S. Warships of World War II (1968) Doubleday & Company p.155
Silverstone, Paul H. U.S. Warships of World War II (1968) Doubleday & Company p.157
Silverstone, Paul H. U.S. Warships of World War II (1968) Doubleday & Company p.175
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