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ハプトグロビン(英: haptoglobin、略称: Hp)は、ヒトではHP遺伝子によってコードされるタンパク質である[5][6]。血漿中でハプトグロビンは赤血球から放出された遊離ヘモグロビンに高い親和性で結合し、その有害な酸化活性を阻害する[7]。一方類似した機能を持つヘモペキシンは遊離ヘムに対して結合する[8]。ハプトグロビン-ヘモグロビン複合体はその後、細網内皮系(主に脾臓)によって除去される。
臨床現場では、ハプトグロビンアッセイは血管内溶血性貧血のスクリーニングとモニタリングに利用される。血管内溶血では、遊離ヘモグロビンが血液循環へ放出され、そこにハプトグロビンが結合する。これによってハプトグロビン値の低下が引き起こされる。
損傷した赤血球から血漿中へ放出されたヘモグロビンは有害な影響を与える。HP遺伝子はプレプロタンパク質をコードしており、α鎖とβ鎖へプロセシングされた後、四量体として結合することでハプトグロビンが形成される。ハプトグロビンは血漿中の遊離ヘモグロビンと結合し、分解酵素がヘモグロビンへアクセスすることができるようにするとともに、腎臓を介した鉄の喪失を防ぎ、ヘモグロビンによる損傷から腎臓を保護する[9]。
ハプトグロビンが標的とする細胞表面受容体は単球/マクロファージスカベンジャー受容体のCD163である[7]。ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体がCD163に結合すると、複合体は細胞内へ取り込まれてグロビンとヘムの代謝が行われ、続いて抗酸化経路と鉄代謝経路の適応的変化とマクロファージの極性化が引き起こされる[7]。
赤血球から放出されるヘモグロビンがハプトグロビンの生理的範囲内である場合、ヘモグロビンの有害な影響は防止される。しかし、高度の溶血や慢性的な溶血条件下ではハプトグロビンは枯渇し、ヘモグロビンが組織へ移動して酸化的条件にさらされる可能性がある。そうした状況では、ヘムはフェリ(Fe3+結合型の)ヘモグロビンから遊離する。遊離ヘムは過酸化反応を促進し、炎症カスケードを活性化することで組織損傷を加速する。ヘモペキシンは他の血漿糖タンパク質で、ヘモグロビンと同様にヘムと高い親和性で結合することができる。ヘモペキシンはヘムを不活性な無害な形態で隔離し、異化と排出のために肝臓へ輸送する[7]。
ハプトグロビンは主に肝細胞で産生されるが、皮膚、肺、腎臓など他の組織でも産生される。さらに、ヒトとマウス、そしてウシではハプトグロビン遺伝子は脂肪組織でも発現していることが示されている[10][11]。
ハプトグロビンは、もっとも単純な形では、2つのα鎖と2つのβ鎖から構成され、これらはジスルフィド結合で連結されている。両鎖は共通の前駆体タンパク質に由来し、タンパク質合成の過程で分解切断される。
ヒトのハプトグロビンには2つのアレルが存在し、Hp1、Hp2と呼ばれる。後者はHp1遺伝子の部分的な重複によって生じたものである。そのため、ヒトではHp1-1、Hp2-1、Hp2-2という3つの遺伝子型が存在することとなる。遺伝子型によってハプトグロビンのヘモグロビンへの結合親和性は異なることが示されており、Hp2-2が最も弱い[12]。
ハプトグロビン遺伝子またはその調節領域の変異は無ハプトグロビン血症(ahaptoglobinemia)または低ハプトグロビン血症(hypohaptoglobinemia)を引き起こす。また、この遺伝子は糖尿病性腎症[13]、1型糖尿病における虚血性心疾患の発生[14]、クローン病[15]、炎症性疾患、原発性硬化性胆管炎、特発性パーキンソン病に対する感受性[16]、熱帯熱マラリアの発生数の低下[17]とも関係している。
細網内皮系によってハプトグロビン-ヘモグロビン複合体は体内から除去されるため[8]、血管内溶血や重度の血管外溶血の場合にハプトグロビン値が低下する。遊離ヘモグロビンに結合する過程で、ハプトグロビンはヘモグロビンの内部に鉄を隔離し、鉄を利用する生物が宿主の溶血を引き起こすことで利益を得ることがないようにしている。このように、ハプトグロビンは急性期タンパク質へと進化してきたと考えられている。ハプトグロビンは腎臓出血に対する保護効果を有する[18][19]。
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