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プロテインチロシンホスファターゼ(英: protein tyrosine phosphatase、EC 3.1.3.48、系統名: protein-tyrosine-phosphate phosphohydrolase、略称: PTP)または単にチロシンホスファターゼは、タンパク質中のリン酸化されたチロシン残基からリン酸基を除去する酵素のグループである。すなわち、次の反応を触媒する。
Protein-tyrosine-phosphatase | |||||||||
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ヒトPTP4A1三量体 | |||||||||
識別子 | |||||||||
EC番号 | 3.1.3.48 | ||||||||
CAS登録番号 | 79747-53-8 | ||||||||
データベース | |||||||||
IntEnz | IntEnz view | ||||||||
BRENDA | BRENDA entry | ||||||||
ExPASy | NiceZyme view | ||||||||
KEGG | KEGG entry | ||||||||
MetaCyc | metabolic pathway | ||||||||
PRIAM | profile | ||||||||
PDB構造 | RCSB PDB PDBj PDBe PDBsum | ||||||||
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チロシンのリン酸化は一般的な翻訳後修飾であり、タンパク質間相互作用や細胞内局在のための新たな認識モチーフを作り出したり、タンパク質の安定性に影響を及ぼしたり、酵素活性を調節したりする。タンパク質のチロシンリン酸化を適切なレベルに維持することは、多くの細胞機能に必要不可欠である。チロシン特異的プロテインホスファターゼは、チロシン残基に付加されたリン酸基に対し、システイン-リン酸中間体を介して除去を触媒する。これらの酵素はシグナル伝達経路(MAPキナーゼ経路など)や細胞周期の制御における主要な調節因子であり、成長、増殖、分化、形質転換、シナプス可塑性の制御に重要である[1][2][3][4]。
PTPはチロシンキナーゼとともに、MAPキナーゼなど多くの重要なシグナル伝達分子のリン酸化状態を調節している。PTPがシグナル伝達カスケードの重要な構成要素であるという見方は強まっているが、チロシンキナーゼと比較して研究や理解は進んでいない。
PTPは次のような細胞過程の調節に関与していることが示唆されているが、これらに限定されるわけではない。
クラスIはPTPの最大のグループであり、ヒトのタンパク質では99種類のメンバーが属する。さらに次のように分類される。
二重特異性ホスファターゼ(DSP)は、さまざまなリン酸化タンパク質のセリン/スレオニンに結合したリン酸基ととチロシンに結合したリン酸基の双方を除去することができる。DSPは分裂促進性シグナル伝達の調節や細胞周期の制御を行っている。
このクラスに属するPTPN11は、LEOPARD症候群、ヌーナン症候群、メタコンドロマトーシスと関係している。
PTPN5の活性化レベルの上昇はシナプスの安定性に負の影響を及ぼし、アルツハイマー病[3]、脆弱X症候群[4]、統合失調症[8]、パーキンソン病[9]に関与している。一方PTPN5の低下は、ハンチントン病[10][11]、脳虚血[12]、アルコール依存症[13][14]、ストレス関連疾患[15][16]への関与が示唆されている。こうした知見は、PTPN5が適切なレベルにあるときのみシナプスが正しく機能することを示している。
低分子量ホスファターゼ(LMW-PTP)または酸性ホスファターゼは、チロシンリン酸化タンパク質、低分子量アリールリン酸、天然・合成アシルリン酸に対して作用する[17][18]。
ヒトではクラスIIに属するPTPは、ACP1のみである。
クラスIIIのPTPには、Cdc25ファミリーのCDC25A、CDC25B、CDC25Cの3種の二重特異性ホスファターゼが含まれる。
クラスIVはHADスーパーファミリーのメンバーであり、リン酸化チロシンやリン酸化セリン/スレオニン特異的ホスファターゼのほか、低分子量ホスファターゼやその他の酵素も含まれる[19]。EYAサブファミリーの作用はリン酸化チロシン特異的であると考えられており、ヒトではEYA1、EYA2、EYA3、EYA4の4つのメンバーが存在する。このクラスは他の3つのクラスとは触媒機構が異なる[20]。
細胞内の局在によって次のように分類されることもある。
EYAファミリーを除く全てのPTPは、C(X)5Rからなる高度に保存された活性部位モチーフ(PTP signature motif)が存在し、共通の触媒機構を持つ。そして中心部の平行βシートと隣接するαヘリックスからなる類似したコア構造を持ち、そこにはPTP signature motifを取り囲むβ-ループ-α-ループ構造が含まれている[23]。PTP間の機能的多様性は、調節ドメインや調節サブユニットによって付与されている。
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PTPには全ての細胞種で発現しているものも、厳密に組織特異的に発現しているものもある。大部分の細胞では全てのPTPのうちの30%から60%が発現しているが、他の細胞種と比較して造血系細胞や神経細胞では発現しているPTPの種類が多い。造血系由来のT細胞やB細胞では、60種類から70種類のPTPが発現している。LYP、SHP1、CD45、HePTPなど、いくつかのPTPの発現は造血系細胞に限定されている[28]。また、PTPN5の発現は脳に限定されている。PTPN5の発現レベルは脳領域によって異なるが、小脳では発現していない[29][30][31]。
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