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紙を綴じるための文具 ウィキペディアから
ステープラー(英語: stapler)またはホチキス、ホッチキス、紙綴器(かみつづりき)とは、紙に「コ」の字形の針(ステープル、英語: staple)を刺し通し、針先の部分を両側から平らに曲げて、紙を綴じる文具である。
JIS規格上の名称はステープラ。ごく限られているが、ジョイント(宮城県北部、山形県山形市など)、ガッチャンコ(北東北など)と呼ぶ地域もある。古くから鎹(かすがい)と称され、木材や陶器のつなぎ合わせに使われている。
現在ステープラーと呼ばれている文具の原型が生まれたのは、18世紀頃のフランスと言われている[2]。19世紀に入ると紙の使用量が増え始めたこともあり、ステープラーの開発も盛んに行われ、 複数の特許が申請された。
1850年代、ハトメ(アイレット)を打ち込む紙綴器、すなわちアイレットマシンがハイマン・リップマンによって開発された。これは大量に生産および販売された最初の機械式紙綴器であった[3]。1866年、ジョージ・マギル(George McGill)が割りピンに似た形式の真鍮製のつづり針の特許を取得し、また1867年には紙束につづり針を通す穴を開けるプレス機の特許を取得した[4]。1度の作業で針刺しと折曲げを行える紙綴器は、1877年にヘンリー・R・ヘイル(Henry R. Heyl)が特許を取得したほか、1879年にはマギルとウィリアム・J・ブラウン・ジュニア(William J. Brown, Jr.)がそれぞれ別の特許を取得している。これら3つの設計には部分的な類似性があり、特許を有する三者間で訴訟が繰り返された[5]。予備の針を本体に内蔵し連続して作業が行えるモデルは、1878年に開発された。その後、金属製のワイヤーあるいはテープを内蔵し、これを切断した後に押しつぶして紙を綴る形式の製品や、針を使わず綴る製品なども考案されたが、1940年代までには事前に成形されたつづり針を多数内蔵する形式の製品が最も普及し、広く使われるようになった[4]。
日本では商標の普通名称化により「ホッチキス」または「ホチキス」と呼ばれる事が多い。日本放送協会(NHK)では、かつては「ステープラー」と呼んでいたが、方針転換し「ホチキス」で統一している[6]。
日本での「ホッチキス」という呼び名は、1903年(明治36年)に伊藤喜商店(現、株式会社イトーキ)がアメリカ合衆国より初めて輸入したステープラーが、E.H.ホッチキス社(E.H.Hotchkiss)のHotchkiss No.1というモデルであったことに由来する[7]。E.H.ホッチキス社は1895年にジョーンズ製造社(The Jones Manufacturing Company)として創業され、1897年にE.H.ホッチキス社に改称した。ホッチキスの名はジョーンズ社の創業者うちジョージ(George Hotchkiss)とイーライ・ハベル(Eli Hubbell Hotchkiss)のホッチキス親子から取られたものである[8]。
ホッチキスという呼び名の由来について、「オチキス社の創業者であるベンジャミン・バークリー・ホッチキス(B.B.Hotchkiss)が、機関銃の構造を元に発明した」[7]、「イーライ・ハベルはベンジャミンの弟で、彼が発明した」[9]などの俗説が語られることがある。
この俗説がテレビ番組で取り上げられたこともある[7]。1989年(平成元年)には日本テレビの番組『TVムック・謎学の旅』はホッチキスの語源を探るべくベンジャミン・ホッチキスの故郷コネチカット州を取材したが、文献などによる証明は行えなかった。1994年(平成6年)、フジテレビの番組『なるほど!ザ・ワールド』の中で、「ベンジャミン・ホッチキスの弟のイーライ・ハベル・ホッチキスがステープラーを発明し、E.H.ホッチキス社を創業した」という説が紹介された。
この俗説の検証を行ったジム・ブリーンは、ベンジャミンとステープラーに直接の繋がりは見いだせないものの、ステープラーの販売を行ったホッチキス親子とベンジャミン・ホッチキスは共にコネチカット州出身であり、不確かながら親族からの証言もあったとして、何らかの血縁関係があった可能性までは否定しきれないとしている[10]。
韓国においても、日本統治時代の影響からステープラーを「ホチキス(호치키스)」と呼称する場合がある。なお、韓国では「ホッチキスはベンジャミン・ホッチキスによって機関銃の構造を元に設計された」という説が長らく語られていたが[11]、2013年に国立国語院が調査したところ、ホッチキスをベンジャミン・ホッチキスが作ったという証拠がないことが明らかとなった。国立国語院が出版する『標準国語大辞典』では、従来ホッチキスを「ステープラー(스테이플러)の別名。ステープラーの考案者の米国の発明家の名にちなんだ商標名」と定義していたが、この結果を受けて「ㄷ字形の針を使って、書類などを綴じる道具。米国の商標名から出た言葉である」と改められた[11]。
JIS規格上の名称は「ステープラ用つづり針」である。
一般的にはしん、はり、たまなどと呼ばれるが、特に決まった呼び方はなく、マックス株式会社では一貫して「はり」と呼んでいる[6][12]。また、ステープルという呼び方もある。
「ホッチキス」は、明治後期に伊藤喜商店がアメリカから輸入し、開発者の名前をとって「ホッチキス自動紙綴器」という名称で販売していた。その後まもなく国産品の生産に入り、輸入品との差別化を図るために鳩印をトレードマークに採用した[13]。なお、日本橋の金物店がすでにホッチキスという商標登録をしており、1917年に伊藤喜商店がこの商標を買い取ったとする説もあるが、イトーキによれば、商標については社内の正式な記録としては何も残っていないとしている[14]。
2014年現在、文房具分野での「ホッチキス」「ホチキス」という商標は取得されておらず、マックスが医療器具分野のみ「ホッチキス」を登録している(登録第4766203号)。
ステープラーは使用する針の大きさによって大きく3種類に分けられる。また特殊用途向けのステープラーも存在する。
針は一般的なスチールの他にステンレス鋼やアルミ、銅を用いたものがある。特にステンレス鋼の場合、スチールと同等の強度と価格でありながら腐食に強く、錆により書類が茶色に汚れることを防げる。なお、色付きの針もある。
紙を綴じている針の除去には除針器(リムーバー)が用いられ、小型ホッチキスなどでは最初から本体にリムーバーが組み込まれていることが多い。針の除去専用の道具もある。
紙をリサイクルする際に、あらかじめ針を除去しないといけないとする考え方があるが、実際は再生紙を製造する過程で除去(針は溶かされた古紙より比重が重く、撹拌過程で他の異物と共に沈殿・落下する)されるため、大きな問題になることはない。このためマックス社製の針の箱には、「ホッチキス針は古紙再生工程で支障ありません」の注意書きが書かれている[17][18]。
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針を使用せずに紙をまとめるステープラーは20世紀初頭の時点で発明されており、例として1909年には、紙をU字型に切り出して、開いた切れ目に差し込んで綴じ込む方式の器具がイギリスで販売されていた。その後も複数の企業により同種の製品が断続的に販売されていたが、綴じ枚数の少なさや保持力の弱さといった問題などもあり、広く普及するには至らなかった。
しかし2009年12月になり、コクヨがこの技術を改良することで、保持力を向上させたうえにコピー用紙を10枚まで綴じられる卓上型の「針なしステープラー」を発売。後に「ハリナックス」のブランド名が付き、翌2010年7月には小型のハンディタイプ(4枚綴じ)を発売。針を使わないことによる省資源性や分別の容易さが注目されヒット商品となり、他社からも同種の製品が発売、針なしステープラーが広く普及するきっかけとなった。その後も技術改良により、切り口の形状を変更するなどして紙が外れにくくなり、卓上型では最大12枚、小型のものでは5 - 10枚を綴じられるほどになっている。
またコクヨは、紙に穴を開けず、金属歯で紙同士を圧着することで綴じる方式の「ハリナックスプレス」を2014年に発売した。綴じ部が目立たない等のメリットが挙げられるが、紙の引っ張り方によっては穴を開ける「ハリナックス」より外れやすいという欠点もある。
いずれの方式も、針を使用するものと比べれば保持力が勝らないことから、メーカーでは保持力を重視する場合、「角綴じ」や「複数綴じ」を推奨している。
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